更新日:2021/5/19
この記事では、定番の投資先である
- VTI(アメリカ株)
- VT(全世界株)
- VWO(新興国株)
- TOK(先進国株)
の、4つのETFの長期実績を比較します。
比較には実際の過去データを使用して、『長期にわたった推移』を主な観点として見ていきたいと思います。
また、
- 1900年~の長期に渡って、『ベストな投資先と言われているアメリカ株(VTI)』よりも優れたパフォーマンスを出している投資先
についても記事後半で紹介していきたいと思いますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
<目次>
- 【長期推移比較】VT・VTI・VWO【アメリカ株・全世界株・新興国株のETF】
- 2008年~2020年のETF長期推移を確認
- 圧倒的な好成績のアメリカ株(VTI)
- 先進国株(TOK)は無難な投資先
- 経済は高成長ながら株価は上がらない新興国株(VWO)
- 「未来は分からないから全部買ってしまおう」の全世界株(VT)
- 1900年~の長期実績を見ると「アメリカ一択」ではない
- おまけ:筆者の所感
- まとめ:2008年~実績ではアメリカ株(VT)の圧勝
【長期推移比較】VT・VTI・VWO【アメリカ株・全世界株・新興国株のETF】
本記事で比較する4つの商品は、どれもアメリカ市場で販売されている定番のETFで、日本の投資家からも絶大な人気を誇っている投資商品です。
(多くの日本の証券会社からも気軽に買えます)
日本の投資信託にも、ほぼ同じ投資先になる商品が準備されており、
- VTI → 楽天・全米株式インデックスファンド
- VT → 楽天・全世界株式インデックスファンド
- VWO → eMAXIS Slim 新興国株式
- TOK → eMAXIS Slim 先進国株式
が、当てはまる代表的な商品と考え頂き、もし実際に投資するのであればこちらの投資信託をお勧めします。
※理由はこちらから:投資信託とETFのどちらに投資すべきか?
なお、これら投資信託は「分配金を出さない」という方針で運用されているため、「分配金を出すETF」と、リターンを単純比較することはできないので、ご注意ください。
(基準価格だけで比べるとETFの方が成績が悪く見えてしまう)
前置きは以上にして、実際の推移を比較したグラフを載せます。
2008年~2020年のETF長期推移を確認
※2008/7/1時点を100ポイントとしています。
2008年7月を起点とし、2020/4/28(新型コロナ暴落後(暴落中?))を終点とすると、
- VTI(アメリカ) : 182%のリターン
- VT(全世界) : 79%のリターン
- VWO(新興国) : 7%のリターン
- TOK(先進国) : 95%のリターン
となりました。
なお平均年間リターンにすると、以下の通りとなります。
- VTI(アメリカ) : 9.0%
- VT(全世界) : 5.0%
- VWO(新興国) : 0.6%
- TOK(先進国) : 5.7%
見ての通り、目立つのは以下の2点です。
- アメリカ株の圧倒的な好成績
- 新興国の圧倒的な低成績
では、個別に解説していきたいと思います。
まずは、アメリカ株(VTI)の成績について。
圧倒的な好成績のアメリカ株(VTI)
ダントツで好成績のアメリカ株(VTI)ですが、「割高」という不安材料があります。
その理由は、
- 長期に渡って好成績が続けば「人気が出る」ことになる
- 人気が出ればより多くの人が買い求める
- 多くの人が買うことで割高となる
というわけです。
実際に、割高感を示す以下2つの指数は2021年5月時点で
- S&P500予想PER:42.57倍(過去平均PER17倍)
- バフェット指数 :200%(100%を超えると割高)
となっており、新型コロナウィルスによる暴落によるダメージから回復していないのにも関わらず、いまだ「割高」を指しています。
PERの推移
バフェット指数の推移
出典:Ratio of Wilshire 5000 over GNP - GuruFocus.com
ただし、これら指標が「割高」を指しているからといって「株価の暴落」が待ち構えている保証はなく、また下落があるとしても「いつ下落するのか」を予想することは困難です。
よって、これら指標だけを見て「アメリカ株投資から撤退しよう」と決断する必要はありません。
「割高だが、高成長が期待できるから割高となっている」と理解し、それを元に「今後の投資戦略の検討」をしていきましょう。
なお、本ブログの筆者であるひょしおんぬは、アメリカ株に悲観はしておらず、また反対に過信もしていません。
よって具体的な投資戦略としては、
「先進国株(TOK)や全世界株(VT)を通じて、アメリカ株へも投資する」
としています。
(正確には、ETFではなく投資信託を活用していますが)
というわけで、次は先進国株(TOK)について見ていきましょう。
先進国株(TOK)は無難な投資先
アメリカ株(VTI)に次ぐ高成績を残している先進国株(TOK)は、先進国22か国(日本除く)に分散投資するETFです。
主な投資先はの割合は、
- アメリカ:70%
- イギリス: 6%
- フランス: 4%
- カナダ : 4%
となっており、「世界の先進国に分散投資する」としながらも、アメリカへの投資比重が非常に高くなっています。
であるのにも関わらず、年間平均リターンは
- VTI(アメリカ) : 9.0%
- TOK(先進国) : 5.7%
と、圧倒的差を付けられています。
GDPの実質成長率(2019年)は
- アメリカ:2.33%
- イギリス:1.41%
- フランス:1.31%
- カナダ :1.64%
と、アメリカに比べて他国の成長率は低いとはいえ、ここまで足を引っ張ろうとは…。
しかし、違う角度から覗いてみると、
「アメリカ以外の先進国株は、株価の低成長が続いている」
ということは
「アメリカ以外の先進国株は、割安になりつつある」
といえます。
実際に各国のPER(2020年3月時点)は以下の通りとなっており、
- アメリカ:16.8倍
- イギリス:13.3倍
- フランス:12.9倍
- カナダ :11.5倍
アメリカ以外は、比較的割安な状況と言えます。
よって、現時点ではアメリカ株(VTI)に後れを取っている先進国株(TOK)ですが、「これからに期待」と言えそうです。
経済は高成長ながら株価は上がらない新興国株(VWO)
株価が全く成長していない新興国株(VWO)の主な投資先の割合は
- 中国 :43%
- 台湾 :15%
- インド : 9%
- ブラジル : 6%
- 南アフリカ: 4%
となっており、経済が急激に成長している地域ばかりです。
実際に昨今では新興国の経済は急速に発展しており、実質GDP成長率は2000年頃より「先進国の成長率を2~6%程度上回る高成長」を継続しています。
であるにも関わらず、株価はほとんど横ばいが続いています。
であるにも関わらず「株価は低成長」であったわけですが、理由は明白です。
それは「期待を超えるほどの経済成長をしなかった」ということです。
現在の株価は「未来の期待値」で構成されています。
よって、「大きな経済成長が期待できる新興国株」は「株価は割高となる」となります。
しかし、「経済成長はしたものの、予想よりは成長しなかったぞ!」と投資家が考えれば、株は売られ、株価が下がることになります。
具体的には
- 予想:年間9%の経済成長
としていたところ、
- 実績:年間7%の経済成長
となれば、株価は大きく下落していきます。
「年間7%という、かなり大きな経済成長を遂げていたのにも関わらず」です。
このあたりの内容は以下記事で紹介している「株式投資の未来」が参考になります。
ちなみに、「高い経済成長率」「低い株価上昇率」を継続してきたため、割高感を見るPERはずいぶんと落ち着いてきて、2020年3月時点では
- 中国 :13.7倍
- 台湾 :15.2倍
- インド :16.8倍
- ブラジル :10.5倍
- 南アフリカ:11.7倍
と、先進国並みに低いPERとなっています。
今後の新興国株(VWO)は
- 先進国以上の経済成長が期待できる
- 先進国並みの割高感(低いPER)
であることから、大きく伸びることが期待できると考えられます。
…が、こんなひねりのない予想で将来の株価が予想できたら苦労はしません。
「株価が伸びると考えられる」のにも関わらず、新興国株(VWO)が未だ低い水準にあるのには理由がある、と考えるのが妥当でしょう。
それは『どのETFに掛けることで大勝できるかと予想することは困難だ』ということでもあります。
よって、その予想を諦め、
「アメリカ株(VTI)も先進国株(TOK)も新興国株(VWO)も全部買ってしまおう」
という投資家が投資する先が、全世界株(VT)です。
「未来は分からないから全部買ってしまおう」の全世界株(VT)
筆者が「ベストな個人資家向けの投資先」と考えているのが、全世界株(VT)です。
すべての株価は「投資家達が必死に未来を予想して算出した株価」の平均となっています。
そして、株式市場のほとんどの資金を動かしているのは、機関投資家(プロ)です。
すなわち、現在の株価は「プロが予想した適正株価」であるわけです。
よって、「〇〇株が割安だ(○○株を買えば儲かりそう)」という判断を下そうと思うと、「平均的なプロ投資家以上の判断能力」が必要というわけです。
当然ですが、個人投資家のほとんどは「プロ投資家以上の能力」を持ち合わせていません。
ということで、その判断を捨てて「未来は分からないから全部買ってしまおう」の精神で投資できるのが全世界株(VT)です。
全世界株(VT)への投資をすれば
- 世界経済が今後も発展していくことはほぼ間違いない
- 長期株式投資は高確率で利益が出る
ことから、長期的には、高い確率でそこそこの利益を手にすることが可能です。
とはいえ、「大きなリターンを狙いたい!」というのはあたり前の心情かと思います。
「未来を読むことはできない」にしても、「過去の成績が良かった地域に投資する」ことはある程度理にかなっているかもしれません。
実際にそういった考えもあって、『過去に高いリターンをあげていたアメリカ株(VTI)』が人気となっています。
が、過去を振り返ると「アメリカ株一択」とは言えません。
1900年~の長期実績を見ると「アメリカ一択」ではない
過去100年以上の株価推移を参考に、高パフォーマンスの地域を選ぶのであれば、アメリカ株ではなく
- スウェーデン株
- オーストラリア株
- 南アフリカ株
あたりを選ぶことが正解となります。
本ブログで実績を挙げた
- VTI(アメリカ)
- VT(全世界)
- VWO(新興国)
- TOK(先進国)
の中では確かにアメリカ株(VTI)が圧倒的強者でしたが、「1900年~2003年という長期スパン」で「国別」に見ていくと「アメリカ株(VTI)一択」とはなりません。
上でも挙げた「株式投資の未来」のジェレミーシーゲルの調査によると、1900年~2003年のインフレ調整後の株による年間リターンは
- スウェーデン :7.5%
- オーストラリア :7.5%
- 南アフリカ :6.8%
- アメリカ :6.5%
となっており、アメリカは第4位の年間リターンでした。
しかし、日本では「スウェーデン株」「オーストラリア株」の人気はなく、第4位のアメリカ株に人気が集中しています。
もし「人気だから」「過去実績が優秀だったと聞いているから」という理由だけでアメリカ株に投資しているという方がいるのであれば、考え直したほうがよいかもしれません。
おまけ:筆者の所感
といった感じで比較、整理してきたわけですが、こうして改めて記事にしてみると、「新興国株(VWO)を買いたい!」という気持ちがでてきました。
それは
- 高い経済成長率をほこっている
- にも関わらず、低い株価上昇率
という「割安に見える」状況にあることが要因です。
そして、新興国株の未来を握るには中国だと考えています。
急激な中国の成長を背景に、米中の摩擦は激化しつつあります。
今のまま中国が成長を続ければ、世界No1の経済大国が中国になることは明白で、現No1のアメリカがそれを阻止しようとするのは当然です。
まとも考えれば
- アメリカが中国の覇権国化を阻止
- 中国経済が停滞
- 中国支援に頼っている多くの新興国の経済も停滞
- 新興国株(VWO)の株価も低迷
となりますが、
万が一にも中国が経済覇権国になるようなことがあれば
- 中国経済が高成長
- 中国が支援している多くの新興国もつられて高成長
- 新興国株(VWO)の株価が上昇
- 「覇権国であることが前提の株高」にあるアメリカ株(VIT)は低迷
というシナリオもあり得ます。
どっちになるかは…、
うーん。
分からんw
とはいえ、盛者がいつか衰退することは過去の歴史でも証明されており、アメリカの覇権が未来永劫続くことはあり得ません。
ただし、アメリカから覇権が奪い取られるタイミングを読むことは困難です。
というわけで、これからも全世界株(VT)や先進国株(TOK)への投資を続けていくこととします。
(やや全世界株(VT)比率を高めようかしら…)
まとめ:2008年~実績ではアメリカ株(VT)の圧勝
ここまで記事にさせてもらった通り、2008年~平均年間リターンは
- VTI(アメリカ) : 9.0%
- VT(全世界) : 5.0%
- VWO(新興国) : 0.6%
- TOK(先進国) : 5.7%
と、アメリカ株(VTI)の1強となりました。
とはいえ、アメリカ株は「割高」と言える状況にありますし、新興国株は「高い経済成長」が続くことが予想されます。
よって、過去の成績がそのまま続くとは言い切れず、慎重に投資先を選ぶ必要がありそうです。
「未来は分からない」ということを念頭に置いて、「何が起きても後悔しない投資先」を選びたいものです。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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