更新日:2021/6/19
乱高下を繰り返している仮想通貨が注目されています。
最近では、エルサルバドルが「ビットコインを法定通貨とする」と発表し、世界中の投資家に驚きを与え、一部では
「これからもビットコインを法定通貨とする国が増える」
「いつかビットコインが世界通貨になる」
とすら言われています。
とはいえ、現在の事実上の世界通貨は米ドルであるため、『ビットコインの将来は、アメリカの出方しだい』とも言えます。
そこで、アメリカ政府の財務長官である、ジャネット・イエレン氏の発言から、仮想通貨の未来を占っていきたいと思います。
<目次>
ジャネット・イエレンとは
最初にジャネット・イエレンについて簡単に紹介しておきます。
イエレン財務長官(74歳)は、
- クリントン政権の大統領経済諮問委員会(1997年2月~1999年8月)
- サンフランシスコ連邦準備銀行総裁(2004年6月~2010年10月)
- FRB副議長(2010年10月~2014年2月)
- 第15大FRB議長(2014年2月~2018年2月)
- バイデン政権の財務長官(2021年1月~)
という経歴の、超エリートです。
政治家としては、『金利の上昇を好まない=ハト派』と見られており、
学者としては、『効率賃金理論』を唱え、賃金を上げることで労働者の生産性が向上し、結果として会社の利益が増えることを証明したことで有名です。
中国に対しては
「(新疆ウイグル自治区の問題について)中国はひどい人権侵害を犯している」
「中国は最大の戦略的な競争者だ」
「(中国の不公正な貿易に対して)すべての手段を使う用意がしてある」
といった発言をしており、厳しい姿勢を見せています。
しかし、誰にでも分かりやすい英語を使うことや、愛嬌のある表情などから、「かわいいおばあちゃん」と言われ好感をもてれていたりもします。
※ジャネット・イエレンの「かわいい」画像はこちらからどうぞw
さて、そんなジャネット・イエレンが仮想通貨に対してどんな発言をしているのか、見ていきましょう。
仮想通貨の送金に報告義務
5月20日に、財務省は、1万ドル以上の送金を内国歳入庁に報告するよう義務付ける方針であることを発表しました。
というのも、財務省は
「仮想通貨を使った『脱税」や『資金洗浄』といった違法行為が、すでに重大な問題となっている」
と考えており、今後、仮想通貨の市場規模が大きくなることでさらに違法行為が増えていくと考えているためです。
財務省は、
- 仮想通貨から投資家を守る法律がない
- 仮想通貨は値動きが激しすぎる
といったことを仮想通貨に対する懸念材料として挙げていますが、もっとも懸念していることは
- 仮想通貨取引による脱税が横行している
点でしょう。
つまり、アメリカは
- 確実に税金を徴収するためにも、仮想通貨が普及してほしくない
と考えているわけです。
そしてこの考えは、ほとんどの国で共通する考え方です。
エルサルバドルのように、
- 自国通貨を持たない国
- 自国通貨が安定しない(いつかのジンバブエのような)国
であればまだしも、ほとんどの先進国は「仮想通貨を使わないでくれ(税金を徴収し辛いから)」と考えています。
実際に、中国やインドでは仮想通貨の禁止を検討(一部はすでに決定)しています。
参考記事:インドが仮想通貨を禁止する法案を提出か【中国は取引とマイニングを禁止】
とはいえ、多くの国ではデジタル通貨の有用性を認めているため、世界中で『中央銀行が発行するデジタル通貨』の検討、整備が進んでいるわけです。
仮想通貨という新しい技術を歓迎する
イエレン財務長官も、仮想通貨の犯罪利用に対しての懸念を表明しつつも
「仮想通貨の新たなテクノロジーの可能性は理解している」
とし、仮想通貨そのものに対して否定しているわけではありませんし、
「アメリカは、デジタル通貨と金融デジタライゼーション分野でのリーダーになることを目指す」
とも語っています。
アメリカの中央銀行であるFRBは、5月20日の発表で、
「『デジタルドル』を発行する可能性などについてまとめた資料を夏までにまとめ、議論を本格化させていく」
と表明しました。
FRBのパウエル議長は
私たちは世界を根本から変えつつある技術革命の真っただ中にいて、最新技術がデジタル通貨の開発と発行を可能にしている。
これを『進めるかどうか』や『どのように進めるか』を、機会とリスクを考えて決定する。
と発言し、「発行する」と断言はしていないものの、デジタルドルの発行について前向きであることを表明しました。
というのも、中国では、デジタル人民元の運用が2021年から開始しており、世界通貨であるドルを管理するアメリカは「ドルの将来を脅かす危険性がある」と警戒しているためです。
デジタル人民元については、国際的な影響力を持つウォール・ストリート・ジャーナルが「アメリカの権力の柱を揺るがしかねない新たな通貨の誕生」という特集記事を組むほどのインパクトを持っています。
よって、アメリカではデジタル人民元に対抗するための政策が急がれていると思われます。
つまり、ビットコインのような既存の仮想通貨にとっては、
- アメリカや中国といった大国が、仮想通貨の覇権争いに参入してきた
こととなり、
- この争いに勝たなければ、生き残ることはできない
という危機に瀕さらされているわけです。
とはいえ仮想通貨業界の中には、イエレン財務長官の誕生をポジティブに受け取っている人々もいます。
仮想通貨はインフレヘッジになる
デジタル資産投資企業のモーガン・クリーク・デジタルの設立者であるアンソニー・ポンプリアーノは、
「イエレン財務長官の誕生は、仮想通貨にとって大きな追い風となる」
と発言しています。
というのも、先に書いた通り『イエレン財務長官は金利を上げたくないハト派』であるためで、
- 低金利が続けば、インフレが進む
- インフレが進めば、『インフレに強い』と見られている仮想通貨にお金が集まる
というわけです。
しかし、仮想通貨は本当にインフレに強いのでしょうか?
一般的にインフレに強い資産には、
- 株式
- 不動産
- 金
といった『数に限りのある現物』が挙げられます。
この点から考えれば、『数に限りのある仮想通貨』は『インフレに強い』と考えることができます。
しかし、6月16日にパウエルFRB議長が『2023年中にゼロ金利政策を解除する方針』を打ち出しました(近いうちに金利が上昇する=インフレが進まない)が、ビットコインの価格変動はほとんど起こらず、
それどころか、3月4日にパウエルFRB議長が「インフレが起こる可能性が高い」と発言したときには、ビットコイン価格が約10%も下落しました。
つまり、実際の値動きを見ている限り、
- 仮想通貨がインフレに強いとは言えない
というのが実状です。
それもあたりまえの話で、いまの仮想通貨は、イーロン・マスクのTwitterでの一言で価格が乱高下するレベルの資産であるため、世界情勢がどうであろうと、政府の方針がどうであろうと関係なく、
『雰囲気が価格を決めている』
と言えるような状況であるためです。
とはいえ、これは『仮想通貨が広まっていないから、価格が安定しない』だけで、これから多くの人が仮想通貨が使うようになれば、価格も安定してくることが期待できます。
仮想通貨が生き残る道
先に書いたように、『世界中の中央銀行がデジタル通貨の発行をすすめている』ため、
- ビットコインなどの(国の保証のない)仮想通貨が生き残るのは難しい
と言わざるを得ない状況です。
しかし、世界のボーダレス化が進んでいる中で、
「通貨を国がコントロールするのはおかしい!」
「自由に使える通貨が必要だ!」
と考えている人がいることも確かなので、そう考える人々が増えていくことが、仮想通貨にとっての活路となるかもしれません。
仮想通貨が実際に通貨として広く使われるようになった後に、政府が仮想通貨を制限しようとしても、反対派の力が大きく、それを実行すのは困難でしょう。
そういう意味で、
- まだ仮想通貨が広まり切っていない
- 中央銀行が発行するデジタル通貨が(ほぼ)ない
という状況にある今が、仮想通貨にとって正念場と言えるのかもしれません。
今後どうなっていくかは分かりませんが、状況を興味深く見ていきたいと思います。
出典:
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