QYLDとは、NASDAQ100(米ハイテク大手企業)を対象とした(10%を超える)超高配当ETFで、「株価(基準価額)が値上がりすることによる儲け」を放棄する代わりに、多くの分配金を投資家に配る商品です。
同じNASDAQ100に投資するETFである『QQQ』と、基準価額の推移を比べてみるとよくわかります。
この間(QYLDが誕生した2013年12月~)、QQQは基準価額を上げ続けていますが、QYLDは右肩下がりに下げ続けています。
これが、QYLDの特徴で
- 原資(≒元本)が減ることになっても、投資家にお金を配ろう
という動きをしているがゆえに、このような推移になります。
お金の動きだけで例えると、スパコンSEがAさんから「投資をしてくれ!」と100万円を渡されたときに…
- スパコンSEが100円の株を1万株買った(株が100万円分ある)
- 株価が200円になった(株が200万円分ある)
- 5000株売って手に入った100万円をAさんに配った(100万円分の株が残る)
- 株価は倍になったけど、スパコンSEが運用している株式は100万円分のまま
なんていうイメージに近いです。
QYLDの基準価額が下がっているのは、
- スパコンSEが100円の株を1万株買った(株が100万円分ある)
- 株価が80円になった(株が80万円分ある)
- それでも5000株売って手に入った40万円をAさんに配った(40万円分の株がある)
- 株価は下がったのにも関わらず、分配金を配るために株式を売ったので、スパコンSEが運用している株式の総額がへった
といった感じです。
うんうん、分かりやすいですね?
さて、ここまでは『QYLDのイメージ』をお伝えしてまいりましたが、『QYLDの本当に姿』も解説していこうと思います。
結構ややこしいので、「イメージだけでいいです~」って方はここで離脱してください。
残ってくださった方にはできる限り「分かりやすく解説しよう」と努力しますので、あなたも「理解しよう」と努力してください。
<目次>
QYLDとは
QYLDとは『Global X NASDAQ 100 Covered Call ETF』のことで、見るからにややこしさ満点ですが、ポイントは
- NASDAQ100
- カバードコール(Covered Call )
の2点で(Global X は社名です)、端的に言うと
- NASDAQ100への投資を、カバードコールを用いて行うETF
です。
(カバードコールは後で解説します)
上でも書いた通り、QYLDは値上がりによる儲けを放棄しており、
- 保険料(のようなモノ)をリターン(分配金)の源泉としている
という商品です。
QYLDが儲ける方法
そして、『QYLDが売っている保険』とは、
「株を買いたいんだけど、株価が下がって損するのはイヤだな~」
「株価が下がった時に、損害を補償してくれる人はいませんか?」
「保険料は払うからさー」
という人に向けた商品で、この商品を『コール・オプション』と言います。
例として、
- 投資家(QYLDを買う人じゃないよ)が100万円分の株を買って、保険(コール・オプション)に入ったケース
を想定すると、
- 株価が上昇したケース:保険料を支払うことにはなったけど、株価が上がって儲かった!
- 株価が下落したケース:保険料を支払っていたから、株価が下落した分を補償してもらえた!
なんて感じになります。
このケースにおいて、保険会社は
- 株価が上場したケース:保険料の分だけ儲かった
- 株価が下落したケース:補償金を払ったけど、保険料もらってたから、ダメージは小さい
なんていう感じになります。
コール・オプションの実態
実際のコール・オプションは、『買った株の保険に入る』のではなく、
- 保険の期間内に、『保険に入ったときの株価』で買える権利を買う
というもので、『保険に入った時の株価が100万円』であったケースでは
- 1か月後に株価が120万円になったらので「権利を行使して100万円で買います!」とできる
- 1か月後に株価が80万円になったので「権利は行使しません(買いません!)」とできる
といった流れになります。
株価がどうなったところで、保険会社(QYLD)は保険料を受け取ることができますが、
- 『株価が120万円になったケース』では、保険会社(QYLD)は20万円損をする
ということになります。
これは、
- 株価が大きく上がれば上がるほどに、保険会社(QYLD)の損失は大きくなる
という意味でもあります。
この『株価が下がっちゃったときに補償して欲しい保険』は、『ロング・コール』と言います。
また、反対に、
「株価が下がったら儲かるような取引(空売り)をしたいんだけど、保険をかけたいのよね」
という人に向けた『ショート・コール』という保険も存在しています。
そして、QYLDはこういった『保険』を売ることで手に入る『保険料』を儲けの源泉の一つとしています。
カバードコールとは?
QYLDは、NASDAQ100を対象として『カバードコール』という投資戦略を採用しており、これは
- NASDAQ100の現物を持っておきながらも、NASDAQ100の保険(コールオプション)を売る戦略
を取っていることを指しています。
ここで重要となってくるのは
- 『QYLDを買っている投資家』と『QYLDから保険を買っている投資家』は別人である
という点にあります。
上でも書いた通り、保険(コールオプション)は『株価が大きく動けば動くほど、保険会社は損をする』性質のものであるため、一般的には
- カバードコールは、株価があまり動かない時期に強い(支払う補償料が少なく済むが、一定の保険料を受け取ることができる)
といった性質のものとなっています。
これは『自動車事故が少ないほうが、保険会社が儲かる』のと同じ理屈です。
反対に、『株価が上がったら、保険に入っている人に株を安く売らなければならない契約』を多くの人がしている時に株価が上昇すると、
- QYLDが持っている株(NASDAQ100)を、保険に入っている人に安く売らなければならない
ということで、QYLDはダメージを受けることになります。
つまり、
- 『QYLDから保険を買っている投資家』が儲かれば、『QYLDを買っている投資家』は損をする=QYLDの基準価額が下がる
という構造にあるわけです。
結局のところQYLDは儲かるの?
といった感じで、QYLDの解説をしたきたわけですが、
「んで、QYLDは投資対象としてどうなのよ?」
という声が聞こえてきそうなので、お答えしますが
分かりません。
QYLDは、NASDAQ100への投資をしているので、
- NASDAQ100の値上がり
- NASDAQ100から得られる配当
がリターンの源泉の一つとはなりえますが、QYLDは『保険を売る』商売もしているため、その影響も大きく受けます。
よって、
- NASDAQ100がベラボウなら配当金を支払い、株価も暴騰したが、保険事業で大失敗したQYLDは大暴落した
なんてことがあり得ます。
そしてQYLDが保険事業が成功するかどうかは分かりません。
株価が平坦に動けば保険事業は成功することになるでしょうが、そうなるかどうかは分かりません。
また、QYLDの本業が『株式投資』であれば『長期的には株価は右肩上がり』を高い確率で期待することができますが、
『長期的にQYLDの保険事業が儲け続けられる』を期待していいのかどうかは分かりません。
つまり、
- QYLDへの投資は株式への投資ではない
と言えるのではないでしょうか。
様々な金融商品がありますが「株式なら信頼できる!」と考えている投資家は多いです。
そのような投資家にとって、
- QYLDは、優良な投資先とは言えない
と私は思います。
なお、直近のリターンは、(配当含む)
◆直近3年
- QYLD: 1.37%
- QQQ:13.16%
◆直近5年
- QYLD: 4.15%
- QQQ:14.43%
と、普通のQQQと比べて非常に残念なものになっています。
配当金が多くても基準価額が下がっていくのであれば、トータルリターンが残念なことになってしまうのは、致し方ないですね。
高配当を続けたとしても、基準価額が下がっていくと『配当額』は下がっていくことになります。
そんな商品が長期投資に向いていないというコトは、説明するまでもないでしょう。
では、最後のQYLDの基本情報を紹介して終わりにしようと思います。
QYLDの基本情報
販売会社 | グローバルX |
---|---|
経費率 | 年0.60% |
純資産 | 67.96億ドル |
基準価額 | 16.98ドル |
発行済口数 | 4億口 |
直近分配利回り | 13.02% |
分配頻度 | 毎月 |
上場市場 | NASDAQ |
ベンチマーク | CBOE NASDAQ-100®・バイライト・V2 |
設定日 | 2013/12/11 |
2023年2月2日時点
組み入れ銘柄TOP10
- 13.31% マイクロソフト
- 13.07% アップル
- 7.80% アマゾン
- 4.69% NVIDIA
- 4.49% ALPHABET-CL C
- 4.44% ALPHABET-CL A
- 4.03% テスラ
- 3.73% メタ
- 2.16% BROADCOM
- 2.06% ペプシコ
参考:グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF
QYLD・カバードコールについて解説させてもらいました!
というわけで、「QYLDってなんぞ?」という人に向けて解説させて頂きました。
ここでの解説がお役に立てたのであれば幸いです。
なお、内容については理解頂けましたよね?
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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