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【全世界株式】『オルカン』『雪だるま』『SBI・V・全世界』『楽天VT』『Tracersオルカン』を比較

先日発表された投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Yearで『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』が圧勝したことからも分かる通り、全世界株式への投資の人気が高まっています。

※この記事内ので『オルカン』は『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』”のみ”を指しています。

 

しかし、先日以下のようなツイートを見かけ、色々と考えさせられました。

 

確かに、オルカン以上に分散している商品もありますし、同じように全世界株式へ投資できる商品は色々とあるわりに、人気が集中しすぎているような気がします。

 

というわけで、それぞれの投信を比較しながら「なんでそんなにオルカンが人気なの?」を考察してみようと思います。

 

比較対象はこの5つです。

  • オルカン
  • 雪だるま(SBI・全世界株式インデックス・ファンド)
  • SBI・V・全世界(SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド)
  • 楽天VT(楽天・全世界株式インデックス・ファンド)
  • Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)※2023/4/20追加

 

では、さっそく見ていきましょう~。

 

<目次>

 

『オルカン』『SBI・雪ダルマ』『SBI・V』『楽天VT』『Tracersオルカン』の基本情報を比較

 

まずは、基本情報を比べてみましょう。

  オルカン 雪だるま SBI・V・全世界 楽天VT Tracers
投資先

大型/中型のみ

約3000銘柄

大型/中型/小型

約9000銘柄

大型/中型/小型

約9000銘柄

大型/中型/小型

約9000銘柄

大型/中型/小型

約3000銘柄

ベンチマーク MSCI オールカントリーワールド

FTSEグローバルオールキャップ

FTSEグローバルオールキャップ FTSEグローバルオールキャップ MSCI オールカントリーワールド
形態

個別に株式購入

3つのETF買うだけ VT買うだけ ほぼVT買うだけ 個別に株式購入
信託報酬  0.1144%

 0.1102%

 0.1338%  0.199%  0.0578%
資産(億円)  8,588億  876  189  2,417  0
誕生  '18/10/31  '17/12/06  '22/01/31  '17/09/29  '23/04/26
特長 課税面で有利 最低コスト(?) シンプル 最古参 実績なし

参考

 

様々な論点があるかと思いますので、個別に見ていきます。

 

投資先について

投資先は、

  • オルカン、Tracersオルカンは大型・中型銘柄のみ
  • 雪ダルマ、SBI・V・全世界、楽天VTは小型銘柄もフォロー

となっており、インデックス投資のメリットの一つは、『広く分散投資することで「〇〇だけが成長した」といった事象を取り逃さない』ということを踏まえると、

  • オルカン&Tracersオルカンは、分散レベルがイマイチで、取り逃しが発生することもある

ということになります。

 

オルカンやTracersオルカンを選ぶときに、

「うーん…、どこが成長するから分からないからオルカンで!!」

と選択している人からしたら、

  • 「小型株ばかりが成長する時代」がやってくると、オルカン&Tracersオルカンのリターンはその他の投信より劣ることになる

という事実は、残念すぎるでしょう。

 

そうすると、

「『雪ダルマ』『SBI・V・全世界』『楽天VT』が優秀で、その中でも信託報酬の低い『雪ダルマ』が良いのかなぁ…」

なんて思ってしまいまいますが、さらに考察していきましょう。

 

信託報酬について

続いては、投資する上でかなりの重要項目となる信託報酬についてです。

 

信託報酬だけ見ると、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックスの0.0578%がダントツで低コストとなっています。

 

これを類似ファンドであるオルカンとの差を理解するために、

  • オルカン、Tracersオルカンそれぞれに100万円を投資した
  • どちらも年間リターンは5%とする(除く信託報酬)
  • 公開されている信託報酬以外にコストはかからないこととする

とした場合のリターンを比較すると

万円 オルカン Tracers  差額
10年後  161.34  162.12 0.8
20年後  260.32  262.81 2.5
30年後  420.01  426.06 6.0

となり、

  • 100万円投資していると、信託報酬0.05%の差が30年後に6万円の差を生み出す

ということが分かります。

 

しかし、どうやら

  • Tracersオルカンは、インデックスの標章使用料(『MSCI オール・カントリー・インデックス』の名を使う使用料)」を信託報酬に入れてないので、見かけ上の信託報酬が低いだけ

と言われており、

といった事実もあることから、

  • Tracersオルカンの実質コストはいまだ未知数であり、運用が始まった後に確認しなければならない

という状況にあると言えます。

(詳しくはこちらの記事で考察しています)

 

ベンチマーク・形態について

さて、今回比較しているファンドは、投資先に差があるため必然的にベンチマーク(基準とするインデックス)にも差がでます。

  • オルカン、Tracersオルカンは、『MSCI オールカントリーワールド』
  • 雪だるま、SBI・V・全世界、楽天VTは、『FTSEグローバルオールキャップ』

を基準にしています。

 

SBI・V・全世界、楽天VTの2つは、いわゆる「VTを買うだけファンド」で、

  • VT(Vanguard Total World Stock)とは、全世界株式ETFの王道商品で、世界中の大型/中型/小型銘柄を含む『FTSEグローバルオールキャップ』をベンチマークにした商品

であるため、

  • SBI・V・全世界、楽天VTは、『FTSEグローバルオールキャップ』に連動するように設計されている商品

となっています。

(細かいことを書くと、楽天VTは『VT 86%』『VTI 7%』『VXUS 6%』の組み合わせになっていますが、だいたいVTだから気にしない!)

 

しかし、雪だるまは、

  • VTI(米国)
  • SPDW先進国(除く米国)
  • SPEM(新興国)

の3つのETFを組み合わせた商品であり、

  • 雪だるまは、『FTSEグローバルオールキャップをベンチマークにする』としながらも、『FTSEグローバルオールキャップ』に連動する設計となっていない

という大きな問題があり、

「言ってることとやってることが違うじゃねーか!」

とツッコまざるをえない商品となっています。

 

とはいえ、見かたを変えれば、

  • 雪だるまは、VTよりも経費率の低いETFを組み合わせることで、信託報酬を低く抑えられるよう考えられた商品(よってオルカンよりも低くできた)

とも言えますので、

「ベンチマークとかよく分からんけども、ちゃんとリターンがあるんなら良いよ!」

と考えることができるインデックス投資家にとっては良い商品だと言えるでしょう。

 

というわけで、実際のリターンも比較してみることとします。

 

『オルカン』『雪だるま』『楽天VT』のリターンを比較

※オルカンが登場した2018年10月~を対象としています

※SBI・V・全世界は、2022年公開のため実績が少ないので省いています。

 

結果は、

  • オルカン:168.33ポイント
  • 雪だるま:165.38ポイント
  • 楽天VT:165.63ポイント

と、僅差ながらオルカンが優秀なリターンとなりました。

 

これは、

  • この時期に『偶然』(オルカンが含まない)小型銘柄のリターンがイマイチであった(実際は知らないw)
  • 楽天VTは信託報酬が高いから、とうぜんリターンも劣る

という面もあるかもしれませんが、

  • 雪だるま、SBI・V・全世界、楽天VTなどの『ETFを買うだけファンド』は、配当金への課税が多くかかるため不利となる

という問題も起因しているかと思われます。

 

例えば、

  • アメリカのVT経由でイギリスの銘柄へ投資しているケースでは、配当金がイギリスで課税されたのちにアメリカで課税され、日本でも課税される(3重課税)

となりますが、

  • 直接イギリスの個別銘柄へ投資していれば、配当金がイギリスで課税されたのちに日本で課税される(2重課税)

と、アメリカ(ETFの拠点国)での課税の分だけ差が出てきます。

 

それもオルカンのリターンを押し上げる要因となっていると考えられます。

 

将来『小型銘柄を含んだ投資のほうが高リターンとなるかどうか』は分からないものの

  • 課税の面では、オルカン有利である

という点については『確定している事実』であるため、これがオルカン人気の要因の一つとなっていそうです。

 

なお、『SBI・V・全世界』は、楽天VTよりも信託報酬が低い(0.0661%差)ぶんだけリターンが上がることが予想されますが、この程度の信託報酬の差では、オルカンには届かないのではないかと想像できます。

 

さて、色々なポイントが出てきたので、さっとおさらいをします。

 

一旦整理

もう一度、表を張っておきます。

  オルカン 雪だるま SBI・V・全世界 楽天VT Tracers
投資先

大型/中型のみ

約3000銘柄

大型/中型/小型

約9000銘柄

大型/中型/小型

約9000銘柄

大型/中型/小型

約9000銘柄

大型/中型/小型

約3000銘柄

ベンチマーク MSCI オールカントリーワールド

FTSEグローバルオールキャップ

FTSEグローバルオールキャップ FTSEグローバルオールキャップ MSCI オールカントリーワールド
形態

個別に株式購入

3つのETF買うだけ VT買うだけ ほぼVT買うだけ 個別に株式購入
信託報酬  0.1144%

 0.1102%

 0.1338%  0.199%  0.0578%
資産(億円)  8,588億  876  189  2,417  0
誕生  '18/10/31  '17/12/06  '22/01/31  '17/09/29  '23/04/26
特長 課税面で有利 最低コスト(?) シンプル 最古参 実績なし

 

ここまでの考察をざっとまとめると、

  • オルカンは、分散レベルがイマイチだけど、課税面で有利だし、一番よい実績を出しているファンド
  • 信託報酬がもっとも安い『雪だるま』は、そこそこ分散しているんだけど、「言っていることとやっていることが違う」ちょっとひねくれたファンド
  • SBI・V・全世界は、実績がまだないのでこれからに期待したいファンド
  • 楽天VTは、信託報酬が高いし、投資先もややこしくてヤダ
  • Tracersオルカンは信託報酬が低く見えるけど未知数

といった感じとなっています。

 

この時点で『楽天VT』『Tracersオルカン』は落第としますが、他の3ファンドは一長一短だと言えるでしょう。

 

具体的には、

  • 「小型株がなくてもいいから、課税面で有利で実績のあるファンドがいい」のであればオルカンを選択
  • 「小型株を含んでいて欲しいけど、ベンチマークとかは特に気にしない」のであれば雪だるまを選択
  • 「真面目に小型株を含んだファンドがいい」のであればSBI・V・全世界を選択

といった選択になるのではないでしょうか。

 

であるのにも関わらず、人気はオルカンにかたよっていますので、そのあたりも考察します。

 

オルカンばかりに人気が集まっていることに関する考察

オルカンは、インデックス投資において重要な『広く分散する』という行為においては、『雪だるま』『SBI・V・全世界』『楽天VT』におとっています。

 

それでも、オルカンが人気になっている要因は以下にあると考えています。

  • 課税面で有利
  • eMAXIS Slimeの「業界最低水準のコストを目指す」というコンセプト

 

とはいえ、インデックス投資家は、

「どこに投資したらいいか分からんから、広く投資しよう!」

という行動原理をもとに動いているため、『雪だるま』『SBI・V・全世界』に人気が集まってもいいような気がします。

 

しかし、インデックス投資家には、「広く分散しよう!」という考えだけでなく、

「頑張って投資したところでリターンが増えるわけでもないし、投資先を選ぶのにも時間をかけたくないんだよね~」

という思考も持っている人も多いでしょう。

 

そのようなインデックス投資家からしたら、各ファンドの詳細をしっかりと調べることはせずに、

「純資産額も圧倒的で、ちまたでの人気の高いオルカンなら安心なんじゃない」

とオルカンに投資することは当然のことにように思えます。

 

そして、そういった人々が増えることによってオルカンの人気がさらに高まっていくこととなるでしょう。

 

よって、

  • オルカンに人気が集中しているのは、『スタートダッシュに成功したから』

と言えるのではないでしょうか。

 

投資先として重要なのは『安心してお金を預けられること』であり、『安心』を論理的に導くことは困難(めんどう)なので、安心の根拠として『人気』を求めているのかもしれません。

 

また、人気のない商品には償還リスクもあるため、これも正しい判断基準の一つでしょう。

 

というわけで、

「似たような商品がいくつかあるし、もっと分散している商品もあるんだけど、オルカンに人気が集まるのもしょうがないよね~」

という結論となりました。

 

そして、これを打破するためには、

  • 『インデックス投資をしているくせに、やたら投資に時間を割いている投資家』が、『雪だるま』や『SBI・V・全世界』のメリットを発信しまくる

なんてことが必要になりそうです。

 

一つの投信にお金が集まれば、運用コストが小さくなり、投資家のリターンも大きくなることが期待できます。

ただ、ライバルファンドがいるからこそ『運用コスト削減』という企業努力も生まれます。

 

オルカンの信託報酬(0.1144%)が雪だるま(0.1102%)よりも高くなっているのは、『純資産に差がありすぎる雪だるまをライバル視していないから』なんじゃないかと個人的には思っています。

 

というわけで、『2大全世界株式投資』を誕生させるべく、オルカン以外についても発信してくれる人が増えることに期待したいと思います。

(私もするよ!)

 

そして、願わくば

  • 小型株も含めた全世界の株式を対象に、
  • 個別銘柄を直接買う(3重課税を回避)
  • 信託報酬が安い投信

が登場することを祈っています。

 

 本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。

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