先日こっそり教える!プロが売りたいアクティブファンド厳選2銘柄なんて記事を書き、その中で
「キャピタル世界株式ファンドは高信託報酬なファンド」
という部分だけ切り取って紹介してしまいましたが、それはさすがに不公平なので、ここで詳しく紹介しようと思います。
このファンドを運用するキャピタルグループは、
- 1931年生まれの老舗
- 敗者のゲームの著者チャールズ・エリスが「脅威」と賞賛する企業
- 全世界株式投信などが使用しているMSCIインデックスの生みの親
- 資産運用額はゴールドマンサックスとほぼ同等
など、注目に値する企業ではあるのですが、「広告を打たない」という企業方針により、あまり知られていない企業でもあります。
というわけで、『キャピタル世界株式ファンド』だけでなく『キャピタルグループ』に関しても学んでいって頂ければと思います。
<目次>
- キャピタル世界株式ファンドとは
- キャピタル世界株式ファンドとeMAXIS全世界株式の長期チャートを比較
- キャピタル世界株式ファンドの今後について
- キャピタル世界株式ファンドの組み入れ銘柄
- キャピタルグループとは
- キャピタル世界株式ファンドの評判
- キャピタル世界株式ファンドの基本情報
- まとめ:キャピタル世界株式ファンドを紹介させてもらいました
キャピタル世界株式ファンドとは
『キャピタル世界株式ファンド』と呼ばれるモノには、以下4つの投資信託があります。
- キャピタル世界株式ファンド
- キャピタル世界株式ファンド(限定為替ヘッジ)
- キャピタル世界株式ファンド年2回決算(分配重視)
- キャピタル世界株式ファンド年2回決算(分配重視/限定為替ヘッジ)
(各商品の差異は名前の通りなので説明するまでもありませんね)
なお、この記事では、もっとも売れ筋である『キャピタル世界株式ファンド』を対象とします(ヘッジなし・分配金なし)
キャピタル世界株式ファンドを運営しているのは、1931年に創業したキャピタル・グループにあるニューパースペクティブ・ファンドというアクティブファンドです。
ファンドの特色を交付目論見書から確認すると、
実質的に世界各国の株式等へ分散投資をすることで信託財産の中長期的な成長を目指します。
と書かれており、「”特色”としてこれを書くってことは、特徴を明確にすることが難しいファンドなんだなぁ…」なんていう感想を持ってしまいます(交付目論見書)
また、実際に投資するまでの流れとして
といった説明がなされていますが、端的に言うと、
「各担当がしっかりと調べて投資先を選び、それを組み合わせて一つのポートフォリオを作っているよ」
「だからしっかりと分散投資されているよ」
といった感じになります。
よって、
- これからの時代をリードするであろう先進的な企業に投資します
- 目立ってはいなしが優良な銘柄を見つけ出して投資します
といったポリシーがあるわけではなく、
「なんとかしていい銘柄を探します!」
「一人のマネージャの判断だけでなく複数人で判断します!」
といった考え方で投資していると言えそうです。
素晴らしい投資家であれば、投資先を限定するようなポリシーは足を引っ張る要因ともなりかねないため、
- キャピタル世界株式ファンドのリターンは、どれだけ優秀な投資家をかかえられているか?にかかっている
ということになります。
さて、ポリシーで測れない以上、過去の『成績』がこのファンドを測る重要な指標ということになりますので、チャートを他のファンドと比較しながら見ていきたいと思います。
キャピタル世界株式ファンドとeMAXIS全世界株式の長期チャートを比較
というわけで、同じく世界株式の投資信託である『eMAXIS全世界株式』と比較してみましょう。
なお、長期間を比較するべくSlimでない『eMAXIS全世界株式(信託報酬0.66%)』を対象としているのでご注意ください。
なお、比較する期間は、eMAXIS全世界株式が誕生した2010年7月~とします。
結果は見ての通り、
- ほぼ同じように推移している
- しかし、リターンはeMAXIS全世界株式に負けている
という状況にありました。
キャピタル世界株式ファンドがどのような銘柄の選び方をしているのかは分かりませんが、交付目論見書にあった
- 全世界株式に対して
- 複数のポートフォリオを組み合わせて、一つのポートフォリオにする
からは『しっかりと分散した投資をしている』ということが想像できます。
そして、このチャートからは
- キャピタル世界株式ファンドは、アクティブ投信でありながらも全世界株式を対象にしっかりとした分散投資をしているため、全世界株式インデックスに近しい値動きになる
なんてことが分かります。
この結果は、キャピタル世界株式ファンドにとっては残念な結果なのかもしれませんが、インデックス投資家である私からすると『あたり前』のことのように思います。
というのも、
- 株式市場は効率的市場仮説通りのモノとして考えられる
- つまり、すべての銘柄は適切な株価となっている
- よって、どの銘柄に投資をしても期待リターンは同じである
- ということは、広く分散投資をすれば、どんな銘柄へ投資していても同じようなリターンになるはずである
と考えられるからです。
もちろん、市場は完全なる効率的市場ではないのは明らかであり、そこを突いた投資によって市場平均を超えるリターンが手に入れられることもあります。
キャピタル世界株式ファンドは、アクティブ投資によって『市場平均より優れたリターンを叩き出す銘柄』を選ぶことを目的としているわけですが、
- キャピタル世界株式ファンドのリターンからも、市場平均を超えることの難しさがよく分かった
と言えるでしょう。
キャピタル世界株式ファンドの今後について
というわけで、キャピタル世界株式ファンドは、
- 今後も全世界株式に近しいリターンになるだけであろう
- よって、投資するのはやめておけ
というのが私の意見ということになります。
信託報酬の高いeMAXIS全世界株式と比較してもリターンが劣後しているわけですから、昨今注目を集めている低信託報酬なオルカン(eMAXIS Slime 全世界株式など)と比較すれば、より劣ったリターンになると考えられます。
もちろん、アクティブに投資先を選定しているわけなので、
- 素晴らしい銘柄ばかりを選べるようになり、全世界株式インデックスを超えるリターンが挙げられるようになる
というケースもあり得ますが、
- 投資先の銘柄が多くなればなるほどに、全世界株式に近しいリターンになる
なんてことが言えますので、今後にどれほど期待を持っていいのか、難しいものがあります。
では、実際にキャピタル世界株式ファンドが投資している『組み入れ銘柄』を確認してみましょう。
キャピタル世界株式ファンドの組み入れ銘柄
キャピタル世界株式ファンドの組み入れ銘柄トップ10は以下の通りです。
テスラ | 6.58% |
マイクロソフト | 4.20% |
アルファベット(Google) | 2.44% |
TSMC | 2.24% |
ASML | 1.57% |
メタ | 1.52% |
ノボ ノルディスク | 1.49% |
アマゾン | 1.46% |
イーライリリー | 1.45% |
ネスレ |
1.31% |
(2022年9月時点)
『組み入れ銘柄数』は確認できませんでしたが、ここトップ10から想像すると
- もっとも投資比率の高いテスラですら6.58%ということは、結構多くの銘柄に分散投資している
ということが分かります。
なお、これは想像ではありますが、本ファンドには以下9名が運用メンバとして携わっています。
このファンドの特色である『複数のポートフォリオを組み合わせる』というのは、『これら運用者がそれぞれのポートフォリオを組んでいる。』ということだと考えられ、これだけ多くの運用者がいれば、投資先が分散されてインデックスに近しい値動きになるのはあたり前と言えるのかもしれません(Capital Group)
よって、繰り返しになりますが、
- 投資する銘柄数が増えれば増えるほどに、リターンはインデックスに近づく
ということを踏まえれば、
- ここで確認した組み入れ銘柄からも、キャピタル世界株式ファンドは今後も全世界株式インデックスと同じような推移を辿ることになる
ということが予想されます。
キャピタルグループとは
さて、ネガティブなことを書いてきましたが、キャピタル世界株式ファンドを運営するキャピタルグループそのものは非常に素晴らしい企業だと言えます。
その根拠の一つが、
- 『敗者のゲーム』の著者であるチャールズエリスが、キャピタルグループを紹介する著書を書き、紹介していたから
です。
それがこれ。
キャピタルグループは広告を出さない企業であるため、どういった企業なのかを知るための情報が少ない企業です。
そこで、チャールズ・エリスが、キャピタルの誕生から今日の成功にいたるまでの経緯いを紹介しつつ、これからのキャピタルを予想しています。
この
- インデックス投資の権化とも言えるようなチャールズ・エリスが、キャピタルグループというアクティブ投資をしている企業を「脅威」と表現するほどに賞賛している
という点だけで、キャピタルグループの評価が爆上がりで、他の情報はいらないくらいです(アクティブ運用の雄 キャピタル 驚異の資産運用会社の実態とは)
が、せっかくなので少しばかり紹介させてもらいます。
キャピタルグループは、1931年にロサンゼルスでジョナサン・ベル・ラブレスによって創業されました。
現在の会長はティム・アーマー(Tim Armour)です。
キャピタルグループは、『投資にファンダメンタルズ調査を取り入れたパイオニア』を自称しており、いまでも変わらずファンダメンタルズ調査をベースにポートフォリオの構築をしています。
ざっくりと年表を列挙します。
- 1931年、創業
- 1934年、The Investment Company of America(ICA)の運用を開始(日本では売っていませんが)
- 1943年、ニューヨークに拠点を設立
- 1953年、アメリカ以外への投資を開始
- 1956年、日本株式への投資を開始
- 1958年、キャピタル・システム(後述)を利用した運用を開始
- 1962年、アメリカ以外で最初の拠点をジュネーブに開設
- 1965年、後にMSCIインデックスとなるグローバル運用の指数を開発
- 1973年、債券運用を開始
- 1974年、富裕層向け資産運用サービス部門を設立
- 1982年、東京に拠点を開設
- 1986年、世界初のエマージング株式特化型運用を開始
- 1996年、日本株式特化型運用を開始
- 2007年、日本で個人投資家向けに投資サービスを開始
- 2021年、創業90周年を迎えた
MSCIインデックスの生みの親
『MSCIインデックス』とは、eMAXIS Slim全世界株式などでも使用されている超定番なインデックスの一つなのですが、生みの親がキャピタルだったとは…。
現在は、MSCI社が管理するインデックスとなっていますが、MSCIとは「モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル」の略だったようです。
キャピタル・システムとは
キャピタル・システムとは、複数のマネージャによって構築されたポートフォリオを組み合わせることで、リスクの低減と投資戦略の強化が期待できるシステムのことです。
とはいえ、前述した通り、これによってリスク低減には成功していますが、『全世界株式インデックスとほぼ同じリターンとなっている』という点においては、メリットとは言い切れないでしょう。
歴史ある会社であるからこその長期目線
キャピタルは創業90年を超える企業であるからこそ、長期目線を持った投資をすることができます。
生まれたれのファンドであれば、『いま』実績を出さなければ顧客を集めることができず、ファンドの相続も危ぶまれてしまいますので、リスクの高い投資をしがちです。
しかし、キャピタルは長期に渡って築き上げてきた信頼があるからこそ、長期を見据えて着実なリターンを狙うことができます。
キャピタルグループの規模
キャピタルグループは世界中に7500名の従業員を有し、2021年時点で2.2兆ドルの資産を運用しています。
有名な投資銀行の運用資産を列挙すると、
- ブラックロック :9.0兆ドル
- ヴァンガード :7.1兆ドル
- ゴールドマンサックス:2.1兆ドル
となります。
ブラックロックやヴァンガードが異常であるのは置いておいて、ゴールドマンサックスよりも多くの資産を運用しているのには(キャピタルグループがさほど有名ではないのに関わらず)驚きですね。
キャピタル世界株式ファンドの評判
キャピタルは世界株式ファンドの評判(SNSの口コミなど)を調べていると、
- オルカン(eMAXIS Slime 全世界株式などのインデックスファンド)を超える可能性を秘めたファンドである
- 『キャピタル』という信頼できる企業のファンドである
なんていう声が聞こえていますが、
- オルカンで十分じゃん
という声も多いですね。
ファンドについて調べてば調べるほど、
「キャピタル世界株式ファンドは魅力的だな…!」
なんて思わされましたが、リターンを見てしまうと
「あ~、結局オルカンと同じような推移になるのね~」
と、残念な気持ちになります。
雰囲気はいいんですけどね~。
では、最後に基本情報を紹介します。
キャピタル世界株式ファンドの基本情報
信託報酬 |
年1.701% |
---|---|
資産総額 |
3700億円(2023/4/17) |
運用会社 | キャピタル・インターナショナル |
委託会社 | 三菱UFJ国際投信株式会社 |
設定日 | 2007/10/29 |
為替ヘッジ | なし |
決算日(分配金) | 8月20日 |
分配金 | 基本的になし |
1年トータルリターン | -0.46% |
3年トータルリターン | 76.53% |
5年トータルリターン | 79.65% |
取扱証券会社 | SBI証券、楽天証券など |
改めて、信託報酬の高さに驚きますね…。
まとめ:キャピタル世界株式ファンドを紹介させてもらいました
といった感じで、キャピタル世界株式ファンドを紹介させてもらいました。
ざっとまとめると、
- 全世界の株式を対象としたアクティブファンド
- 信託報酬はかなり高めの1.701%
- 運用をするのは1931年創業のキャピタルグループ
- キャピタルグループはチャールズ・エリスが認めるほどの企業
- しかし、推移は一般的な全世界株式インデックスとほぼ同じ
- リターン実績では全世界株式インデックスより劣っている
といった感じとなりました。
調べれば調べるほど魅力的な企業であり
「個人投資家から信託報酬を騙しとってやるぜ。グヘヘヘ」
なんて思惑はこれっぽっちも無いように感じますし、
「この方法でオルカンを超えられるのだ!」
と本気で信じて運用していることが分かります。
しかし、そのようなファンドであっても全世界株式インデックスに劣っている実績を見ると、
「どれだけ優秀な人間が、どれだけ本気で頑張ったところで、インデックスを超えることは難しいんだねぇ」
ということを改めて考えさせられました。
というわけで、残念ながら個人的には
「キャピタル世界株式ファンドは今後も儲かるかどうか分からないからやめておけ」
と評価させて頂きます。
もちろん、今後この評価を覆すような素晴らしいリターンを上げる可能性を秘めているのは間違いありません。
しかし、反対に、これまで以上に残念なリターンになる可能性も十分にあります。
そして、
- 上手くいくか、上手くいかないか分からないが、どちらにせよ1.701%の高信託報酬が足を引っ張ることは確かである
という非常に残念なポイントがある以上、このブログでおススメすることはできません。
どれだけ魅力的に見えるファンドであろうとも、インデックスを超える魅力なファンドになることは難しいですね…。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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