Photographer: Eva Marie Uzcategui/Bloomberg
数百億ドルの資産を運用する『アーク・インベストメント社(ARK Investment Management LLC)』の創業者、CEOであるキャシー・ウッド氏を紹介します。
というのも、近ごろはキャシー・ウッド氏の名前をネット上で見かけるケースが多く、「誰これ?」と思っている方が多いのではないかと思ったからです。
まず、ざっくりと紹介すると、
- キャシー・ウッド氏は、『破壊的イノベーションに投資する』というスタイルで市場平均を大きく超えるリターンを出し続けてきた投資家で、代表的なETFとして『アーク・イノベーション』を運用している人物。
- 『アーク・イノベーション』が大成功し、世界中から注目されるようになった。
- アクティブ投資を推奨し、インデックス投資を批判している。
という人物です。
続いて、キャシー・ウッド氏の運営する『アーク・イノベーション』についてもざっくり紹介すると、
- アーク・イノベーションは、2014年からの6年間で資産を7倍以上にするという圧倒的にリターンを上げたことで注目された。
- しかし、近年はリターンを急速に失いつつあり、投資家が逃げ出しつつある。
というファンドです。
では、詳しく見ていきましょう。
<目次>
キャシー・ウッド氏の経歴を紹介
彼女に関する日本語の情報は数少ないので、おもに海外のサイトから情報をあつめて紹介します。
キャシー・ダディ・ウッド(Catherine Duddy Wood)氏は、アーク・インベストメント社の創業者、CEO、CIOです。
- 1955年11月26日生まれの66歳
- 父親は、アイルランドからアメリカへの移民で、軍隊のレーダーシステムのエンジニア
- 1974年に、カトリック校であるノートルダムアカデミーを卒業
- 1977年に、キャピタルグループ(世界最大規模の資産運用会社)でキャリアを開始
- 1980年に、ジェニソンアソシエイツ(保険会社)の資産運用部門に転職
- 1981年に、南カルフォルニア大学を、金融と経済学の理学士号を取得して卒業(1978年から1年間、安倍元首相が留学していた大学なので合っていてもおかしくないですね。他にもジョージ・ルーカスやニール・アームストロングや)
- 1998年に、ルルC.ワンとヘッジファンドTupeloCapitalManagementを共同設立。
- 2001年に、AllianceBernstein(世界的資産運用会社)のグローバルテーマ戦略の最高投資責任者に就任
- 2007年のリーマンショック時に、大きな損失を出したことで批判の対象となる
- 2014年に、AllianceBernsteinを退社し、『破壊的イノベーションへの投資』を旗印とするアーク・インベストメント社(ARK Investment Management LLC)を設立
キャシー・ウッド氏の表彰歴
アーク・インベストメント社を設立してからは、次のような栄誉を手にしています。
- 2020年に、ブルームバーグの編集長からベストストックピッカー(投資先の選択者)に選ばれる
- 2021年、運用するファンド2つの運用資産が、女性が運営するファンドの世界トップ10に入る
- 2021年、フォーブス誌における50歳オーバーのフォーブス50に選ばれる
キャシー・ウッド氏の言う『破壊的イノベーション』とは
キャシー・ウッド氏の言う『破壊的イノベーション』には、主に以下のようなセクターが含まれています。
- ゲノム編集
- ロボット工学
- 人工知能
- エネルギー貯蔵
- ブロックチェーン技術
いずれも『これから』の技術で、未来の私たちの生活に欠かせないものとなる可能性が高いです。
ただ、『いつ頃には実現可能なのか?』に関しては『不明』としか言えず、この点が不安要素と言えるのかもしれません。
私生活
キャシー・ウッド氏は、現コネチカット州ウィルトン住まいの、敬虔なクリスチャンです。
元夫のロバート・ウッド氏とは離婚していますが、ケイトリン、キャロライン、ロバートの3人の子どもがいます。
トランプ、バイデンの大統領選のときには、
「バイデン大統領の課税と規制の政策は、イノベーションを阻害することになる」
と批判しました。
また、企業への投資だけでなく『Duddy Innovation Institute』という、『破壊的イノベーションを研究する女子を支援する期間』を母校であるノートルダムアカデミーで立ち上げました。
インデックス投資に対する批判
キャシー・ウッド氏は、2022年5月に
「ここ20年間、急速にアクティブファンドからインデックスファンドへの資産が移動したが、将来はこの動きを『とてつもない誤算だった』と断ずるだろう。」
「インデックスファンドは、破壊的イノベーションへの投資が不足している」
と発言し、インデックス投資を批判しています。
In my view, history will deem the accelerated shift toward passive funds during the last 20 years as a massive misallocation of capital.
— Cathie Wood (@CathieDWood) 2022年5月4日
この発言の前には、ベンチャー投資家マーク・アンドリーセン氏の
「インデックス投資が大量の議決権を持っており、影響力が大きくなりすぎた」
という発言や、イーロン・マスク氏の
「インデックス投資は度が過ぎている」
という発言があり、その流れの中での発言でした。
ちなみに、イーロン・マスク氏が率いるテスラは、
- 第1位株主:イーロン・マスク氏
- 第2位株主:バンガード社
- 第3位株主:ブラックロック社
と、多数のインデックスファンドを有する企業が大株主となっており、イーロン・マスク氏はこの状況に関して危機感を持っているようです。
アーク・インベストメント社とは
さて、そんなキャシー・ウッド氏の運営するアーク・インベストメント社の旗艦ファンド、アーク・イノベーションETF(ARKK)を見ていきましょう。
旗艦ファンド、アーク・イノベーションETF(ARKK)のリターン
まずは、リターンを。
赤い線がS&P500のリターンで、黒い線がARKKのリターンです。
(見ての通りですけども…)2017年ごろからS&P500のリターンを超えていき、2020年のコロナ暴落以降は圧倒的なリターンを叩き出しました。
が、2022年5月時点ではS&P500と同じラインにまで爆下がりしている。という状況にあります。
ここ数年で一気に注目をあつめたキャシー・ウッド氏(ARKK)ですが、直近1年間のリターンは『悲惨』そのものです。
ARKKの投資先
繰り返しになりますが、ARKKのテーマは『破壊的イノベーションへの投資』です。
その『破壊的イノベーション』のお眼鏡にかない、ARKKが投資している銘柄は以下の通りです(投資比率順)
- テスラ:8.81%
- ロク(ストリーミング機器開発):8.44%
- ズーム:7.83%
- イグザクト(がん検知剤開発):5.85%
- ブロック(モバイル決済開発):5.51%
- テラドック(リモート医療):4.47%
- コインベース(仮想通貨):4.39%
- CRISPRセラピューティクス(ゲノム編集):4.30%
- ユーアイパス(ロボット):4.15%
- トゥイリオ(インターネットインフラ):4.05%
(合計54.53%)
日本人には馴染みのない企業が多いですが、どれも『破壊的イノベーション』を起こしうる企業ばかりです。
しかし、現在はこういった企業にとっては厳しい時代となっています。
というのも、長期金利が上昇してきており、
- 『破壊的イノベーション』を起こすためには大金が必要で、『大金を手に入れるために借金している企業』にとって、高い金利は大きな負担となる
ためです。
アーク・インベストメント社にとって、これからが正念場だと言えそうですね。
キャシー・ウッド氏は、いまのところ支持されている
と、近年は残念な状況にあるキャシー・ウッド氏ですが、投資家からの見放されたわけではなさそうです。
というのも、
- 2022年だけで、ARKKは15億ドルの資金流入となっている
ためです。
(総運用資産は78億ドルあまり)
2022年と言えば、ARKKのグラフをもう一度みると
と『悲惨』としか言えない状況にあります。
しかし、この状況においても大量の資金が流入しているということは、
- キャシー・ウッド氏や、キャシー・ウッド氏の言う『破壊的イノベーション』を信じている投資家がまだまだいる
ということでしょうし、
「株価が下がったいまこそチャンスだ!」
という投資家もいることでしょう。
というのも、ARKKの投資している企業は『将来性のある企業』であるため、
「短期的には株価が下がったところで、長期的には儲けられるだろう」
と考えている投資家が多いためだと思います。
しかし、そのような考えでARKKに投資したところでうまくいくとは限りません。
というのも、株式投資には『成長の罠』があり、
- 長期目線で見ても、成長する企業より、成長しない企業の方がリターンをもたらすことがある
という事実があります。
ARKKに期待している投資家が、この事実を忘れていないことを願うばかりです。
参考記事:株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす~
まとめ:ARKKの創設者キャシー・ウッド氏の経歴を紹介させてもらいました
といった感じで、ARKKの創設者キャシー・ウッド氏の経歴を紹介させてもらいました。
キャシー・ウッド氏の言う、『破壊的イノベーション』が世界にとって必要で、『破壊的イノベーション』が成功することで人々を豊かな生活を送れるようにしてくれる、ことはまず間違いないでしょう。
しかし、
- そう簡単に実現しないからこそ『破壊的イノベーション』と呼ばれる
- 実現するとしても、『いつ実現するか』については不明
という不安要素があり、かつ
- イノベーションに成功し、企業が急成長しようとも、株主へのリターンが大きくなるとは限らない
という大問題もあります。
『夢』を追いたい投資家にとってキャシー・ウッド氏のARKKは魅力的にうつることでしょう。
しかし、『リターン』を求める投資家にとって、キャシー・ウッド氏を信じることはハイリスクだと言わざるを得ません。
私のようなインデックス投資家は、キャシー・ウッド氏の発言に惑わされることなく、タンタンとインデックス投資を続けることが、生涯のリターンを最大化するための方法だと、あらためて思ったのでした。
参考:
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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