最終更新日:2020/7/8
ウォーレン・バフェットがおよそ1兆円で、天然ガス関連事業を買収すると発表しました。
バフェットは2020年5月に開かれたバークシャー・ハサウェイの株主総会で、「魅力的な大口投資先が見つからない」と言っており、2020年3月時点のバークシャー・ハサウェイの手元資金はおよそ15兆円と、過去最大の額であったことを明かしています。
そんな中、ひさしぶりの大型買収のニュースが飛び込んできたので、本記事で取り上げさせてもらいます。
<目次>
- ウォーレン・バフェットが天然ガス関連企業を買収
- 天然ガス関連事業は厳しい
- バフェット最大の失敗、バークシャー・ハサウェイの買収
- 1950年から続くスタンダードオイル社の高い株式収益率
- 天然ガス関連事業の買収の結果がどうなるかに期待
ウォーレン・バフェットが天然ガス関連企業を買収
今回買収すると発表された事業は、ドミニオン・エナジー社の保有する
- 天然ガスのパイプライン
- 貯蔵資産
の、事実上全てです。
ドミニオン・エナジー社は天然ガスパイプライン事業が上手くいっておらず、「天然ガスパイプラインの大型プロジェクト(アトランティック・コースト・パイプライン)を中止する」とも発表しています。
そんな中、バフェット率いるバークシャーが引き受けることになり、ドミニオン・エナジーとしては渡りに船といったところでしょうか。
とはいえ、エネルギー業界(再生可能エネルギー除く)は、環境保護団体や政府からも厳しく監視されており、バフェットといえども事業の立て直しは簡単ではないはずです。
天然ガス関連事業は厳しい
よって、ドミニオン・エナジーは「2050年までに二酸化炭素の純排出量をゼロにする」としており、従来の天然ガス関連事業から、再生可能エネルギー事業へ力を入れていくことを宣言しています。
よって、今回のバフェットの買収は「時代に逆行した買収(投資)」と言え、単純に考えると「何でそんな古びた事業の買収を…」と思わないでもありません。
そして、「時代に逆行した買収(投資)」と聞くと、以下2つのことが思い出されます。
- バフェット最大の失敗、バークシャー・ハサウェイの買収。
- 1950年から続くスタンダードオイル社の高い株価収益率。
というわけで、それぞれ簡単に解説していきます。
バフェット最大の失敗、バークシャー・ハサウェイの買収
バフェットは、1962年に綿紡績事業をしていたバークシャー・ハサウェイを買収しました。
その時バークシャーは毛織物産業の衰退により破綻寸前となっていたため、バフェットとしては「事業価値の割に安値で買収できる」と踏んでのことで、買収後も綿紡績事業を再生するべく投資を続けていきました。
が、「毛織物産業そのものの衰退」という時代の流れに逆らうことはできず、1985年には綿棒製事業から完全に撤退しています。
何となく、今回の「天然ガス関連事業の買収」に近いものを感じないでもないです。
バフェット(というかバークシャー)が考えている、「買収後の事業立て直しプラン」が時代を逆行していても利益が出るレベルのものでない限り、厳しい結果となりかねないな、という感想です。
※詳しくは以下記事をご参照ください。
とはいえ、衰退していく業界への投資が常に失敗しているとは限りません。
1950年から続くスタンダードオイル社の高い株式収益率
1950年から2003年までIBMと、スタンダードオイルによる株式収益率を比較したデータがあります。
(株式投資の未来 著者:ジェレミーシーゲル にて)
その間、各業界の成長率(市場シェアの変動率)は
- IBM(ハイテク業界) : 14.65%
- スタンダードオイル(エネルギー): -14.22%
と、面白いくらい真逆で、普通に考えれば「高い成長率にあるIBMへ投資した方が儲かる」となりますが、実際の株式投資による年間のトータルリターン(配当込み)は
- IBM :13.83%
- スタンダードオイル:14.42%
と、まさかのスタンダードオイル社が、超高度成長を遂げたIBM以上のリターンを叩き出していました。
(IBMもかなり優秀なリターンですが…)
「業界の成長率がマイナス14.22%」という、廃れていく業界であるのにも関わらずです。
この結果をもたらした理由は、
- IBMは投資家から人気=割高
- スタンダードオイルは投資家から不人気=割安
であったがために、割安なスタンダードオイル社は高配当銘柄となり、配当金を再投資することで大きなリターンを得られたわけです。
すなわち、「人気がなく衰退していく事業」であったとしても、「投資によるリターンが低迷する」わけではありません。
天然ガス関連事業の買収の結果がどうなるかに期待
というわけで、衰退していく事業への投資は、上手くいけば大きなリターンが期待できますが、時代の波に流されて、どうしようもなくなる可能性もあります。
バフェット率いるバークシャーのことなので、勝算なく1兆円規模の投資に手をだすことはないとは思いますが…。
なお、バークシャーのエネルギー部門担当はグレッグ・アベル副会長で、今回の買収を主導したのではないかと言われています。
今回の買収による結果が、バフェットの後継者争いにも影響してきそうで、ちょっと楽しみです。
最後に話を戻すと、ひさしぶりにバフェット率いるバークシャーの大型買収の案件が表にでてきました。
新型コロナによる暴落後、バフェットは「世界が変わった」と言い、バフェットは”売り(航空株全売りなど)”にばかり注目されていました。
しかし、買収に動いたということは「”変わった後の世界”が見えてきた」とも言え、少し明るいニュースといえそうです。
とはいえ、「バフェットの行動だから100%正しい」といったことは当然なく、これからもバフェットの行動に注視していきたいと思います。
個人投資家はバフェットの行動を”参考”にし、”模倣”することがないよう、しっかりと自分の頭で考えて行動していきましょう。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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