世界最高の投資家の一人、レイ・ダリオが、自ら立ち上げたブリッジウォーター・アソシエーツの経営権を手放しました。
ブリッジウォーターの運用資産は2355億ドルにも上り『世界最大のファンド』です。
1975年にレイ・ダリオが立ち上げ、ここまで成長させてきたわけですが、2010年ごろから後継者の育成に着手し、
- 2017年にCEOを辞任
- 2021年に会長を辞任
- 2022年10月に共同最高投資責任者を辞任。
- 合わせて株式の過半数を取締役会に譲渡
と、少しずつ後継者への移譲を行っていました。
なお、ニル・バーディー(40歳)とマーク・ベルトリーニ(65歳)が共同CEOとなり、ブリッジウォーターを引っ張っている状況にあり、レイ・ダリオはメンターという立場になります。
また、2月2日に初の女性最高投資責任者(CIO)となるカレン・カルニオール=タンブールが就任したことを発表しました(3人目の共同CIO)
ブリッジウォーターは、過去28年間で年平均11.5%のリターンを上げており、平均年間リターン (約 7%) を大きく上回っています。
(公式情報が見つからなかったのでこちらより)
『11.5%』というリターンは地味に見えるかもしれませんが、
- 100万円を20年間投資したケースでの資産の推移
では、以下のグラフのように大きな差がつきます。
というわけで、その素晴らしいリターンを叩き出してきたブリッジウォーターのポートフォリオを見ていきましょう。
ブリッジウォーターのポートフォリオ
下表がブリッジウォーターが保有している銘柄のトップ10です。
銘柄 | セクター | 保有率(%) |
---|---|---|
P&G | 生活必需品 | 4.23 |
ジョンソンエンドジョンソン | ヘルスケア | 3.90 |
ペプシコ | 生活必需品 | 3.32 |
コカ・コーラ | 生活必需品 | 3.25 |
IEMG(新興国ETF) | ETF | 3.24 |
IVV(S&P500ETF) | ETF | 3.19 |
コストコ | 生活必需品 | 2.87 |
VWO(新興国ETF) | ETF | 2.73 |
ウォルマート | 生活必需品 | 2.65 |
SPY(S&P500ETF) | ETF | 2.65 |
『素晴らしいリターンを上げつづけている』という実績から
「普通の投資家が思いつかないような銘柄に投資しているはず!」
なんてことを想像してしまうかもしれませんが、『生活必需品』や『ETF』の保有率がかなり高く、『地味』という印象を受けてしまうポートフォリオとなっています。
また、これら銘柄を合計しても、ポートフォリオ全体の32.03%にしかならず、『かなり広く分散投資している』ということも分かります。
短期間で莫大なリターンを叩き出したキャシー・ウッドは、『破壊的イノベーションへの投資』をテーマにし、ゲノム編集・人工知能・ブロックチェーンなどにたずさわる『派手な銘柄』への投資をメインとしていますが、昨今では『イマイチなリターン』しかあげられなくなっています。
反対に、『長期投資家』の代名詞でもあるウォーレン・バフェット(バークシャーハサウェイ)の保有銘柄上位は、
- アップル
- バンク・オブ・アメリカ
- コカコーラ
- シェブロン
- アメリカン・エキスプレス
と、『成熟した企業』ばかりです。
(なお、合計すると75%を超える保有率になります)
このあたりからも
- 長期にわたって高いリターンを手に入れるためには、『地味だが優良な銘柄』への投資をしなければならず、『流行りの銘柄』に手を出すべきではない
なんてことが分かりますね。
さて、ここからはブリッジウォーターを詳しく紹介していきます。
(概要で満足の方はここまでで十分です!)
ブリッジウォーターの3つのファンド
なお、ブリッジウォーターは
- ピュアアルファファンド
- オールウェザーファンド
- メジャーマーケッツファンド
の2つのファンドを準備しています。
ピュアアルファファンド
ピュアアルファファンドは、1989 年に立ち上げられたブリッジウォーターの主力ファンドです。
アクティブ投資を行っており、リスクを下げるために、債券・通貨・株式インデックス、コモディティ(商品)など様々な商品に分散投資しています。
2019年の時点で、
- 過去20年間で平均年率12%のリターンをあげ、年間リターンがマイナスとなったのは3回しかなかった
という優秀なファンドです。
2006年時点で事前に設定してあった『総資産の上限』に達したため、新規投資受付を終了しています。
オールウェザーファンド
オールウェザーファンドは、1996年に立ち上げたファンドです。
投資比率は、
- 株式 :30%
- 長期債:40%
- 中期債:15%
- 商品 :15%
と『比較的に無難なポートフォリオ』となっており、『どんな状況にあってリターンをあげられるファンド』という意味合いでオールウェザーと名付けられています。
元々はレイ・ダリオ本人の資産を運用するためだけのものでしたが、途中から顧客へも公開されるようになりました。
ピュアアルファ メジャーマーケッツファンド
メジャーマーケッツファンドは、ブリッジウォーターの当時のCEOグレッグ・ジェンセンが2011年に立ち上げたファンドです。
立ち上げ時には24億ドルを集め、当時最大の新規ファンドとなりました。
基本的にはピュアアルファと同じ考えで運用されていますが、ヨーロッパの債券など主要な市場(メジャーマーケット)により重きをおいています。
アルファとベータの分離
ブリッジウォーター(というかレイ・ダリオ)は、
- 『アルファ投資』と『ベータ投資』を明確に分けた最初のファンド
と言われることがあります。
ざっくり書くと、
- アルファ投資は、市場がどうあろうとも高いリターンを目指す投資
- ベータ投資は、市場と連動しつつも市場より高いリターンを目指す投資
となります。
この『アルファ投資』『ベータ投資』の分離は、1990年頃からブリッジウォーターが取り組み始め、2000年ごろから多くの投資家に認識されるようになりました。
ブリッジウォーター社について
ブリッジウォーター社は、1975年にレイ・ダリオが設立した投資管理会社で、個人投資家だけでなく、年金基金・外国政府・中央銀行などを顧客に持つ巨大企業です。
アメリカのコネチカット州ウェストポートに本社を構え、1500人の従業員がいます。
ファンドの他に、『Daily Observations』という『市場を分析した情報』の販売も行っています。
これは、『最も広い地域で読まれているいる市場分析の1つ』と評され、米国財務省のメンバーやオバマ政権の執行部が購読していたことでも知られています。
ブリッジウォーターは上下関係のない企業であると言われており、基本的には全社員がすべての会議内容を閲覧することができるようになっています。
この風土は、The newyorker(雑誌)から『カルト的』と表現されるほどに特殊なようです。
これもブリッジウォーターが優れたファンドであり続ける理由なのかもしれません。
日本でブリッジウォーターに投資するためには
なお、日本では『ブリッジウォーター・マクロ戦略ファンド(投資信託)』を通じてブリッジウォーターに投資できそうです。
詳しくは調べていませんが、目論見書には
と、素晴らしいシミュレーションが載せられていましたので、興味がある方は調べてみてはいかがでしょうか。(SMBC日興証券でしか取り扱っていないかも)
また、気が向いたらこのブログでもいつか紹介するかもしれません。
レイ・ダリオが設立したブリッジウォーターを紹介
といった感じで、レイ・ダリオが設立したブリッジウォーターを紹介させてもらいました。
この記事を書く上で最も印象に残っているのは、
- 地味な銘柄に投資することで素晴らしいリターンを上げつづけてきている
というところです。
投資に一攫千金を夢見ている投資家もいるかと思いますが、
- かなりの強運に恵まれない限り、無難な投資を続けることが大きな資産を手に入れるための近道である
なんてことをあらためて気付かされました。
なお、レイダリオ氏は著名投資家(経営者)あるあるの瞑想愛用者です。
よかったからこちらの記事もどうぞ。
出典:
- Bridgewater Associates
- Ray Dalio All Weather Portfolio
- ダリオ氏、ブリッジウォーター経営権を委譲
- Bridgewater Associates
- BRIDGEWATER ASSOCIATES, LP Top 13F Holdings
- Bridgewater names Karen Karniol-Tambour as third co-CIO
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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