『ウォール街のランダムウォーカー』という歴史に残る名著を生み出し、インデックス投資家から崇められているバートン・マルキールを紹介します。
バートン・マルキールは、1973年に『ウォール街のランダムウォーカー』を通じて「インデックスに連動する投資をするべし」との提言をしましたが、当時まだインデックスファンドは存在していませんでした。
彼がいなければ、インデックスファンドの登場はもっと遅れていたかもしれませんね。
<目次>
- バートン・マルキールの経歴
- バートン・マルキールの主張
- 直近の発言:『ドルコスト平均法』の重要性
- 『インデックス投資へのドルコスト平均法』以外の戦略のススメ
- バートン・マルキールの趣味
- バートン・マルキールの家族
- バートン・マルキールの名言
- まとめ:バートン・マルキールの経歴や提言、名言を紹介させてもらいました
バートン・マルキールの経歴
バートン・マルキール(Burton Gordon Malkiel)は、経済学の教授で、プリンストン大学でマクロ経済学、コーポレート ファイナンス、投資市場に関する課程で教鞭をとっています。
(バートンマル・キールは90歳と高齢なのですが、プリンストン大学のサイトにそう
書いてあるので、本当に現役なのでしょう…)
彼の学部課程は常に高い評価を受け、非常に人気があるそうです。
また、主な経歴は以下の通りです。
- 1932年8月28日、マサチューセッツ州ボストン生まれ
- 1949年、ボストン・ラテンスクール(1653年(!?)にイギリスのボストンで設立された高校のアメリカ校)を卒業
- 1953年、ハーバード大学を卒業
- 1955年、ハーバードビジネススクールでMBA取得
- 1955年、米陸軍財務隊で中尉につく
- 1958年、投資会社スミス・バーニー・アンド・カンパニーの投資会社に入社
- 1964年、プリンストン大学で経済学の博士号を取得
- そのままプリンストン大学の教員となる
- 1973年、著書『ウォール街のランダムウォーカー(A Random Walk Down Wall Street)』を発表
- 1975年、大統領経済諮問委員会のメンバーを務める
- 1982年、イェール大学組織管理大学院の学部長を務める
- 2001年、ジャーナル・オブ・ファイナンス誌の最優秀論文を受賞
- 2003年、European Financial Managementの2003年最優秀論文賞を受賞
バートン・マルキールの主張
バートン・マルキールの主張は『効率的市場仮説』が根底にあります。
『効率的市場仮説』とは、
- 市場には『割安な銘柄』をさがす投資家が数えきれないほど駐留し、『割安な銘柄』があれば、『適正価格』になるまで買われる
- また『株価に影響をおよぼす情報』が出回れば、投資家はすぐに動くため株価にも即時に反映される
- つまり、市場の株価はつねに適正な値となっている
という説です。
※詳しくはこちら。
バートン・マルキールの書いた『ウォール街のランダムウォーカー』は『効率的市場仮説』をベースに、以下のような主張をしています。
- 株価は短期的にはランダムに動いているため予想することはできない。これは、テクニカル分析・ファンダメンタル分析のどちらであっても同じことだ。
- 将来が予想できないのは、プロの投資家であっても同じことである。
- つまり、『猿がランダムで作ったポートフォリオ』も『プロが熟考して作り上げたポートフォリオ』も同じリターンになる
そこで、バートン・マルキールは
- インデックス投資を使えば、プロを上回るリターンが得られる
- 『株価の売買』そのものによるリターンはプロと同じになるが、『売買手数料』がかからないインデックス投資の方がトータルリターンが大きくなるためだ
と、『インデックス投資』をすすめています。
※詳しくはこちら。
直近の発言:『ドルコスト平均法』の重要性
昨今では『スタグフレーション』『リセッション』の懸念があり、『投資しづらい状況』だと言えます。
この状況について、バートン・マルキールは、2022年9月のウォールストリートジャーナルに以下の様な投稿をしています。
確かに、投資家は心配することがたくさんあります。
原油価格の下落にもかかわらず、インフレは頑固に粘り強いことが証明されています。医療とシェルターのコストは引き続き急激に上昇し、コア インフレ率 (食料とエネルギーを除く) は依然として高いままです。
米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを続ける以外に選択肢がないように思われ、景気後退の可能性がますます高まっています。
また、長期的な懸念もあります。米国の人口増加は緩やかになり、急速に高齢化が進んでおり、労働力不足が成長とインフレに継続的な圧力をかける可能性があることを示唆しています。
インフレを抑制してきたグローバリゼーションなどの構造的要因が弱まりつつあります。保護主義の台頭、移民への反感、サプライチェーンの分断化はスタグフレーションを悪化させる傾向にあります。
と、投資家にとってネガティブな状況にあることに理解を示しつつも、
これらの不確実性にもかかわらず、今は株式をあきらめる時ではありません。
退職金を貯めるために投資をしている長期投資家は、普通株を重視したポートフォリオを組む必要があります。
さまざまな資産の中でも、株式は1世紀以上にわたって効果的なインフレヘッジであり、将来もそうなる可能性が高いためです。
と、過去の実績から、『株式投資の優位性』を説き、
また、労働による給与を投資している人は、ドルコスト平均法による利点を得られる状況にあります。
定期的に同額の投資を行うことで、保有株が高騰した価格だけで購入するのではなく、株式が急落した価格でも購入できるようになります。
価格が低いときに多くの株式を購入するため、1 株あたりの平均購入価格は低くなります。
ドルコスト平均法により、市場平均が上昇しなくても、投資家はプラスのリターンを得ることができるわけです。
そして、株価のボラティリティが高ければ高いほど、利益を得る可能性が高くなります。
と、ドルコスト平均法の有利さを説いています。
また、
思考実験として、最近の株式市場の 2 つの悲惨な時期におけるドルコスト平均法のリターンを見てみましょう。
1968 年 1 月から 1979 年の初めまで、米国経済は容赦ないスタグフレーションと不安定な株式市場に苦しみ、11 年間、主要な(成長率などの)平均値はゼロで終わりました。
2000 年 1 月のドットコム バブルの最盛期からの 13 年間も同じように悪い状況でした。株価はバブル期の高水準から下落し、2012 年初頭の市場平均は2000年ごろと同じ水準にありました。
しかし、ドルコスト平均法はプラスのリターンを獲得しました。
低コストのインデックス ファンドにドルコスト平均法で投資をした場合、1968年~のスタグフレーション期間中は年間 5.2%、2000年~のバブル崩壊後は 5.7% の利益を上げています。これはすべての配当が再投資したと仮定しています。
これらのリターンは高いモノではありませんが、インフレ率を上回り投資家に利益をもたらしました。
したがって、バリュエーションとスタグフレーションに関する最悪の事態におちいったとしても、『株式』は正しい選択と言えるでしょう。
と、過去の暴落期を引き合いに出し、
- 最悪の環境においても、ドルコスト平均法によるインデックス投資は、それなりなリターンをもたらしてきた
という事実を紹介しています。
とはいえ、
- バートン・マルキールも「どんな状況においてもドルコスト平均法によるインデックス投資」をすすめているわけではない
という事実もあるため、そこを紹介していきます。
『インデックス投資へのドルコスト平均法』以外の戦略のススメ
その一つが『退職後』です。
こちらも2022年9月のウォールストリートジャーナルに投稿された記事からの抜粋ですが、
- ドルコスト平均法による資産の売却は望ましくない
- 株価が下がった時に、より多くの株式を売却しなければならないためだ
と、ドルコスト平均法による売却のデメリットを説明し、
- 『退職後』は通常のインデックスファンドでなく、『配当成長株』をポートフォリオのメインとし、配当金によって生活費をまかなうべきだ
と推奨しています。
また、バートン・マルキールは
「市場によっては非ランダムウォークな値動きをしている。つまり効率的市場でない市場もある。」
という発言もしています。
よって、
「インデックス投資をメインの投資先にしたうえで、投資先を選定することには反対しない」
としています。
確かに、
- 新興国市場はインデックス投資に向いていない
- 仮想通貨のように、明らかに割高なモノが存在している
- ロビンフット銘柄のように、実態以上に人気がでる銘柄もある
などなど、『効率的市場』とは言えないようなモノも数多く存在しています。
これらを避けるべく投資をすることは、リターンを押し上げることになるかもしれません。
さて、続いてはちょっとブレイクタイムということで、私生活にも触れておきます。
バートン・マルキールの趣味
『カジノと競馬が趣味で、統計的分析使って挑んでいる』とモーニングスターのインタビューで発言しています。
本気の経済学者による本気の遊びですねw
バートン・マルキールの家族
バートン・マルキールは、1954年にジュディス・アサートン・マルキールと結婚しまし、一人息子、ジョナサンが誕生しました。
1987 年にジュディス マルキールが亡くなった後、バートン マルキールは 1988 年に 2 番目の妻であるナンシーワイスと結婚しました 。
ナンシーワイスは1987 年~ 2011 年のプリンストン大学の学部長だったので、職場結婚のようなものですね。
続いてはバートン・マルキールの名言を紹介します。
バートン・マルキールの名言
- 市場でお金を稼ぐことは難しくありません。避けるのが難しいのは、「手っ取り早く一攫千金を狙う投機的などんちゃん騒ぎにお金をツッコミたいたい」という魅力的な誘惑です。
「○○なら短期間で大金持ち!」で成功できるはずもありません。
- 投資とは『資産を買うことで、合理的に予測可能な収入 (配当、利子など) および、長期にわたる資産価値が上がることで利益を得られる方法』と見なしています。
「仮想通貨」は投資と言い難いです。
- 時間を味方につけてください。できるだけ早く貯蓄を始め、定期的に貯蓄しましょう。謙虚に生きて、貯蓄しているお金に手を出してはいけません。
これが基本ですよね~。
- 私たちの多くにとって、市場を推測しようとすることは楽しすぎて、諦めることができません。 平均以上の成績を収めることはできないと確信していたとしても、ギャンブル気質な人のほとんどは、投資資金の一部で『個別株投資』というゲームを続けたいと思うでしょう。
そう、個別株投資は楽しいんですよね~。
能力のある人は個別株投資で大きなリターンを狙うのはありですが、私のような凡人は『個別株投資の楽しみ』を捨てることが、資産を最大化するための方法だと理解しておく必要があります。
- 確実に投資収益率を高めることができる投資の自明の理が 1 つあります。それは、投資コストを最小限に抑えることです。
未来を読むことができない以上、これ以外にやれることはありませんね。
- 次のウォーレン・バフェットを見つけることは、干し草の山から針を探すようなものです。代わりに、低コストのインデックス ファンドの形で干し草の山を購入することをお勧めします。
『ウォーレン・バフェットを見つける』=『優秀なアクティブファンドを見つける』の意。
全部買いましょう!
- 目隠しをしたチンパンジーが株式上場にダーツを投げると、専門家が管理するポートフォリオと同様のパフォーマンスを発揮するポートフォリオを選択できます。
有名な話ですね。
この言葉によって、猿と同等だと言われたファンドマネージャ達がバートン・マルキールを批判しまくることになりました…。
- ある期間で最もホットな株やファンドは、次の期間で最悪のパフォーマンスを発揮します。
人気が出た銘柄は割高となり、リターンが落ちる。自明の理です。
- 市場以上のことを知っている人はいない
バートン・マルキール最大の名言でしょう。
いまの市場(株価)は投資家の総意です。それ以上の情報を持つ人は(ほとんど)存在しません。
だからこそ、その総意に乗るコトのできる『インデックス投資』をススメているわけです。
まとめ:バートン・マルキールの経歴や提言、名言を紹介させてもらいました
といった感じで、『ウォール街のランダムウォーカー』の著者バートン・マルキールを紹介させてもらいました。
1973年に書いた『ウォール街のランダムウォーカー』が投資界隈にかなり大きなインパクトをあたえ、いまだ多くの投資家に愛読されています。
バートン・マルキールの存在がなければ、世にインデックス投資が広まるのはもっと後になったかもしれず、我々インデックス投資家にとってバートン・マルキールは、崇めたくなるような存在であると言えます。
1932年生まれの御年90歳ということで、こ長寿とご健康を願っております。
よろしければこちらの記事もご参照ください。
参考記事:
- Burton Malkiel
- Burton Gordon Malkiel
- Burton G. Malkiel Quotes
- Burton Malkiel: 'I Am Not a Big Fan of ESG Investing'
- Does It Still Make Sense to Invest in Equities?
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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