グローバル3倍3分法ファンド(1年決済型)(通称グロ3)を評価、他のファンドと比較していきます。
比較対象は
- 楽天全米株式(楽天VT)
- 楽天全世界株式(楽天VTI)
の2つの投資信託です。
また、この記事では、
- グロ3は、他のファンドと比較して優秀なのか?
- グロ3の『暴落耐性』は本物なのか?
- グロ3のリターンがここ1年ほど優れない原因は何なのか?
- グロ3は、”いま”買いなのか?
について考察していきたいと思います。
以下の記事でも考察しましたが、一時的に話題となった『グローバル3倍3分法ファンド(通称グロ3)』は結構優秀な成績を収めていました。
【グロ3】グローバル3倍3分法ファンドについて考察【アメリカ株・全世界株と比較】
しかし、そこからしばらく経過したので、あらためて考察していきたいと思います。
<目次>
グロ3を全米株・全世界株と比較・評価
まずはグロ3の成績を、全米株式、全世界株式と比較してみましょう。
※グロ3の販売開始時(2018年10月)の値を100ポイントとして統一しています。
ざっくりまとめると、
- 2021年ごろまでは結構優秀で、全世界株式や全米株式をリードしていた
- 2021年から、全世界株式や全米株式はやや上昇傾向にあったが、グロ3は下落していった
という状況にあります。
グロ3がもっとも大きなリターンを出していたのは、2021年7日で、
- グロ3 :162.95ポイント
- 全米株式 :155.78ポイント
- 全世界株式 :143.01ポイント
と、結構な差で他の2ファンドをリードしていました。
この時点では、
- 販売開始からたったの3年で60%のリターンを叩き出していた
と、かなり優秀であったことが分かります。
しかし、5月18日時点では
- グロ3 :132.49ポイント
- 全米株式 :161.45ポイント
- 全世界株式 :145.32ポイント
と、残念な状況にあります。
とくに、ここ半年は大きく下落しています。
そして、この下落の原因は『金利の上昇』によるものです。
金利の上昇によってグロ3の基準価格が下落している
『グロ3』は、
- 世界中の株式・債権・REIT(不動産)を投資対象とする
- 3倍のレバレッジをかけて投資する
が、特徴のファンドです。
レバレッジをかけた後の投資比率は
- 株式: 60%(20%×3倍)
- REIT: 40%(13.3%×3倍)
- 債券:200%(66.7%×3倍)
と、債券の比率がかなり高くなっています。
(グロ3の販売資料より)
よって、
- グロ3は、短期的には『債券価格の動き』によって大きく左右される
という性質のものです。
その債券の中でも代表的な『アメリカの10年もの国際』の金利は、下のグラフの通りに動いています。
このグラフを見ると、
- グロ3が低調しだした2021年ごろから、金利が上がりだした
- グロ3が絶不調であるここ半年は、急激に金利が上がっている
ということが分かります。
債券は『金利があがると値段がさがる』という特徴がありますので、
- グロ3が不調なのは、金利が上昇し、債券の値段がさがったから
であることが分かります。
レバレッジをかけて投資をしている以上、対象の商品が値下がりすればダメージを負うのは仕方のないことです。
とはいえ、
- グロ3の投資先の多くは値段の安定している債券なので、暴落には強い
と言えるはずなので、そこに関しても検証していきましょう。
グロ3の暴落時の動きを確認
そこで、新型コロナによって暴落した2020年2月~の推移を見ていきます。
「けっこう優秀」といえるでしょう。
2月21日時点を100ポイントとすると、
- グロ3 :90.9ポイント
- 楽天全米:94.4ポイント
- 全世界 :93.0ポイント
と、全米・全世界に劣ってはいるものの、それほど大きな差はありませんでした。
『レバレッジ商品は、下落時にはレバレッジなし商品より大きなダメージを受ける』のがあたり前の事実ですが、この程度のダメージで踏みとどまったのは評価できます。
また、ポイントのひとつとして、
- 9月初旬に、全米株式、全世界部式が暴落している時(みぎ赤丸部)には、ダメージを抑えることに成功した
という点があげられます。
ここは、まさに『グロ3の真骨頂』と言えるのではないでしょうか。
と言うのも、株価と債券価格は逆相関関係にあると言われており、
- 株価が暴落すると、債券価格は上昇する
という値動きをするケースが多いです。
実際に、9月の暴落時の値動きは下のグラフのとおりで、
- 株価(赤線)が下落しているのにも関わらず、債券(青線)はほとんど下落していなかった
という実績があります。
つまり、
- グロ3の『暴落耐性』が、レバレッジ商品のわりに高いのは間違いない
と言えそうです。
さて、ここまでを整理すると、
- 販売から3年ほどは、全米株式、全世界株式を超えるリターンを叩き出してきた
- グロ3は金利が上がっていく局面に弱く、最近ではリターンがイマイチ
- 仮に、これから暴落があったとしても、そこそこ耐えてくれそう
ということが分かりました。
そこで、次は
- じゃあ、グロ3は実際に買いなの?
について考察していきたいと思います。
グロ3は”いま”買いなのか?
私は、
- 金利が十分にあがったのであれば、グロ3は買いだ!
と考えています。
まずは、最初に貼ったグラフをもう一度みてみましょう。
これだけを見ていると「そんなに魅力的でないなぁ…」というのが正直なところでしょうか。
しかし、繰り返しになりますが、
- グロ3最大の特徴は、レバレッジをかけて大量の債権を持っていること
にあります。
そして、
- 債券のリターンの源泉は、『債券の価格の動き』ではなく『債券を持っていることで手に入るお金』にある
という点が重要です。
『債券を持っていることで手に入るお金』は(当然ですが)金利で決まります。
最近では、その金利が高くなったわけですが、『金利が上昇したということは、債券のリターンが大きくなってきた』とも言えるわけです。
ざっくりと整理すると、
- 金利が上昇すると、債券の価格が落ちるので、すでに債権を持っていた人は損をする
- 金利が上昇すると、債券のリターンが上がるので、これから債権を買う人は得をする
というわけです。
具体的には、アメリカ10年もの国債の金利は3%近くにまで上がってきました。
つまり
- 100万円分の国債を買えば、年間3万円のリターンが手に入る
わけです。
そして、グロ3は3倍のレバレッジをかけているので(債券部分だけ見れば)
- 100万円投資すれば、300万円分の国債が手に入り、年間9万円のリターンが手に入る
と、かなりの高リターン(9%の年間リターン)が手に入ります。
この点から見れば、『グロ3は”いま”買い』なのは明らかでしょう。
しかし、『金利が上昇すると、すでに債権を買っていた人は損をする』ということを忘れてはいけません。
これから金利はどう動くのか?
ここ5年の金利の推移をもう一度みてみましょう。
これだけを見ると、「金利はもう上がり切ったきがする」という感想を持つかもしれません。
しかし、ここ50年の金利は、下のグラフのように動いています。
これを見るかぎり、「金利はまだまだ上がっていきそうな気がする…」というのが正直な感想です。
また、アメリカの金利を決定する機関であるFRBは
- 2022年中にあと7回利上げする可能性がたかい
と表明しており、金利はまだまだ上昇していくと考えられます。
『これからの金利の上昇』は、債券価格に織り込まれているとはいえ、『これからも金利が上がっていく』というこの状況において、レバレッジをかけて債権への投資をするグロ3へに手を出すのは勇気のいる行為といえるでしょう。
ただし、
- 『投資』とは、みなと同じ道をいけばリターンが得られず、人々は「そこに投資するとかないわー」と思っている道に賭けることで大きなリターンが手に入る
というのも間違いありません。
よって、大きなリターンを狙う投資家にとって「金利が上がっていくいまの局面で、グロ3に投資するのはあり得ないわ」と考える人がおおい今こそ、グロ3は魅力的なファンドだと言えるでしょう。
グロ3の基本情報
最後に、グロ3の基本情報をのせておきます。
- 委託会社 : 日興アセットマネジメント
- 純資産総額 : 1,661.5億円(2022/5/19)
- 分配履歴 : 現時点では分配金なし
- 為替ヘッジ : なし
■ ファンドの特色
- 実質的に、世界の株式、REITおよび債券などに分散投資を行ない、収益の獲得をめざします。
- 世界の株式やREITに加えて、株価指数先物取引や国債先物取引などを活用することで、信託財産の純資産総額の3倍相当額の投資を行ないます。
- 年1回、決算を行ないます。
■ ファンドの値動きのイメージ
当ファンドは、世界の株式やREITに加えて、日本株式および各国国債への投資には先物取引などを活用することで、純資産総額の3倍相当額の投資を行ないます。そのため、「3分法(1倍バランス)」の運用手法に比べて、日々の基準価額の変動が大きくなります。
■ ファンドの仕組み
当ファンドは、投資信託証券に投資するファンド・オブ・ファンズです。
■ 主な投資制限
- 投資信託証券、短期社債等、コマーシャル・ペーパーおよび指定金銭信託以外の有価証券への直接投資は行ないません。
- 外貨建資産への投資割合には、制限を設けません。
- 毎決算時に、分配金額は、委託会社が基準価額水準、市況動向などを勘案して決定します。ただし、分配対象額が少額の場合には分配を行なわないこともあります。※将来の分配金の支払いおよびその金額について保証するものではありません。
まとめ:グロ3への投資について
ここまで記事にさせてもらった通り、
- グロ3は、最初の3年ほどは全世界株式、全米株式を超えるリターンだった
- しかし、金利が上がり(債券価格が下がり)だしてからは、リターンがイマイチとなっている
- レバレッジファンドのわりに、株価の暴落に強いのは間違いなさそう
- これからも金利が上がっていく可能性があるため、いまグロ3に投資するのは賢明ではない
- だからこそ、大きなリターンを狙うのであれば、グロ3への投資はあり
となりました。
下のグラフは、グロ3の販売資料にある2003年~のデータを使ったシミュレーション結果です。
『過去データをもちいたシミュレーション』が将来にも通用する、という保証はありませんが、これを見ているかぎり
- グロ3はポテンシャルを秘めたファンドである
と言えます。
現時点でグロ3に投資するのは『ギャンブル』だと言えるかもしれませんが、それを承知で投資するのであれば、絶好の機会です。
この記事が、グロ3への投資を検討している方のやくに立てば幸いです。
それにしても、少し前にこちらの記事で考察したばっかりなんだけど、やっぱりレバレッジ商品は魅力的に見えてしまうなぁ…。
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