最終更新日:2020/10/3
先日ジム・ロジャーズ「米ドル時代が終わるかもしれない」という記事を書きましたが、『ドル亡き後の世界』という著書がありましたので、要約してお伝えしていきたいと思います。
<目次>
ドル亡き後の世界
『ドル亡き後の世界』の著者は、米国の政治思想、法制度、金融などに詳しい評論家の副島隆彦氏です。
2008年にはリーマンブラザーズの破綻を言い当てたことでも有名です。
本書は2009年に発刊され、
- オバマ大統領は任期半ばで辞任
- 次の大統領はヒラリークリントン
- 2010年にアメリカは恐慌に突中
- 2012年に「ドン底」がやってくる
という予想をたてていますが、見事に外しまくっていますw
とはいえ、2020年の今読み返してみるとドキッとする内容が満載であったため、ここで紹介していきたいと思います。
やがて中国が米国債を売り始める
『ドル亡き後の世界』では、
中国は、やがて到来する米ドルの下落(アメリカの信用力の低下)を心配しながら、暴落前に少しずつ売ろうと準備している。
中国政府が意を決して米国債を暴落させれば、その時が本当に世界恐慌突入である。
だが、そういうことは急にはできない。
反対に中国が受ける打撃も大きいからだ。
だから中国は米国債を徐々に売り始める。
(中略)
その時1ドルは30円どころか、10円台になっているかもしれない。
と、かなり激しい予想をしています。
とはいえ、昨今では米中の対立を背景に中国が米国債の売却を続けており、この予想が『論外』とは言えない状況になりつつあります。
現時点では1兆ドルを超える米国債を保有していますが、『8000億ドル程度まで徐々に引き下げていくだろう』 といった報道もされており、『最悪のケース(軍事衝突など)では、全額売却もありうる』と言われています。
(米国債の保有額の第1位は日本、第2位が中国)
このまま中国による米国債の売却が続けば、『ドルなき後の世界』の予言が現実のものとなる可能性は十分に考えられます。
なお、『中国の米国債売却によるドル安』の流れとしては、
- 米国債が売られることによって、アメリカの金利が上昇
- アメリカがコントロール不能なインフレに陥る
- アメリカの不況入りに合わせて米ドルの価値が減少していく
といった流れです。
一般的に(ドルの)金利が高くなれば『皆が(高金利欲しさに)ドルを買い、ドル高となる』わけですが、『アメリカがインフレをコントロールできない』という事態に陥れば、アメリカ経済の不安から『誰もドルを欲しがらない』という結果を招き、ドル安になる、という感じです。
そんなわけで、『米ドルの未来は中国が握っている』とも言える状況にあるわけです。
なお、米国債を最も保有している国は日本であるため、日本と中国がタッグを組めばアメリカに対して強大な圧力をかけることも可能ですが、そんなことにはならないでしょうね…。
中国の中央銀行総裁は「ドルに代わる国債通貨が必要」と表明
『ドルなき後の世界』では、
ここで周総裁(中国の中央銀行総裁)は「米ドルに代わる新たな国際準備通貨(=基軸通貨)が必要であり、IMFが(国債通貨基金)が各国の外貨準備の一部を直接、管理すべきだ」との考えを示した。
…中略…
中国はSDR(IMFの特別引き出し権)という”新しい通貨”が米ドルにとって代わる基軸通貨になるべきだ、と提言したのだ。
…中略…
現状のような、米ドル紙幣がアメリカ合衆国の国内通貨であり、それがそのまま世界通貨(基準通貨、準備通貨)でもある、というのは大きな矛盾だと中国はズバリと言った。
と、中国の中央銀行総裁の意見を取り上げています。
SDRとはIMFに加盟する全ての国が資金を融通し合うときに使う、IMF内部の通貨(のようなもの)です。
つまり、
「1国の通貨(米ドル)を世界の基準通貨にするのはおかしいでしょ。特定の国に依存しない世界通貨を作ったほうがいいでしょ」
という趣旨の発言です。
その発言によって具体的な動きが起きたわけではありませんが、その後、中国の通貨:人民元は着々と勢力を広げていき、2016年10月にはSRDの構成通貨に追加され、『人民元は国際通貨として認められた』とも言える状況にまできました。
(SRDの構成通貨は、ドル、円、ユーロ、ポンドだけだった)
中国は、2030年までにはアメリカを抜いて世界一の経済大国になると予想されています。
その時が来ても米ドルが世界の基軸通貨としての力を持っていられるかどうか、不安が残ります。
「ドル亡き後の世界」を生き抜くには
『ドル亡き後の世界』では、ドルの没落にそなえて「金(ゴールド)やレアメタルなどのコモディティ(金(ゴールド)や原油などのモノ)に注目するべきだ」と書いています。
実際に、新型コロナ対策によりドルに対する疑問の声が上がってきた昨今では、金(ゴールド)の価値が上昇しており、
世界一の投資家と言えるウォーレン・バフェットも
といった、『通貨からモノへの移行』とも取れる投資活動をしています。
新型コロナ対策によって、各国が通貨をじゃぶじゃぶと発行し、通貨の信頼が下がり続ける可能性が高いと考えると、個人投資家も今までとは違う選択をする必要がありそうです。
まとめ:ドル亡き後の世界が来てもおかしくないが…
ここまで記事にさせてもらった通り、『ドル亡き後の世界』が到来してもおかしくない条件がそろいつつあり、実際に著名な投資家達がコモディティへの投資を進めており、『ドル亡き後の世界の到来』の信憑性が高まりつつあります。
とはいえ、「米ドルを世界の通貨基軸にするのはおかしくない?」という話は1960年代にジョン・メイナード・ケインズ(身長200cm)からも出ています。
その際にはアメリカが金本位制(ドルと金の固定価格を保証)を維持できないとの懸念から『世界で共通の通貨(バンコールと命名)を作るべきだ』と提案されたわけですが、1971年には、まさかの金本位制の放棄(ニクソンショック)が発表され、その後もドルが世界通貨基軸として使用されることとなりました。
しかし、今回がケインズの時代とは違い、中国と言う巨大なライバルがいます。
前述した通り、そう遠くない未来に中国がアメリカを超える経済大国となるのは『ほぼ間違いない』と言えます。
将来を予想することは困難ですが『いつまでも米ドルは安泰だ』と妄信することながないよう、心構えておく必要がありそうです。
なお、『ドル亡き後の世界』では、『底力のある企業60株の一覧』が付録についているので、「著者(副島隆彦氏)のお勧めする銘柄を聞きたい」という方は、参考にしてもいいかもしれません。
(もし買うのであれば、ゴロゴロしている中古で探すのがお勧めです)
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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