韓国の中では「日本のせいで韓国は危機におちいり、IMFからの救済措置を受けることになったのだ!」と言われることがあります。
しかし、現実はそうではありません。
この記事では、1997年に韓国が破綻の危機におちいった際、IMFからの救済措置を受けた事件をふりかえりながら、それが現在の韓国にどうつながっているか解説していきたいと思います。
投資や経済について学んでいると、頻繁に登場してくるIMFですが、これを機にIMFについても理解して頂ければ幸いです。
<目次>
欧米のヘッジファンドによってアジア通貨危機が発生
1997年、アジア通貨危機が発生し、韓国だけでなくタイ、インドネシアがIMFの管理下に入りました。
そのアジア通貨危機は、『欧米のヘッジファンド(プロ投資家)による通貨の空売り』がきっかけで発生しています。
詳しく説明していくと、
1990年ごろ、アジアの多くの国は『ドルペッグ制』という、
- アメリカドルと、自国通貨の為替レートを固定させるよう、政府や中央銀行が調整(為替に介入)する制度
を採用していました。
つまり、
- ドル安になれば、アジアの通貨も下がり
- ドル高になれば、アジアの通貨も上がる
としていたわです。
その当時、アメリカドルはドル安の状態で安定していたため、アジア各国の通貨も通貨安の状態を維持することができ、
- 海外からの資本が入りやすくなる
- 有利に輸出をすることができる
といった恩恵を受けて、経済を成長させていました。
しかし、1995年ごろからアメリカが自国の景気回復を後押しするために、『ドル高(強いドル)政策』を採用したことで、それに連動するアジア各国の通貨も通貨高となりました。
それによって、
- 輸出が伸び悩むようになった
- 海外からの資本が入ってこなくなった
といった問題が発生し、さらに
- アジアの経済成長を疑問視し、海外からの資本が引き上げていった
という事態にまで繋がり、経済状況は悪化していきました。
つまり、
- 経済状況は悪化しているのに、通貨高になっていく
という矛盾が発生してわけです。
矛盾を突く欧米のヘッジファンド
この状況を見て、欧米のヘッジファンドはアジアの通貨の空売りをしかけます。
というのも、
- アジアの通貨はドルにつられて通貨高になっているだけ
- アジアの通貨には、実際の価値以上に高い値段が付けられている
という状況であったためです。
株式投資で言い換えると、
- 大して価値のない企業の株価が大きく上昇していた
という『絶好の空売りチャンス』だったわけです。
通貨の空売りを仕掛けられた国は、ドルとの固定レートを守るために、自国通貨を買う必要が出てきます。
そして、当然ですが自国の通貨を買うためには、(ドルなどの)外貨で支払いをする必要があります。
というわけで、その国が持っている外国のお金(外貨準備金)を切り崩して、自国通貨を買い支えていたわけですが、外貨がなくなり、買い支えられることができなくなった結果、ドルペッグ制を維持できなくなりました。
その結果、
- 買い支えられなくなった通貨が急激に下落し、経済的に大ダメージを受けた
- 空売りを仕掛けたヘッジファンドは大儲けした
と、なったわけです。
これが『アジア通貨危機』です。
これによって韓国も大ダメージを受けたわけですが、詳しく見ていきましょう。
IMFによる韓国救済に至るまでの経緯
韓国は、ウォンの下落によって、韓国の財閥である韓宝グループの韓宝鉄鋼(現:現代鉄鋼)が破綻したことをきっかけに、
同じく韓国の財閥である三美グループ(特殊鋼製造が主な事業)が倒産するなどし、韓国の国家信用格付が、いたる機関から格下げされました。
それによって『外資の引き上げ』『さらなるウォンの下落』『株価の暴落』などが続き、韓国中央銀行の外貨準備金が大きく減少。
- ウォンを買い支えられない
- 外国からの借金を返済できない
という問題が発生し、1997年12月にIMFに対して救済を要請することとなりました。
ただし、IMFによる救済が決定したところで、救済が上手くいくとは限らないため、
- さらにウォンが下落
- さらに株価が暴落
- 格付け会社による格付けが『投資不適合』にまで格下げ
が続くこととなりました。
IMFによる救済内容
前述した通り、韓国の外貨準備金が減少したことにより、外国からの借金が返済できなくなりました(つまり、韓国破綻(デフォルト)の危機)
主な借金は、
- 日本:118億ドル
- ヨーロッパ:118億ドル
- アメリカ:42億ドル
とされており、日本政府は韓国の破綻を避けるべく、銀行に対して「借金の返済をまってもらえないか」と交渉して周り、これが成立したことによって、ウォンの下落はいったん落ち着きました。
----少し話がそれますが…----
といった感じで、日本政府は韓国の破綻を避けるべく努力してきたわけですが、韓国では『韓国での危機が発生したのは、日本が資金を引き上げたからだ』と広く報道されています。
これに対して、IMFによる救済が決定した後に誕生した金大中政権は
欧米系金融機関が資金を引き揚げたのに対し、日本系金融機関は、最後まで韓国金融機関への協調融資に応じていた。
と明らかにし、嘘の報道を批判したわけですが、それでも『日本が悪い報道』は消えることはありませんでした。
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IMFは、韓国に対して580億ドルの金融支援を決めたわけですが、それには、
- 税率の引き上げ
- 財政支出の削減
- 瀕死の金融機関の救済を禁止(諦める)
- 国際会計を取り入れ、企業の財務の透明化
- 海外への投資を受け入れ
- 財閥企業の構造改革
などの条件を付けています。
これら条件を飲むということは、
- 韓国は経済を自分達でコントロールする権利を失った
とも言え、これを韓国国民は
- 日本による植民地化に続く「第2の国恥」と
言い、なげいたわけです。
ビッグディール
特に財閥企業の構造改革(ビッグディール)の影響は大きく、多くの人が路頭に迷うこととなりました。
というのも、財閥企業を解体する目的は、多くなった企業を『選択と集中』によって集約化することであったためです。
具体的には、
以前は、『A財閥の自動車メーカ』『B財閥の自動車メーカ』『C財閥の自動車メーカ』など、多くの自動車メーカが存在していたわけですが、
- 財閥を解体してひとつの自動車メーカとして統合する。
といった改革を行っていったわけです。
この統合は
- 半導体
- 鉄道車両
- 精油
- 発電設備
- 船舶用エンジン
- 航空機
- 石油化学
- 自動車
- 電子部門
の9業種に対して行われ、結果として1社あたりの企業規模が大きくなり、財務状況が改善し、世界競争力が向上することとなりました。
(この統廃合は、IMFの言いなりで行ったわけでなく、当時の政府によって主導されたと言われています)
しかし、企業の統廃合に合わせて
- 『経営存続の危機であれば解雇を許す』ことを、政府・企業・労働組合が合意
- 『名誉退職』という名の、40歳代での定年制を導入
といったことが進み、大量の失業者を生みました。
韓国は、もとより非正規雇用にたいして柔軟な姿勢であったため、ここで生まれた失業者は、非正規雇用として仕事を見つけていったと考えられます(非正規雇用者は増加した)が、
経済が回復した後にも、『企業が非正規雇用の割合を高めたまま』となったため、この企業の統廃合が、現在にも続く格差を生み出す要因になったと考えられます。
といった、負の側面もありますが、企業の統廃合によって経済は改善し、2001年8月にはIMFの支援体制からの脱却をすることに成功しました(借金も全て返済)
とはいえ、この選択と集中による企業の統廃合は、今でも就活生を苦しめる結果となっています。
韓国の厳しい就活事情
上述した企業の統廃合によって、少数の大企業が大きな力を持つようになりました。
それによって、現在では『大企業に就職しなければ、苦しい生活が待っている』という問題が生まれています。
具体的に、1か月の平均賃金を見ると、
- 大企業:515万ウォン(約49万円)
- 中小企業:245万ウォン(約23万円)
と倍以上の差がついています。
韓国で大企業と定義される企業は、全体の0.3%と言われており、この狭き門を抜けられるかどうかが人生を大きく左右する状況となっているわけです。
よって、韓国では高学歴志向が強く、子供のころから猛勉強を強いられている言われているわけですが、高学歴であったとしても、その狭き門を抜けられる人の数は限られています。
こういった状況にあるため、優秀な学生であっても韓国内での就職をあきらめ、日本に就職先を求める学生が増えています。
韓国政府は、海外での就職を支援しており、その支援を受けて日本の就職した就活生は、
- 2013年: 296名
- 2019年:2469名
と急増しています。
日本企業を目指す韓国の就活生は、前述した通り『猛勉強してきた学生』が多いため、日本企業にとってもよいことと言えるのかもしれません。
IMFによる救済によって韓国は大きく変わった
といった感じで、IMFによる韓国救済について書かせてもらいました。
簡単にまとめると、
- アメリカの強いドル政策が開始
- ドルペッグ制を採用するアジア各国の通貨がいびつな状態に
- 欧米のヘッジファンドによる空売りによってアジア通貨危機に
- 韓国がIMFに救済を要求
- 財閥の再編成などによって経済が回復
- 今でも残る格差、就活環境の変化
といった感じとなっています。
学生にとっては、厳しい就活が待っており、
- 強いストレスから精神疾患をわずらう人が増えている
とも言われていますが、見かたを変えれば
- 優秀な若者が増えている
のも事実であるため、(格差の問題に目をつぶって)国全体の利益を考えれば、
- IMFの救済によって、韓国は大きく成長した
と言えそうです。
また、優秀な若者が海外企業へ就職し、そこでの経験を自国で活かすような活動に取り組めば、韓国はさらなる成長が望めそうです。
日本も負けてられませんね…。
出典:
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