あまり話題にはなっていないものの、
- 全世界の株式にレバレッジをかけて投資をする投資信託
が存在しています。
その投資信託は、『Tracers グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)』で、2021年12月に設定されたばかりの比較的に若いファンドです。
「全世界株式のインデックスに投資すれば、長期的にはリターンが期待できる」ということは多くの人が理解しているでしょうが、
「全世界株式のインデックスだけでは、資産がふえるスピードが遅すぎる」
と考えている人も多いでしょう。
そこで『資産が増えるペースが速くなると期待できるレバレッジをかけたファンド』であるTracers グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)を確認していきたいと思います。
<目次>
- グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)の概要
- グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)の具体的な投資先
- グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)の実績
- まとめ:Tracers グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)を評価
グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)の概要
地球コンプリートは、全世界の株式を対象とした株価指数先物取引やETFを活用して、純資産総額の2倍相当となるように投資をするファンドです。
2倍のレバレッジをかけることによって、退屈なインデックス投資にドキドキとワクワクをもたらしてくれます。
商品開発者からは
「”地球2つ分”の投資をしていくことを目指すファンドです。」
と紹介されています。
出典:商品開発者が語る設計思想
分かったような分からないような言葉ですが、なんだか魅力的です。
基本情報
また、基本情報は以下の通りです。
信託報酬 | 年0.1991%(税抜0.181%) |
---|---|
信託財産留保額 | なし |
為替ヘッジ | 部分的にあり |
委託会社 | 日興アセットマネジメント株式会社 |
受託会社 | 三井住友信託銀行株式会社 |
分配金 | 1回/年 |
投資形態 | ファミリーファンド |
純資産 | 7.89億円(2022/12/12時点) |
為替ヘッジは『部分的にあり』で、詳しくは
- 先進国株式は為替ヘッジなし
- 新興国株式は為替ヘッジあり
となっており、
- 『比較的値動きの小さい先進国の為替』の影響を受けないようヘッジをかける
- 『比較的値動きの激しい新興国の為替』の影響を受ける
ということで「個人投資家にスリルを提供したい」という設計者の声が聞こえてきそうです。
純資産は7.89億円で、レバレッジなしの全世界株式の代表ともいえるオルカン(eMaxisSlime全世界株式(オール・カントリー)の7962億の千分の1程度となっています。
信託報酬の内訳
信託報酬の内訳は以下の通り。
委託会社(資産運用) | 年0.079%(税抜) |
---|---|
販売会社(情報管理など) | 年0.079%(税抜) |
受託会社(資産保管) | 年0.023%(税抜) |
『レバレッジ&一部為替ヘッジあり』のわりに良心的な信託報酬ですね。
信託期限
このファンドは信託期限が『2031年11月14日まで』で切られてしまいます。
『長期的には右肩上がり』を信じて投資している人にとって、10年足らずで期限を切ってしまうこの商品は「残念な商品」にうつっていることでしょう。
この信託期限からは『レバレッジは長期投資には向いていない』ということを思い起こされます。
グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)の具体的な投資先
その地球コンプリートのおもな投資先は以下の通りです。
- 米国株先物ミニ(S&P500): 62.9%
- 新興国株先物ミニ(MSCI EM): 33.2%
- VANGUARD TOTAL STOCK MKT-ETF: 30.3%
- 欧州株先物(ユーロ・ストックス50): 21.0%
- 上場インデックスTOPIX: 16.6%
- 英国株先物(FT100): 12.1%
- カナダ株先物(S&Pトロント60): 9.8%
- VANGUARD RUSSELL 2000-ETF: 7.9%
- オーストラリア株先物(SPI200): 6.2%
先物が多いですね。
先物取引は株式投資と違って『株式の受け渡し』が発生しないのであまり好みではありませんが、そういうコンセプトであるためいたしかたありません。
(インデックス投資であっても、間接的には『株式の受け渡し』が行われている)
各国の投資比率をオルカンと比較すると、下の表のようになります。
地球コンプリート | オルカン | |
---|---|---|
米国 | 50.5% | 61.4% |
新興国 | 16.6% | 11.1% |
欧州 | 10.5% | 18.4% |
日本 | 8.3% | 5.4% |
英国 | 6.0% | 3.7% |
大まかには同じであるものの、オルカンと比べると
- 米国比率が10.9%低い
- 新興国比率が5.5%高い
- 欧州比率が7.9%低い
という差異があります。
これをどう受け取るかは難しいところですが、個人的には好み(アメリカ比率が少し低い)の比率となっています。
グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)の実績
さて、続いてはもっとも重要とも言える実績を見ていきましょう。
比較対象として、オルカン(eMaxisSlime全世界株式(オール・カントリー)と並べるとこんな感じ。
はい、残念。
地球コンプリートが設定された2021年12月15日を100ポイントで統一すると、
- 地球コンプリート:79.74ポイント
- オルカン :104.57ポイント
と、大差をつけられて完敗しています。
『レバレッジ投資は横ばい市場に弱い』ということは知れ渡っているとは思いますが、たった1年でここまで下落するとは「残念」と言うほかありません。
とはいえ、これはたった1年の実績でしかなく、長期的にはオルカンを超える可能性が無いとは言えません。
しかし、以前考察した『レバレッジをかけた全世界株式の直近14年のリターン』では
- 長期投資とレバレッジは相性が悪い
という結論が出ており、「地球コンプリートの今後は厳しい」と言わざるをえません。
生まれたばかりの投信ということで「今後に期待」と書きたい思いはありますが、残念ながらそう書くことはできませんでした。
まとめ:Tracers グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)を評価
といった感じで、Tracers グローバル2倍株ファンド(地球コンプリート)を評価、紹介させてもらいました。
誕生からまだ1年たらずのファンドですが、投資対象としては「イマイチ」という結論とさせて頂きます。
ただ、一点だけ
- 地球コンプリートはまったく人気がないという朗報
がありました。
レバレッジ投資が長期投資に向いていないことは多くの人が理解しているかと思いますが、それでもレバナスのようなレバレッジ商品が人気になることから、
「地球コンプリートにも人気があつまるのではないか?」
と心配していましたが、オルカンの1000分の1の純資産があつまっていませんでした。
『ナスダック』も『レバレッジ』も『投機性のたかい投資を好むひと向けの商品』という共通点があるため、両方をかねそなえたレバナスがそういった投資家に受けたのでしょうが、
『オルカン』という『地味な投資を好むひと向けの商品』に『レバレッジ』をかけたことで、中途半端な商品ができあがったしまったようです。
これは、
- オルカンユーザにはギャンブラー気質の人が少ない
ともいえますので、いちオルカンユーザとして喜ばしい限りです。
これからも『無難な投資』でコツコツと資産をつみあげていきましょう。
出典:交付目論見書
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