レバレッジ投資ながらも、直近13年のリターンがS&P500の8倍近いETFがあります。
それは『SOXL』という商品で、一部の投資家から熱烈な支持を集めているようです。
なかには、
「SOXLに長期投資してFIREするぞ!」
と考えている方もいるようです。
しかし、基本的にレバレッジ商品は長期投資に向かず、その目標が達成できる可能性は低いと考えるべきです。
それでもSOXLによる過去のリターンは素晴らしいものがあるため、「SOXLには投資するな」と言うことはできず、適切な利用をすることができれば短期的に大きなリターンを手にすることができる商品でもありますので、メリット・デメリット等を紹介していきたいと思います。
<目次>
- SOXLとは?
- SOXLのメリット
- SOXLのデメリット
- SOXLのリターン
- SOXLの全期間リターン
- SOXLの直近5年間のリターン
- SOXLが長期投資に向かない理由
- 真逆の”SOXS”という存在がひっかかる
- 過去の高リターンが将来の低リターンを呼ぶ
- SOXLの今後の見通し
- SOXLの基本情報
- やっぱりSOXLは長期保有に向かない
SOXLとは?
SOXLとは大手半導体関連企業30銘柄に3倍のレバレッジをかけて投資するETF
SOXLとは、『Direxion Daily Semiconductor Bull 3X Shares』のことで、
- 大手半導体関連の企業30銘柄に、3倍のレバレッジをかけて投資するETF
で、代表的な投資先としては『エヌビディア』や『AMD』『インテル』などがあげられます。
現代において半導体は欠かせない製品となっており、自動車用半導体などモノによっては大きく不足している状況にあり、これからもかなりの成長が期待できる産業だと言えるでしょう。
そして、SOXLは半導体銘柄に3倍のレバレッジをかけている(通常の投資にくらべて値動きが3倍となる)ため、
- 株価が上がっていくのであれば、かなり大きなリターンが期待できる
ということで人気が集まっています。
SOXLのベンチマークは『ICE半導体インデックス』
SOXLは『ICE Semiconductor Index(ICE半導体インデックス)』をベンチマーク(同じ値動きになることを目標とする)ETFです。
なお、2021年8月までは、SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)をベンチマークとしていました。
どちらも似たような銘柄構成となったインデックスですが、銘柄ごとの投資割合に変化があり
- ICE半導体インデックスは、浮動株調整後時価総額加重方式
- SOX指数は、時価総額加重方式
となっています。
これによって、
- SOXLは『時価総額は高いけど、浮動株(創業者がホールドしている株などを除く)が少ない銘柄』の保有比率が下がる
といった特徴があります。
また、ICE半導体インデックスは、
- アメリカ市場に上場している半導体関連企業の上位30銘柄
を対象としているので、比較的に大きな企業ばかりが対象となっています。
SOXLの構成銘柄
SOXLの実際の構成銘柄はこんな感じ。
銘柄 |
保有比率 |
---|---|
Ice Semiconductor Index Swap | 22.38 |
NVIDIA Corp | 6.98 |
Broadcom Inc | 6.11 |
Texas Instruments Inc | 5.62 |
Advanced Micro Devices Inc | 4.70 |
Qualcomm Inc | 4.58 |
Lam Research Corp | 3.09 |
Applied Materials Inc | 3.01 |
ON Semiconductor Corp | 2.99 |
Microchip Technology Inc | 2.99 |
NXP Semiconductors NV | 2.98 |
Micron Technology Inc | 2.91 |
Analog Devices Inc | 2.89 |
KLA Corp | 2.89 |
TSMC | 2.84 |
ASML Holding NV ADR | 2.80 |
Marvell Technology Inc | 2.71 |
Intel Corp | 2.67 |
Monolithic Power Systems Inc | 1.83 |
Skyworks Solutions Inc | 1.60 |
Teradyne Inc | 1.52 |
STMicroelectronics NV ADR | 1.19 |
Entegris Inc | 1.12 |
SOXLのメリット
さて、ここからはSOXLのメリットを解説していきます。
短期間で大きなリターンを狙うことができる
SOXLはレバレッジ商品であることから、通常のETFよりも素早くリターンを上げることができます。
また『日々の値動きが3倍』となるので、長期的には3倍どころではないリターンが手に入ることもあります。
例えば、
- レバレッジなし商品が10%アップを10日間続けたケース
では、
となり、
- 10日間で『レバレッジなし』の6倍近いリターンを手にすることができる
- 10日間で資産が13.8倍になる
と、圧倒的リターンを手に入れることができます。
なお、これがさらに続くと、
- 20日間で資産が190倍になる
- 30日間で資産が2620倍になる
と、すさまじいリターンが生まれてきます。
まさに『夢を見ることができる投資』だと言えるでしょう。
少額から投資できる
アメリカ市場の銘柄へ投資するためには『1銘柄あたり最低数万円必要となる』ケースが多いです。
よって、SOXLに採用されているすべての銘柄に個別に投資をしようと思うと、数十万円~数百万円が必要になります。
しかしSOXLへ投資するのであれば、2000円程度から投資することができます。
これは、投資に慣れていない人にとって大きなメリットだと言えるでしょう。
これからも成長が期待できる半導体業界に投資できる
いまや『半導体』はどのような製品にも使用されるようになっており、この傾向がこれからも変わることなく、むしろ半導体の需要は加速していくことが期待されています。
半導体は、PCやスマホといった製品だけでなく、冷蔵庫や電子レンジのような家電、自動車のような製品にも使用されています。
現在は、PCや自動車に使用されている半導体が不足しており、増産が期待されているような状況であるため、半導体業界はしばらく成長することが期待でき、そこへの投資は安心して行えるかもしれません。
過激な投資をしていることで注目されやすい
SOXLは、日々の値動きが3倍となる過激な商品であるため、非常に注目されやすいです。
レバレッジをかけていない投資の多くは、値動きがなだらかであり、面白みに欠けるため、話題になるようなケースは少ないです。
とくに、近ごろ話題の『インデックス投資』の多くは、『長期的にはなだらかな右肩上がり』に株価が推移していくので、特筆すべき情報が出てこず、SNS上でバズるようなことはめったにありません。
しかしSOXLであれば、大きく上昇しようと、大きく下落しようと、値動きの激しさからSNS上などでの注目を容易に集めることが可能です。
よって、
- SOXLそのものでリターンを上げることができずとも、集客するためのツールとしては有能である
ということができます。
SOXLのデメリット
続いてはSOXLのデメリットも見ていきましょう。
リスクが大きい
SOXLはレバレッジを掛けている分、下落相場にはめっぽう弱いです。
さきほどと同じように、
- レバレッジなし商品が10%ダウンを10日間続けたケース
では、
と、『レバレッジなし』に比べて大きく下落していることが分かります。
とはいえ、
- レバレッジは『借金』とは違うため、資産がゼロ以下になることはない
- つまり、最悪でもマイナス100%までにしかならない
という特徴があります。
反対に
- 最高のケースを想定すると、無限大にプラスリターンが得られる
というモノでもありますので、
- ダメージは有限、儲けは無限大
ということができます。
莫大な手数料
SOXLの経費率は0.9%となっています。
これは、
- 100万円投資していると、毎年0.9万円を手数料としてとられる
ことを意味しています。
良心的なETFの経費率は0.1%未満というものも多く、それらと比べると『10倍近い手数料を取られる』ことになります。
長期投資には向かない
しかし、レバレッジ商品は『長期投資に向かない』という決定的なデメリットがあります。
レバレッジ商品は、
- 上昇相場に強い
- 下落相場に弱い
というあたり前の特徴だけでなく
- 横ばい相場に弱い
という致命的な特徴があるため、安心して長期間投資するには向いていません。
詳しくは後述します。
SOXLのリターン
と、色々と解説してきましたが、
「そんなことよりも儲けられるかどうかが大事!」
と考える人も多いでしょうから、リターンを見ていきましょう。
SOXL単独で見ても面白味がないので、ちまたで大人気のS&P500ETF(SPY)と比較していきたいと思います。
SOXLの全期間リターン
ウソん…。
SOXLが誕生した2010年3月を100ポイントとすると、
- SOXL:2537.9ポイント
- SPY : 352.6ポイント
となり、『SOXLの圧勝』となりました!(おかしいなぁ…)
これは、
- 2010年にSOXLに100万円を投資していれば、2023年2月には2537.9万円になっていた
ということを指しています。
『レバレッジ商品は長期投資に向かない』という特徴はどこにいってしまったのでしょうか。
続いては、直近5年間にフォーカスした推移も見てみましょう。
SOXLの直近5年間のリターン
結果はこんな感じ。
途中経過に大きな差はあれど、2023年2月時点では
- SOXL:166.6ポイント
- SPY : 151.5ポイント
と同じような結果となっています。
なお、SOXLの最大の下落だけを拾うと、
- 最高値:733.5ポイント(2021年12月27日)
- 最低値: 69.6ポイント(2022年10月14日)
- 下落率: 91%
ということになり、これは
- 2021年12月27日に100万円を投資すると、10か月後には9万円しか残っていない
ことを指しています。
いやー、すごい値動きですね…。
とはいえ、
「長期的には儲かってるんだからいいじゃない!」
という声が聞こえてきそうなので、SOXLの最大の弱点である『長期投資に向かない』について見ていきましょう。
SOXLが長期投資に向かない理由
一般的に
- レバレッジ商品は長期投資に向かない
と言われ、良心的なレバレッジ商品の目論見書には、
「この商品は長期投資用には向かないよ」
という注意書きがされています。
例えば、『楽天・日本株4.3倍ブル』という商品には、下の様な注意書きがされています。
実際に、こちらの記事でも検証していますが、『10%下落の連続、10%高騰の連続』を10サイクル繰り返すと仮定すると、以下のグラフのようになり
- レバレッジなし商品は徐々に資産を増やしていくが、レバレッジ商品はどんどん資産を減らしていく
ということが分かります。
一般的に、
- 株式は、上昇・下落を繰り返しながら、長期的には右肩上がりになる
と考えられていますが、これはレバレッジには当てはまらないわけです。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
真逆の”SOXS”という存在がひっかかる
なお、SOXLとは反対に
- SOXL対象の銘柄が、値下がりしたら儲かるETF
として、SOXS(Direxion Daily Semiconductor "Bear" 3X Shares)というモノも存在しています。
こちらも3倍のレバレッジを掛けており、
- 半導体銘柄の下落が続くことで、大きなリターンが手に入る商品
です。
SOXL、SOXSという真逆の商品が存在していることから、
「投資家のリクエストに答えるべく様々な商品を提供していて素晴らしい!」
と考えることもできますが、私は
「株価の上昇を予想する投資家が多い時でも、下落を予想する投資家が多い時でも、投資家から手数料を手に入れられるよう周到に準備されている」
なんてことを想像してしまいます。
こんなところからも、
- SOXL(やSOXS)は長期投資向けの商品ではなく、ポジションがコロコロ変わる投資家から手数料を引っ張り出すための商品である
なんてことを考えてしまいます。
とはいえ、
「色々文句を言おうとも、過去のリターンはむっちゃ優秀だからいいじゃん!」
と思う方も多いでしょう。
しかし、残念ながら
- 過去のリターンは将来のリターンを補償するモノではない
- むしろ、過去に高リターンであったからこそ将来のリターンが小さくなるリスクもある
という問題があります。
過去の高リターンが将来の低リターンを呼ぶ
過去に素晴らしいパフォーマンスを上げてきた投資先は、人気の投資先となります。
そして、そこには多くのお金が集まることとなり、その投資先の値があがっていき、さらに素晴らしいパフォーマンスを生むことになります。
その結果、その投資先は『割高な投資先』となり、そのタイミング以降に投資した人はリターンを手に入れることができなくなります。
つまり、
- 『良い投資先』であることが周知されることで、『良い投資先』ではなくなってしまう
ということです。
投資には『靴磨きの少年』という寓話があります。
その寓話では、
- 靴磨きの少年が「○○に投資すれば儲かるらしいよ!」と言っていたら、その○○は天井であり、これからは落ちていくことになる
という教訓が語られています。
投資商品は、買う人が増えれば増えるほどに価格が上昇していきます。
隠れた優良商品があったとき、
まずは、一部の有能なプロの投資家が気付き、
次に、特別な情報源をもつ個人投資家が気付き、
次に、普通の個人投資家が気付き、
最後に、投資家ですらなかった『靴磨きの少年』のような人々が気付きます。
そして、投資家ですらなかった人々が買った後には、これ以上そこに投資する投資家は現れません。
つまり、
- 『靴磨きの少年』が気付いたときが、価格のピークである
と言えるわけです。
この教訓から
- 今のSOXLは、どの階層の人にまで「買いだ!」という考えが伝わっているのだろうか?
- 自分の元にまで「SOXLはいい商品だ」という情報が伝わってきたが、自分はどの階層に属するのだろうか?
を考えなければならないことが分かります。
過去のリターンを見ている限り、SOXLは素晴らしいリターンを上げてきており、それによって人気商品となっています。
実際に、いままで投資もしてこなかった人々がSOXLに手を出しているように見受けられます。
投資で大きなリターンを手にするためには、投資先が不人気なうちに投資しておく必要があります。
これはSOXLだけでなくすべての投資に対して言えることです。
よって、投資をする前に、
- 優良な商品は、優良な商品だと認知されることで優良な商品でなくなる
という問題点をしっかりと受け止めておく必要があります。
SOXLの今後の見通し
SOXLの投資先である『大手半導体関連企業』は、半導体の需要がこれからも高まっていくであろうことから、『盤石である』と言ってもいいでしょう。
しかし、『大手半導体関連メーカの経営が盤石である』ことと『そこに投資している投資家のリターン』は直接つながるものではありません。
例えば、
- 1950年~2003年という『IT産業の大躍進時代』において、IBMと(衰退産業にある)スタンダードオイルのリターン(配当金再投資)を比較すると、スタンダードオイルの方が投資家に高いリターンを与えた
という事実があります。
この間は、
- ハイテク産業 : + 14.65 %
- エネルギー産業: - 14.22 %
と、圧倒的に『IBMの属するハイテク産業が成長していた』のにも関わらず、です。
※詳しくはこちら
これは、先にも書いた
- 人気がある商品は割高となり、投資家へのリターンがイマイチとなる
といった考えがズバリ当てはまったことによる結果です。
『レバレッジなし投資』ですらこのような結果になることを踏まえると、
- レバレッジをかけることで複雑な値動きをするSOXLの今後の見通しは、半導体関連メーカの動向とはまったく関係なく、どのようになるか想像もつかない
と言うほかありません。
よってSOXLへ投資するのであれば、『長期投資』をするのではなく、
- 『いますぐに半導体関連企業の株価が大きく値上がりする』という確信を持てたタイミングにだけ投資するべきである
と言えるでしょう。
反対に、その確信が持てないのであれば、SOXLへの投資をするべきではありません。
SOXLの基本情報
では、最後にSOXLの基本情報を紹介したいと思います。
経費率 |
年0.9% |
---|---|
資産総額 | 49.2億ドル |
ファンドマネージャ | Paul Brigandi |
運用会社 | Direxion |
直近配当利回り | 0.96% |
設定日 | 2010/3/11 |
取扱証券会社 | SBI証券、楽天証券、マネックス証券など |
SOXL – Portfolio – Direxion Daily Semicondct Bull 3X ETF
やっぱりSOXLは長期保有に向かない
といった感じでSOXLを紹介させてもらいました。
『レバレッジ商品は短期向け商品である』という考えが広がりつつありますが、SOXLのように『レバレッジで長期リターン(といっても10年そこそこですけど…)がむちゃくちゃ優秀』な商品も存在しています。
これはある意味あたり前で、
- 多くのレバレッジ商品が存在していれば、そのうちのいくつかは『偶然』高パフォーマンスになることもある
- いわゆる『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』の言葉通りの結果
だと考えられます。
なかには本当に優秀なレバレッジ商品もあるかもしれませんが、
- 高パフォーマンスを出した商品が、ただの偶然の結果なのか、本当に優秀な商品なのか、判断することは難しい
と言わざるをえず、今後もこれまでと同じようなリターンを与えてくれるかどうかは分かりません。
また、
- 過去に高パフォーマンスだったからこそ、未来のパフォーマンスが低下する
という懸念もあります。
よって、SOXLのように『すでに人気となっている商品』にこれから投資しようと思うのであれば、十分注意して行う必要があります。
この記事がSOXLへの投資を検討している人に届いてくれればと思います。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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