近ごろ話題のUSA360(楽天米国レバレッジバランスファンド)を解説、評価していきます。
USA360は、むちゃくちゃ魅力的なファンドではあるものの、一歩間違うと大ダメージを受けることもあるファンドでもありますので、このファンドへ投資する方々が大きな損失をうけないよう、メリットだけでなくデメリットについても詳しく解説していきたいと思います。
とくに、金利の動きが激しい昨今においては要注意です。
<目次>
- USA360の概要
- USA360の具体的な投資先
- 株式と債券に分散投資することによるメリット
- USA360の年間収益率
- USA360の騰落率を他のファンドと比較
- USA360の騰落率を他のファンドとを同じ期間で比較
- USA360のデメリット
- とうことは、金利の上昇が終わったら買い時なんじゃ?
- USA360がレバナスやグロ3と同じ道をたどらないか心配だ
- USA360の評判・口コミ
- まとめ:USA360を評価、紹介させてもらいました
USA360の概要
USA360は、アメリカ株式とアメリカ債券へ3.6倍のレバレッジをかけて投資するファンドです。
この3.6倍(360%)のレバレッジを『スリーシックスティ運用』と呼び、そこからファンド愛称の『360』がきています。
レバレッジにより360%にした資産を
- 株式: 90%
- 債券:270%
の比率で投資する運用を行っています。
※交付目論見書より
スリーシックスティ運用とは
交付目論見書にあるこのイメージによると
- 『(レバレッジなし)株式投資』と同程度のリスクで、『(レバレッジなし)株式投資』よりも高いリターンが期待できる
ということをアピールしています(実績はのちほど評価します)
基本情報
また、基本情報は以下の通りです。
信託報酬 | 年0.4675%(税抜0.425%) |
---|---|
実質信託報酬 | 年0.4945%程度を予定 |
信託財産留保額 | なし |
為替ヘッジ | なし |
委託会社 | 楽天投信投資顧問株式会社 |
受託会社 | 三井住友信託銀行株式会社 |
分配金 | 1回/年(ただし分配実績なし) |
投資形態 | ファミリーファンド |
純資産 | 127.1億円(2022/9月末時点) |
近ごろでは信託報酬が0.1%未満なファンドも数多く存在していることを踏まえると、かなり高い信託報酬だと言えるでしょう。
信託報酬の内訳
信託報酬の内訳は以下の通り。
委託会社(資産運用) | 年0.22%(税抜0.2%) |
---|---|
販売会社(情報管理など) | 年0.22%(税抜0.2%) |
受託会社(資産保管) | 年0.0275%(税抜0.025%) |
投資手数料 | 年0.03%程度 |
レバレッジをかけて運用をする『委託会社』が受け取る金額が大きいのは致し方ないものの、「販売会社の信託報酬はなんでこんなに高くなるんだろうか?」と思ってしまいますね。
USA360の具体的な投資先
USA360の具体的な投資先としては、
- 株式:VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)
- 債券:アメリカ5年国債先物、アメリカ10年国債先物
となっています。
VTIは、世界最大級の資産運用会社ヴァンガード・グループが運用するETFで、アメリカの大小企業およそ4000社に分散投資しています。
アメリカ株投資の鉄板ともいえるS&P500への投資は、『大企業のみ』を対象としていますが、中小企業へも対象としているVTIを使ったUSA360は『アメリカ全体に投資している』とも言えるでしょう。
また、S&P500先物への少しだけ保有しているようです。
また、国債先物は、5年ものと10年ものを同じ割合で保有しています。
株式と債券に分散投資することによるメリット
USA360は、『株式と債券の両方に分散投資する投資信託』であるわけですが、それによるメリットはどこにあるのでしょうか?
一般的に、
- 株式と債券は、逆相関(どちらかが上がれば、他方は下がる)の関係にある
と言われています。
過去の実績からは、実際に『株価の下落時は、債券の価格が上昇する』といったことが分かっています。
これは
- 株価が下落しそう
- 株を売って、安定している債権を買おう
- 債券の価格が上昇する
ということから起こる事象です。
また、
- 大きな経済危機などによる『暴落』と言えるようなタイミングでは、「株も債券も全部売って逃げだそう!」という思惑から、株価も債券も値を下げる
ということがありますが、そういったタイミングでの債券の下落幅は株価よりも小さいです。
よって、
- 株式と債券を組み合わせて投資することで、『どちらかの下落を打ち消し合う効果』『暴落時でもダメージを小さく抑えられる効果』が期待できる
ということから、USA360はこの構成となっています。
また、同じような株式・債権を組み合わせたファンドは多く存在しており、『オーソドックスな投資手法のひとつ』と言えるでしょう(レバレッジ除く)
USA360の年間収益率
USA360の年間収益率(どれだけのリターンを得ていたか?)は以下グラフの通りです。
誕生したのが2019年なので、実績はわずかですが
- 2019年:+ 4.6%
- 2020年:+31.5%
- 2021年:+25.5%
- 2022年:- 22.3%
となっています。
ただ、これだけだと評価し辛いので、他のファンドと比較していきましょう。
USA360の騰落率を他のファンドと比較
USA360は、独自の商品であることからベンチマーク(基準となる指数)を準備していません。
しかし、USA360の交付目論見書に他の主要ファンドと比較した
- ファンド別の年間リターン実績
をあらわした表があったので見ていきたいと思います。
年間リターンの平均だけを列挙すると、
- USA360 :28.3%
- 日本株 :10.3%
- 先進国株:16.9%
- 新興国株:13.0%
- 日本国債: 0.1%
- 先進国債: 3.8%
- 新興国債: 4.1%
と、USA360の圧勝であることが分かります。
しかし、表の説明をよく見ると、
- 当ファンドの対象期間:2020年11月~2022年2月
- 代表的な資産クラスの対象期間:2017年3月~2022年2月
と、評価の対象としている期間に差があるようです。
とうぜん、これではUSA360を正しく評価をすることはできないので、同じ期間で比較していきましょう。
USA360の騰落率を他のファンドとを同じ期間で比較
比較対象は、USA360と同じく楽天の人気商品である
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド
- 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
とします。
また、評価期間は、もっとも若いUSA360の販売開始日『2019年11月5日~』とし、開始時の評価額を100ポイントとして比較していきます。
結果がこちら。
数値を書くと、2022年9月末時点で
- USA360 :126.55 ポイント
- 全米株式 :168.83 ポイント
- 全世界株式:150.20 ポイント
と、USA360の惨敗であることが分かります。
先にあげた
- スリーシックスティ運用によって、株式と同じ程度のリスクで株式よりも高いリターンが期待できます
- 他のファンドと実績を比較しても、USA360のリターンは優れていました
という説明はなんだったのか?と言いたくなるような結果です。
USA360のデメリット
というわけで、「残念」としか言いようのない結果を残しているUSA360ですが、どうしてそのようになっているか、USA360の問題点・デメリットを考察していきたいと思います。
デメリット1:レバレッジ商品は右肩上がりになるとは限らない
株式や債券は、ざっくり説明すると『他者にお金をあずけることで、付加価値を付けて返してもらうことを狙う行為』であるため、『長期的にはあずけたお金が増えていくことが期待できる行為』と言えます。
しかし、レバレッジをかけて投資していた場合は、これが当てはまらなくなります。
これは、すべてのレバレッジ商品に当てはまりますが、
- 『レバレッジなし投資』が横ばいやゆるやかな右肩上がりになっていたとしても、『レバレッジ投資』は右肩下がりになりうる
という大きな問題点があります。
つまり、
- 普通に投資している人たちが時とともに大きなリターンを手にしていく中、USA360へ投資している人たちだけは資産が減っていく
ということもありうるわけで、これがUSA360の最大のデメリットでしょう。
※レバレッジの問題点については、レバナスはヤバい、戻らないもご参照ください。
レバレッジ商品は、調子がいいときには大きなリターンが期待できるものの、そうではない時のダメージは大きなモノとなります。
それを理解せぬまま、交付目論見書を信じて投資してしまうと痛い目を見ることになってしまうでしょう。
デメリット2:金利上昇に弱い
USA360は、上のグラフにあった通り2022年に入ってから急激に値を下げています。
これは、世界中で利上げが始まったタイミングと一致しており、
- USA360は、レバレッジをかけて債券投資をしているため、利上げ(国債価格の下落)にむちゃくちゃ弱い
というデメリットを浮き彫りにしています。
債券の価格は株式にくらべて安定しているとはいえ、
- 3.6倍ものレバレッジをかけて投資していれば、債券価格が少し落ちただけでも大きなダメージを負うことになる。
ことは説明するまでもありません。
というわけで、
- USA360は現在のような『利上げ局面』を苦手とするファンドである
と言えます。
とうことは、金利の上昇が終わったら買い時なんじゃ?
上でも書いたように、『USA360は利上げ局面に弱い』ということは、反対に言えば『利上げが落ち着いたら買い』というコトは言えるのかもしれません。
利上げが落ち着いたあとは
- 金利が下落する → 債券の価格が上昇する
- 金利が横ばいに推移する → 債券の金利が高いため高いリターンが期待できる(預金金利が高いような状態)
のどちらかになるため、「金利の上昇が終わったら買い」というのは一理あるかもしれません。
とはいえ、
- 金利の上昇がいつ終わるか分からない
- 金利が下落しだしたと思ったら、ふただび上昇に転じる
なんてこともありうるわけで、「いまこそUSA360へ投資するのだ!」と確実に言えるタイミングを見分けることは困難でしょう。
また、先に書いたように、
- USA360は『レバレッジ商品は右肩上がりとは限らない』という大問題をかかえている
ため、投資にたいして『着実に資産を増やすコト』を期待しているのであれば、USA360へ手をだすことはハイリスクだと言わざるをえません。
USA360がレバナスやグロ3と同じ道をたどらないか心配だ
USA360などのレバレッジ商品は他にもあり、
などに人気が集まっていた時期がありました。
どちらの商品も
- ものすごいリターンを叩き出していた時期があった
- その後のリターンが低迷し、いまでは名前を聞くことすらなくなってきた
という共通点を持っています。
これは、何度も繰り返し言いますが、
- 『レバレッジ商品は右肩上がりになるとは限らない』という特徴を持ち、長期投資には向いていない商品である
という特徴があるからです。
レバレッジ商品は、
- 市場が好調な時にはかなりのリターンを上げられる商品
であることは間違いありません。
またこれら商品のほとんどは、
- 『過去にこの商品を買っていれば、かなりのリターンが手に入った』というタイミングで登場する
ものです。
どの商品も、販売する前に『高いリターンが期待できるかどうか?』を過去の実績をつかってシミュレーションし、「これならいける!」と判断をしています。
むしろ、過去実績を元にシミュレーションした結果「全然儲からないやん」となった商品が登場することはないでしょう。
つまり、
- 商品が登場したタイミングは、商品がかなり魅力的に見えるタイミングである
と言え、新しい商品が『魅力的に見えるのはあたり前』であります。
しかし、残念ながら過去のリターンが将来のリターンを保証することはありません。
よって、もしUSA360への投資を考えているのであれば、
- 高いリターンがえられるかもしれないが、バナスやグロ3のように、消えてなくなる可能性もある
ということを理解したうえで、投資するべきでしょう。
USA360の評判・口コミ
最後に、みんかぶの口コミ・評判を紹介。
こういった評判・口コミを真に受けてもいいことはありませんが、参考までに。
なおこちらが情報源なので、興味があればどうぞ。
まとめ:USA360を評価、紹介させてもらいました
(by AI画伯)
といった感じで、USA360(楽天米国レバレッジバランスファンド)を評価、紹介させてもらいました。
まとめると、
- 3.6倍のレバレッジをかけ、アメリカ株式・アメリカ債券へ投資するファンド
- 交付目論見書を見るかぎり『かなり優秀なファンド』に見えるが、実際のリターンは「残念」と言わざるをえない
- 債券比率が高いので、現在のような『利上げ局面』には弱い
- レバレッジをかけた投資をしているので、長期投資には向かない
となります。
というわけで、
- 「大きなリスクをとったギャンブルをしてでも『短期間で大きなリターンを狙いたい」という人にはおススメ
- 「着実に資産を増やしていきたい」という人にはおススメできない
と言えるでしょう。
また、この手の商品(流行りもの・レバレッジ商品)は、『信託報酬が高い』という大きな問題を抱えていることが多いです。
株式投資による年間リターンは5%~7%程度と言われることが多いので、『USA360の0.5%という信託報酬』は「むちゃくちゃ高い」と言わざるをえません。
投資界隈には下のような言葉があります。
「私は、オプション取引で 2 人の子供をハーバード大学に通わせました。残念ながら、彼らは私のブローカーの子供でした。」
USA360はオプション取引ではないものの、
- 信託報酬が高い商品は、委託会社や受託会社を儲けさせるための商品である
という点では同じです。
USA360への投資を考えている方は、
「自分がギャンブルをするためだけに、委託会社に受託会社大金を支払っている」
という事実だけは覚えておいた方が良いでしょう。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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