「投資をするんだったら、最低でも『ウォール街のランダムウォーカー』を読んでおきな」
と言われたことのある方は多いでしょう。
確かに『ウォール街のランダムウォーカー』は歴史的な名著であり、今でもウォール街で愛読されているような素晴らしい本です。
しかし、この本は
- 自力で読もうと思うと、聞きなれない単語がバンバン出てきて、しっかりと理解するのに苦戦する本
でもあります。
(それでいて500ページ近くもあるので、投資歴15年で読書が趣味の私でも苦戦しました…)
そこでこの記事では、
- 『ウォール街のランダムウォーカー』を分かりやすさ重視で要約、紹介する
を主な目的として、『読書』や『投資』に慣れていない人でもスムーズに読めるように解説していきたいと思います。
この本では、ファンダメンタル分析、テクニカル分析だけでなく、行動ファイナンス(心理学的分析)についても大量の実績を元に「どうすれば高いリターンが得られるのか?」を分析し、多くの投資家にとっての最適な投資法を教えてくれます。
少しでも多くの投資家に、この本の内容が伝わればと思います。
<目次>
- 『ウォール街のランダムウォーカー』を分かりやすく要約
- ランダムウォーカーって何?
- なぜファンダメンタル分析はうまくいかないのか
- チャート分析(テクニカル分析)はなぜうまくいかないのか
- インデックス投資でプロを上回る成績がとれる
- 『ウォール街のランダムウォーカー』から重要なポイントをピックアップ
- まとめ:ウォール街のランダムウォーカーを要約・紹介させてもらいました
『ウォール街のランダムウォーカー』を分かりやすく要約
まず『ウォール街のランダムウォーカー』の要点だけをざっくり紹介させてもらいます。
- 株価は短期的にはランダムで動いているので、将来の株価を予想することはできない
- これは、テクニカル分析(チャートを読む)であろうと、ファンダメンタル分析(企業分析)であろうと変わらない
- 将来が予想できないのは、個人投資家だけでなく、プロの投資家であっても同じことである
- よって、市場の平均的なリターンが取れる『インデックス投資』を買って、どっしりと構えているべし
世の中のほとんどの投資家は、『テクニカル分析』や『ファンダメンタル分析』といわれるような手法を使って、大きなリターンを手に入れようとしているわけですが、
「そんなものに意味はない。」
と断言しています。
もちろん、これは筆者バートン・マルキールの『主張』というわけではなく、『調査によって判明した事実』であるから驚きです。
では、どうやってその『事実』にたどり着いたのか、『ウォール街のランダムウォーカー』の中をのぞいていきましょう。
ランダムウォーカーって何?
『ウォール街のランダムウォーカー』の中で最も理解しなければならないモノが『ランダムウォーク理論』です。
『ランダムウォーク』とはその言葉が示している通り、
- 過去の動き方などを見たところで、将来の動き方を予想することは不可能である
という意味です。
そして『ランダムウォークが株式市場にも当てはまる』と主張しているのが、『ウォール街のランダムウォーカー』という著書です。
これはウォール街の投資家達からは決して受け入れられるものではありません。
というのも、投資家は
「将来、この銘柄の株価が上がりそうだから買いだ!」
「この銘柄はこれ以上上がらないから売りだ!」
と、『将来を予想して投資している』おり、『将来を予想することはできない』となれば、『投資家の行為はムダだ』となってしまうためです。
しかし、残念ながらこれは事実です。
まず、将来の株価を予想するための代表格である
- 『ファンダメンタル分析=企業の業績などから株価を予想する方法』はなぜ通用しないのか?
を見ていきましょう。
なぜファンダメンタル分析はうまくいかないのか
ウォール街のランダムウォーカーでは、ファンダメンタル分析が上手くいかない理由として、以下の3つを挙げています。
まず第一は、情報や分析が必ずしも正しいとは限らない点である。
第二に、「価値」の推定を間違う可能性が指摘できる。
第三に、市場も必ずしも自分の「間違い」を速やかに訂正するとは限らないこと、すなわち株価が必ずしも本来あるべき値段にサヤ寄せされないことがしばしばあることも、忘れてはなるまい。
つまり
- ただでさえ、企業の業績を分析することは難しい
- 仮に業績を分析できたところで、それを株価に置き換えることは難しい
- なぜなら、業績と株価が一致するわけではないから
と説明しています。
さらに、『ファンダメンタル分析の生みの親』であるベンジャミン・グレアム(ウォーレン・バフェットの師匠)でさえもが、ファンダメンタル分析に対して以下のようなコメントを残しています。
もはや、どんなに精巧な証券分析テクニックを用いても、他人より優れたリターンを得ることはできないのかもしれない。
こうしたテクニックは、「証券分析」の本が最初に出版された40年前には確かに実りの多い行為だった。しかし、状況は変わってしまった。
(今日では)多大な努力を費やして分析を行ったとしても、そのために必要なコストに見合った銘柄選択の効果を上げられるかどうかは疑問だ。
このコメントをざっくり整理すると、
- 昔はしっかり分析すれば勝つことはできたけど、いまでは相当むずかしい。
と言っているわけです。
そして、その理由は結構はっきりしています。
プロ投資家の活躍によって、割安銘柄、割高銘柄なんてもが消えた
近ごろは、
- ウォール街に代表されるプロ投資家の報酬がかなり上昇しており、その結果として優秀な人材が多く集まっている
という状況にあります。
そんな超優秀な投資家が「買うチャンスはないか~?」「売るチャンスはないか~?」と市場を監視しているので、
- 割安な銘柄があれあ、すぐに買われて株価が上がり
- 割高な銘柄があれば、すぐに売られて株価が下がり
- 株価に影響する報道があれば、すぐに反応する
といったことが起こります。
ここまでをまとめると、
- 『割安な銘柄、割高な銘柄は存在しない』=『株価は常に適正な価格となっている』
となり、この考え方は効率的市場仮説として広く受け入れられています。
そして、
- いまの株価は適正である
- これから株価がどう動くかは『世間に知られていない新しい情報』の内容しだい
- そして『世間に知られていない新しい情報』を事前に知ることはできない(できたらインサイダーになってしまいます)
- つまり、株価は『ランダムウォーク』している
という結論になります。
これが、
- ファンダメンタル分析で『買うべき銘柄』を見つけることはできない
という根拠です。
この当たりは、『ウォール街のランダムウォーカー』に並ぶ歴史的名著である『敗者のゲーム』でも詳しく分析されており、(残念かもしれませんが)この結論は『ほぼ間違いない』と言えそうです。
※敗者のゲームに関してはこちらの記事もご参照ください。
さて、もう一つ株価を予想するための方法があるので、そちらも見ていきましょう。
チャート分析(テクニカル分析)はなぜうまくいかないのか
それはチャート分析(テクニカル分析)です。
過去のチャートの動きを見て、
「こやってチャートが動いた後には、こう動くはずだ!」
「チャートにデッドクロスができたから、こうなるはずだ!」
という考え方による投資方法で、企業の業績などを無視して『株価の値動き』だけを見て投資をします。
そのテクニカル分析のことを、ウォール街のランダムウォーカーでは、以下のように表現しています。
この手の手法(テクニカル分析)は、結局のところ自己矛盾に陥るものだということである。
いかなる手法にせよ、同じ手法を用いる人々が多くなればなるほど、その有効性は低くなっていく。
もし、皆が同じシグナルに対して同じ行動を取るとしたら、どんなシグナルに基づいて売買したところで何の利益も得られない。
世の中には『テクニカル分析で勝つための方法』があふれています。
しかし、株式投資で勝つためには
- みんなが「もっと下がる」と思っているのに株価が上がるタイミングで買う
- みんなが「もっと上がる」と思っているのに株価が下がるタイミングで売る
という、『ほかの投資家の一歩先をいく投資』が必須です。
知られている方法で、ほかの投資の先にはいけない
しかし『勝てるテクニカル分析』が世の中に出回っているとすれば、多くの人はそれを信じ、多くの人が同じタイミングで「買いだ!」「売りだ!」と判断するようになります。
つまり、
- 世の中にあるテクニカル分析では『ほかの投資家の一歩先をいく投資』ができない
- つまり、既に知られているテクニカル分析で勝つことはできない
となります。
しかし、反対に
- 誰も知らないテクニカル分析手法を編み出せば勝てる可能性がある
とも言えます。
が、残念ながらそんな手法を編み出すことはできないでしょう。
それは『ファンダメンタル分析で勝てない』と解説したのと同じことで、
- 超優秀なプロ投資家が「どうすれば株式投資で勝つことができるのか?」と、常に研究を重ねている
ためで、『チャートがこう動いたら、こうやって投資すればいい』ということが判明すれば、すぐに多くのプロ投資が実行することになります。
特に、最近ではこういった分析はスパコンに任せているので、『勝てるパターン』があったらすぐに発見されてしまいます。
よって、
- テクニカル分析で勝つことはできない
という結論になるわけです。
さて、ここまで読むと『株価はランダムに動いているから、市場に勝とうとしても無理』という結論になってしまうかもしれませんが、ご安心ください。
『ウォール街のランダムウォーカー』では、
- 個人投資家は、インデックス投資でプロ投資家を上回ることができる
と断言しています。
インデックス投資でプロを上回る成績がとれる
近ごろは『インデックス投資』が身近なモノとなってきました。
インデックス投資とは、ざっと説明すると
- 株式市場”全体”に投資する(実際は全体ではありませんが)
- 全体に投資しているので、全投資家の平均並みのリターンがえられる
といった投資法です。
『平均並みのリターン』しか手に入らないので、投資スキルに自信のある人からは敬遠されますが、そうでない人から大きな支持を得ている投資法です。
さて、『インデックス投資は平均並み』と言っておきがら、『インデックス投資でプロを上回れる』と矛盾しているように感じてしまうかもしれません。
しかし、これには理由があります。
その理由が『売買手数料』です。
多くの投資家は、
- 少しでも高いリターンが手に入る銘柄を探し、日々売買をくり返す
という行為によって、多くの売買手数料を支払うことになります。
しかし、インデックス投資は、
- 銘柄を変更することなく、買った銘柄を持ち続ける
となりますので、売買手数料がほとんどかかりません。
この『売買手数料の差』が積み重なると、
- プロ投資家は売買によってリターンを押し下げていき、相対的にインデックス投資が有利になる
というわけです。
『株式市場のお金の多く』はプロ投資家が動かしています。
つまり『市場平均並みのリターン』=『プロ投資家の平均リターン』でもあるのです。
ということは、
- インデックス投資をすれば、『プロ投資家の平均リターン』をたいした手数料を払わずに手に入れられる
となるわけです。
そこで『ウォール街のランダムウォーカー』では、インデックス投資をすすめているわけです。
プロ投資家を超えるリターンを手に入れる自信があるのであればまだしも、そうではない”普通”の個人投資家は、インデックス投資がベストな選択だと言えそうです。
…
といった感じで、『ウォール街のランダムウォーカー』の重要部分だけを要約してお伝えさせてもらいました。
ただ、この本にはここまでに紹介した内容の他にも『学んでおいた方がいい情報』がいくつも書かれています。
よって、ここからはそういった情報を何点か紹介していきたいと思います。
『ウォール街のランダムウォーカー』から重要なポイントをピックアップ
ケインズの「美人投票」論
マクロ経済学を確立させたことで有名な経済学者ジョン・メイナード・ケインズ(身長は約2m)株式投資の本質を「新聞紙上美人コンテスト」に例えて説明しました。
これは新聞紙上に100人の美女の顔写真を掲載して、不特定多数の読者に6名連記で投票させた催しのことである。
そして、この「美人コンテスト」で選ばれた美女たちに、最も近い投票をした読者に多額の賞金が与えられた。
この美人投票に勝つためには、読者個人の美的基準は全く無関係なことに気付くだろう。
この場合のより優れた投票戦略は、むしろ他の読者たちが美人と思う顔のほうを選ぶことである。
これは、「株の取引は”自分の買った値段”よりも高く買い取ってくれる誰かが現れれば利益が発生する」ことと同じで、”自分の考える企業の価値”とは全く関係なく、”より高く買ってくれるであろう人が現れる株”を買うことが正解となります。
すなわち、アマゾン株のように「PERが100倍を超えるような異常に割高な株」であったとしても、”より高く買ってくれる人”が現れるのであれば”買い”となるわけです。
今後あなたがアマゾン株をPER200倍で買ったとしても、愚かにも「PER300倍でも欲しい」と思っている人に売ってしまえば儲かります。
これが続くと”バブル”が発生し、”買いたい”という愚かな人が出てこないほどの高値となった後に、バブルが崩壊します。
というわけで、ウォール街のランダムウォーカーでは過去のバブルを大量に挙げ、投資家の愚かさを露わにしています。
かのニュートンも大損
過去の有名なバブルに「南海泡沫事件」というものがあります。
南海会社は1711年にアフリカの奴隷産業で利益を上げることを目的に設立され、投機ブームによって数か月で株価が10倍にまで上昇しました。
その後、政府は鎮静化のための規制を設けましたが、鎮静化だけに留まらず大暴落を引き起こしました。
そのバブル崩壊で、大きな損失を被った人々の中には、かのアイザック・ニュートンも含まれ
「私は天体の動きは計算できるのだが、人々の狂気ばかりははかりきれなかった」
と、嘆いたようです。
歴史に名をのこす程の知能を持ったニュートンでさえ、バブルを避けられませんでしたが、あなたはバブルを避けられそうですか?
そして、ウォール街のランダムウォーカーでは、市場の狂気の章の締めくくりに以下のような言葉を載せています。
市場で常に損をする人たちというのは、大小さまざまのチューリップバブルの魅力に抵抗できないタイプの人たちである。
株式市場で金儲けをすることは、実際、それほど難しいことではない。
仮にウォールストリート・ジャーナルの株価欄にダーツを投げて銘柄を選んだとしても、長期的にはかなり高いリターンを上げることができるのである。
むしろ難しいのは、短期的に手っ取り早くお金を儲けられそうな投機に、お金をつぎ込みたくなる誘惑を振り払うことのほうである。
まとめ:ウォール街のランダムウォーカーを要約・紹介させてもらいました
ここまで記事にさせてもらった通り、ウォール街のランダムウォーカーでは、
- 過去の失敗(バブル)の歴史
- 利益を上げるための分析の難しさ
などが、多く語られています。
それだけでなく、
- リスクの大きさとリターン(ベータ)の関係
- 行動ファイナンス(集団心理)による戦略
- インフレと金融資産のリターン
- ライフサイクル毎の投資戦略
- ウォール街に打ち勝つためのアプローチ
などなどが多く語られています。
本書では「市場に勝つことは難しい」と説きながらも、「勝つためのアプローチ」を記載しているところが面白いところではありますが、結局のところ「勝つためのアプローチ」が正しかったとしても、それが世にでた時点で「勝つためのアプローチ」ではなくなってしまいます。
ウォール街のランダムウォーカーでは、
「以前の版で記載していた勝つための手法が、現在では通用しなくなってきている」
と正直に書いており、市場に勝ち続けることの難しさがよく分かります。
しかし、”市場に勝つ方法”を見つけることは容易ではありませんが、過去の失敗を学ぶことで失敗を回避することは可能です。
市場の熱におかされ、大きな損失を被らないためのヒントが満載であるウォール街のランダムウォーカーは、大きな利益を得るよりも”損をしたくない”という投資家にとってお勧めの一冊です。
進んで痛い目を見る必要はありませんからね。
『本を読むこと』を投資と考えると、読書ほど”低いコスト”で”高いリターン”が期待できる投資はそうそうありません。
『たった数時間』を読書に投資するだけで、あなたの投資リターンが向上する手助けとなり、さらに、安定したメンタルで投資を続けることもでき、多くの人が持っていないマネーリテラシーを手に入れることも可能です。
『お金に困らない豊かな生活』を実現するためにも、読書の力を活用しましょう。
ひょしおんぬは、”ウォール街のランダムウォーカー”を5回くらい読んでいますが、ボリュームがすごいせいか、毎度新しい発見があって、長い間楽しませてもらっています。
「年に1度くらいは読もうかな」となる本です。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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本ブログの読者に”最も伝えたい内容”を整理した記事です。
筆者はこの記事で紹介する本たちの力によって、
- 大きな資産を手に入れ、セミリタイア計画を遂行出来ている
と考えています。
本ほど「”低コスト”で”人生を豊かにする”道具」は他には考えられません。
本ブログのメインテーマとなる記事です。
平凡なサラリーマンがセミリタイアする方法をまとめてあります。
その気にさえなれば誰にでもセミリタイアできることが理解頂けるはずです。
それではまた