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【要約】普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門【書評】

FIRE(Financial Independence Retire Early) という単語が当たり前のように使われるようになり、実際にFIREした人の書いた『私がFIREした方法』といった本がいくつも出版されるようになりました。

 

そういった本の多くは、その本の筆者が考える

  • FIREするためのマインドセット
  • 資産を最大化するための投資法

などが解説されているわけですが、あくまでも『その人個人の経験』を書いているだけのモノであり、多くの人が真似できるとは限らず、真似できたとしても再現性があるとは限りません。

 

そこで、この記事では、日本という環境をターゲットとした本では初めてとなる

  • FIREのために有効な日本の制度の活用方法
  • 標準的な老後の過ごし方
  • 誰もが実行可能な投資方法

といった内容を書いている著書『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』を紹介したいと思います。

 

『FIREするためには、節約と投資が大切』なんてのは誰もが分かっていることですが、その上で、

  • 多くの人が知らない制度を活用し、いかに効率よく、最短でFIREを達成するためには何をすればいいのか

を、この本から学んでいきたいと思います。

 

この本は『FIREを達成した人』ではなく、『いちファイナンシャルプランナー』が、

  • 普通の会社員が、本気でFIREするにはどうすればいいのか

という目線から書かれています。

 

『FIREを達成した人』は、ある意味で『異端者』でもありますので、そういった方の意見ではなく、『常識を持ったファイナンシャルプランナー』が一般向けに書いたこの本は貴重で、とても参考になります。

 

<目次>

 

普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門

『日本版FIRE超入門』の最初では、FIREを目指すための方法として、以下3ステップを紹介しています。

  1. 所得をできる限り、とにかくできる限り増やす!
  2. 支出をできる限り減らす。とにかく出来る限り減らす!
  3. 資産をできる限り増やす。とに書く出来る限り増やす!

 

正直に言って『あたりまえ』な内容ばかりですが、「投資でうまく儲けることができたらFIREできる!」といった甘い考えを持っている人のためにも、(特に1.2.のステップは)触れずにはいられない内容でもあります。

 

その中でも『他のFIRE本にはない特徴』の一つとしては、 

本気でFIREを目指すなら働きがいより年収を取る覚悟も必要です。

と、『収入を上げること』 にも言及している点があげられます。

 

なぜ「年収アップ」がFIREに欠かせないのか

FIREするためには、『資産を増やす』ことが絶対条件となりますが、資産を増やすための選択肢としては

  • 年収を増やす
  • 資産運用によるリターンを上げる

のどちらかしかありません。

 

資産運用のリターンを上げるためには、

  • 原資を増やす
  • リターン率を上げる

のどちらかしかないわけですが、原資を増やすためには収入を増やすしかなく、投資で高いリターン率を得ることは普通の会社員にとってカンタンなことではありません。

 

よって、

  • FIREするための資産を手に入れるためには、年収アップが欠かせない

となるわけです。

 

そして、『日本版FIRE超入門』では、年収を上げる方法として以下4つをあげています。

  1. 長い時間働く…でもこれはあまりうまくいかない
  2. もうひとつ仕事をする「副業」
  3. 時給を高める、つまり専門性を高める
  4. もうひとつの選択肢 結婚と共働き

 

この記事の中ですべてを取り上げることはしませんが、3.の解説のなかで

メインの仕事をおろそかにすることでFIREに近づくことはあり得ません。

と強調しているのが、この本が『本気でFIREを目指すための方法が書かれている』と分かるポイントの一つです。

 

FIREを目指す人の中には、

  • 仕事がイヤだから早く辞めたい
  • こんな仕事を真面目にやるなんてバカらしい

と考える人も多く、実際に『手抜き』で仕事をしている人もいるようです。

しかし、FIREするためにも真面目に本業を(収入を上げるために)頑張ることが重要であるのは間違いありません。

 

例えば、

  • 月収が2万円アップすると、年間の所得が24万円増える

わけですが、同様の所得アップを投資から得ようとすると、

  • 投資リターンを年利5%とすると、投資資産を480万円増やさなければならない

ことになります。

 

このことからも(こんなカンタンに比べられるものではありませんが)、『本業による収入増』のインパクトの大きさが分かるかと思います。

 

また、『投資によるリターンは不安定』ですが、『本業による収入は安定的』である点も、本業を大切にすべきポイントのひとつだと言えそうです。

 

また、好きではない本業であったとしても、イヤイヤやっていると、より仕事が嫌いになってしまいます。

 

どうせやらなければならないのであれば、『いかに楽しく、いかに効率よく収入を上げられるか』を考えながら、本業にも本気になることをおススメします。

(もちろん『本気で仕事する』というのは、『労働時間を延ばす』という意味ではありませんよ)

  

さて、『収入を増やす』の次は、『節約』も見ていきたいと思います。

 

学んだ節約スキルは一生役立つ

『日本版FIRE超入門』では、

  • 家計簿アプリの活用
  • 口座の使い分け方法
  • 家計の50%をカットするミニマルライフへの挑戦

といった内容の解説をしていますが、この記事ではそのあたりは取り上げず、

『節約をしてFIREする』と聞くと、「それって、FIRE後も節約し続けないといけないってことだよね…」とネガティブに受け取る人に向けた内容を紹介します。

 

本書では、

FIREを成功させるまでのあいだに身につけてきた節約スキルはあなたの一生の財産となって、あなたのその後を支えてくれる力となるからです。

FIREを実現させるためには、相当な苦労をして節約に挑むはずです。

その際には乾いた雑巾を絞るようにムダな支出を削ってはさらに削るプロセスを繰り返します。

必要な支出を選択する力、満足度は高いが値段は安い支出を選び取る力(つまりコスパのよい支出をする力)を数十年にわたって養ってきたことは、FIRE生活が始まってからも役に立つでしょう。

 と節約について説明しています。

 

これは筆者(スパコンSE)も完全に合意で、『節約』とは

  • ムダなものを見つけ、省いていく作業

だと考えており、

  • 「もう節約やーめた」と考えたところで、一度『ムダ』とラベルを張った出費を再開することはない

と言えるモノが多いため、FIREする仮定で身に付けたスキルは、自動的に出費を削り続けてくれることになります。

 

よって、「FIREを達成するまでのガマンだ…」と節約するのではなく、

  • ムリなく、一生付き合っていけるレベルの節約スキルを身に付ける

ことが節約の目標であることを理解しておくと、節約に対する意識がポジティブに変わるのではないでしょうか。

 

この『ムダな出費を削る』という作業は、『総支出を下げる』という効果もありますが、それだけでなく

  • 自分がお金を使うべきモノに、支出を集中させられる

という効果も生み出すので、FIRE後の『自分のやりたいことだけやって生きていく』という生活を後押しすることにもなります。

 

多くの人は、いわゆる『ラテマネー』のような『気付いていないムダ使い』をしています。

一度、じっくりと節約に取り組んでみてはいかがでしょうか。

参考記事:ラテマネー節約だけで大金を貯められる

 

さて、『収入増』『節約』ときましたので、次は『投資』について紹介していきます。

 

投資で成果を上げる人はいるが、あなたがそこに含まれるかはわからない

『日本版FIRE超入門』では、

  • 安全・確実を取ると資産は増えない
  • 安全・確実・高利回りは危険
  • iDeco、NISA、積立NISAの使い分け方

などなど、投資の基本についても解説しており、具体的な投資法としては

  • 普通の人はインデックスの長期積立投資で十分

としています。

 

そして、

あなたがもし投資信託やETFのインデックス投資からステップアップをしたいというのであればそれを止めるつもりはありません。

ぜひ関連書籍も読んでいただいて、自分の投資スタンスを決定してください。

実際、投資家の多くはリスク愛好家が多く、かつ自信過剰(オーバーコンフィデンス)な人が多いので、インデックス運用より高いリスクを取りたい人のほうが多いでしょう。

問題は、銘柄選択の手間とヒマがリターンに見合うものであって、あなた自身が苦にならないものとなるかどうかです。

 

FIRE成功者はしばしば、トレーダーを継続しています。

彼らはマーケットをチェックし銘柄を掘り起こす作業が「好き」です。

朝から日経新聞を全ページチェックし、「モーニングサテライト」を視聴することもまったく苦にしません。

こういうタイプの人にとってインデックス運用はつまらないでしょうし、それでアウトパフューム(高い成績を上げること)は可能だと考えるでしょう。

そして実際好成績を上げられる人もいます。

あなたがそれと同じことができるかどうかは別の話です。

と言います。

 

「個別株投資をしたければどうぞ」と書いていながらも、「個別株投資はやめておけ!!」と言いたい気持ちがヒシヒシと伝わってきますw

 

また、この本では

  • 毎月〇万円の投資をして
  • 年間○%のリターンを得ると
  • 〇〇年後には、○○万円の資産ができる

といった具体的なシミュレーション結果も記載されているので、こういった計算が苦手な方は、この結果を見ることでFIREまでの具体的な道筋をイメージすることに役立ちますので、参考にしてみるのも良いでしょう。

 

といった感じで、FIREの基本となる

  • 収入増
  • 節約
  • 投資

のパートについて紹介してきました。

 

ここまでは「まぁ、そうだろう」と思った読者も多いでしょうから、この先は『日本版FIRE超入門』の中でも特筆すべきパートを紹介していきたいと思います。

  

FIRE成功者の多くは自宅を確保している

FIRE本や、投資本などで『資産を最大化するための方法』が語られるケースでは、

  • 自宅を持つな。賃貸にしろ。

と指南するコトが多いですが、この本ではそうは言いません。

 

以前話題となった、『老後2000万円』問題の2000万円の計算に家賃が含まれていない点から、

生涯を賃貸で過ごしたいと考える人は、「老後の2000万円」問題とは別に、「老後の生涯家賃相当分」を確保してリタイアする必要があります。

と指摘し、どちらかと言うと『持ち家』を進めているスタンスを取っています。

 

とはいえ、無条件で「持ち家を持て」と言っているわけではなく、

  • 賃貸で生きていくのであれば、生涯で○○万円の支出になる
  • 持ち家にするのであれば、住宅ローンで〇万円毎月払えば、〇年後には住み家の負担がなくなる

と具体的な数値を使い、どちらが自分にとって良い選択なのか、検討する必要があるとしています。

 

例えば、

  • 頭金2000万円+月10万円の35年ローンで、持ち家を買う
  • 月6万円の賃貸に生涯済む

を比べれば、(多くのケースで)圧倒的に賃貸の方が合理的でしょうが、

  • 頭金0円+月3万円の10年ローンで、格安の持ち家を買う
  • 月4万円の賃貸に生涯済む

 を比べれば、圧倒的に持ち家が有利となるのは明白です。

 

とはいえ、

FIRE成功者の多くは自宅を確保している

とも言っており、

  • 現実的には、持ち家を持っていたほうがFIREの難易度が下がる可能性が高い

ことを示唆しています。

 

また、筆者(スパコンSE)の知るFIREブロガーの多くも、『格安の持ち家を持っている』ケースが多いですし、セミリタイアを目指している筆者も持ち家派です(まだローン支払い中ですが…)

参考記事:賃貸よりも”断然”一軒家がお得な4つの理由

 

というわけで、世間の「持ち家にするとお金が貯まらない!」という言葉に惑わされることなく、自分にあった住宅の持ち方を考える必要があるわけです。

 

また、

  • 賃貸は、長生きになればなるほど総支出額が増える『長生きのリスク』がある
  • 持ち家には、『長生きのリスク』が少ない

といった点もあるわけですが、この『長生きのリスク』の備えとしてもっとも優秀な『年金』についても見ていきましょう。

 

年金の範囲内で生活すれば、家計は破綻しない

『老後破綻』という言葉を聞くことがありますが、年金は100歳、200歳まで生きようとも、一生もらい続けることができる制度であるため、

  • 年金収入の範囲内で生活すれば、老後破綻は絶対に起こらない

ということが言えます。

 

『年金2000万円問題』では、

  • 1か月の夫婦の生活費は、全国平均である27万円
  • 年金による収入が、約22万円
  • 差し引き、月5万円の取り崩しが必要

という前提に立ってシミュレーションされていますが、よくよく見ると

  • 1か月の夫婦の日常生活の費用(娯楽費などを除く)は、約22万円

となっており、年金による収入とほぼ等しいことが分かります。

 

つまり、

  • 平均的な年収を受け取れるのであれば、自力で貯める必要のある老後資金は「自分の娯楽のためのお金」だけでいい

というわけです。

 

また、このように「老後の生活費は年金で」と言うと、「年金はいつか破綻する」という間違った反論が飛んでくることがありますが、『年金制度は破綻しない』と言える制度となっています。

 

というもの、

  • 年金制度は、収入と支出のバランスを取るような制度となっている

ためで、『おさめられる年金の額』が減れば『配られる年金の額』が減少することはあれども、破綻することはありえない制度なわけです。

 

また、年金はGPIFによって運用されており、

  • 200兆円近い資産を持ち
  • そのうち100兆円ほどは、運用によるリターンで得た金額

ということで、着実に年金の総額を増やすことに成功しており、これからも増え続けていくことが予想されます。

参考記事: GPIFの2020年度の実績を紹介

(『無難に長期運用をすれば、着実に資産が増えることが期待できる』のは、FIREを目指している方からすれば、常識でしょう)

 

よって、

  • 『FIREしたあとの老後の生活』は、年金を頼りにしてもよい
  • ただし、『持ち家』があることが条件

だと言えそうです。

 

さて、続いては、FIREを目指している人であっても『あまり認知されていない情報』も紹介していきたいと思います。

 

FIRE実行前後にもらえるお金、払わなくていいお金、払わないといけないお金 

まず、『FIRE実行前後にもらえるお金』をざっとリストアップすると、

  • 退職金(企業年金)
  • 雇用保険(求職者給付)
  • 財形貯蓄
  • 持株会
  • グループ保険など

と、

  • 企業型確定拠出年金のiDeCoへの引継ぎ

 があります。

 

『雇用保険』はかなり大きな金額となりますが、

  • 自己都合の場合は、ハローワークで手続きをしてから、2か月と7日たたないと受け取れない

ため、早めの手続きが必要です。

 

また、FIREすることで支払う必要がなくなるものとして、

  • 所得税
  • 厚生年金保険

があり、FIREしても支払わう必要があるものとして、

  • 住民税
  • 健康保険
  • 国民年金保険
  • 固定資産税(持ち家のみ)

といったものがあります。

 

細かい内容や、申請方法などをここで紹介するとキリがないので、詳しくは『日本版FIRE超入門』を見て頂きたいのですが、FIREを目指しているのであれば少なくともここで上げた制度について詳しく理解しておく必要があります。

 

「FIRE時に思ってたよりお金がもらえた」のならまだしも、「FIREしたら思っていた以上にお金がかかった」となっては、『再就職』という手段も考えなければならなくなってしまいます。

 

この最悪の事態だけは避けられるよう、しっかりと計算しておきましょう。

  

まとめ: 日本版FIRE超入門を紹介は良書でした

 といった感じで、『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』を紹介させてもらいました。

 

この本を読んだ感想としては、

  • 真面目にFIREを目指す人ための本だった

というのが一番で、FIREの流行によって生まれた「私もFIREしたい!」と気軽に考えている人たちにとっては、現実を突きつけるような内容となっています。

 

しかし、「ラクな道ではないけども、本気でFIREしたいのであれば、その方法を教えよう」と具体的な道筋をしめしてくれています。

 

『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』では、ここで紹介した内容のほかに、

  • 副業で年100万円以上稼ぐ。ただし道は厳しい
  • まずは固定費から。家計の10%を削ってみる
  • 年何%稼ぐとFIREにより早くたどりつけるか考える
  • 民間保険はどこまで削っていいのか
  • FIRE計画の立て方
  • FIREを実現するのために必要な「その他の知識」
  • FXや不動産投資は儲かるのか
  • スタートが30歳代以降でもFIREは可能か

といったことが、『淡い期待』を持たせることなく、現実的に語られています。

 

現時点では、『65歳定年』が一般的となっていますが、

  • 少し前は、60歳定年が当たり前
  • 戦後すぐは、50歳、55歳定年が当たり前

でした。

 

さらに

  • 2021年には、70歳までの雇用確保が努力義務として企業に課せられた

わけで、これからも定年の年齢が上がっていくことは確実です。

 

そう言うとネガティブに受け取られるかもしれませんが、これは『寿命が延びている』ために発生している事象です。

 

よって、

寿命の延びに伴い老後も延びるとなれば、40歳代でのリタイアは、想定以上の自由時間の延伸を意味します。

20年のつもりが30年早いリタイアになり、かつ老後もまだまだ20年以上残っているとなれば、「人生の半部がまだ残っているのに仕事をしない時間を始める」ということになります。

 と、『日本版FIRE超入門』の筆者は言います。

  

また、『FIRE』というと、

  • 少なくとも50代のうちにお金を貯めて、引退すること

と考えるが一般的でしょうが、将来は

  • 少なくとも60代のうちにお金を貯めて、引退すること

となっているのかもしません。

 

「FIREなんて無理だから、定年まで働くわ」と考えている人も多いでしょうが、こう考えればFIREがグッと身近に感じるのではないでしょうか。

 

むしろ、FIREしないのであれば、70歳、75歳、もしかしたら80歳まで働くことになるかもしれません。

 

そういった生活に少しでも抵抗があるのであれば、一度真剣にFIREについて考えてみてもいいかもしれませんね。

 

 

 本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。

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