バンガードから「誤解を解く:インデックス投資の真実(Setting the record straight:
The truths about index fund investing)」なる報告書が出ていました。
その中には、
「パッシブ」と「アクティブ」という⼆元的なラベルを掲げ、あたかもすべてのインデックスファンドが⼀枚岩で均質な戦略であるかのように解釈する。これが、インデックスファンド投資に関する多くの誤った主張につながっている。
といった懸念が書かれており、インデックス投資の誤解を解くべく色々なデータが公開されているわけですが、あまり見たことのないデータが色々とあったのでご紹介していきます。
とくに、『市場に占めるインデックスファンドの割合』は気になってはいたものの見たことがなかったので、「ついに」という感覚でした。
その報告書ではまず最初に、
- インデックス投資の強みは『市場の効率性』とは別である
- 手数料を抜いたアクティブ投資とインデックス投資のリターンは等しくなり、コスト面で有利であることがインデックス投資の強みである
と釘を刺しておりますので、それを理解したうえでどうぞ。
<目次>
- インデックスファンドの貢献
- インデックスファンドの割合
- 全体の取引に対するインデックスファンドの取引率
- インデックス投資家の増加とボラティリティ
- リターン分散
- 市場全体に賭けるインデックスとそうではないインデックス
- 最後に
インデックスファンドの貢献
まずはこれ。

青色線がアクティブファンドのコストで、
黄色線がインデックスファンドのコストです。(毎度思うけど、この色の表現であっているのか心配になりますw)
ここ25年間でどちらも大きくコストを下げてきており、これにより「投資家の手元に残るお金」が確実に増えています。
冒頭で書いたように「コストを除いたアクティブ投資の総和がインデックス」であるため、
- インデックス投資をしている人は、アクティブ ー インデックスのコストの差だけ余分に儲けることができた
とも言えます。
インデックスファンドの割合
続いては、気になっていたけれども初めて見たこれ。

これは、地域や国別で、時価総額で見たインデックスファンドでの保有割合です。
バンガードの報告書には、これなどを根拠に「インデックスファンドは市場全体に影響を与えるほどではない」と書かれています。
が、アメリカ市場の株式の(時価総額で)23%は、インデックスファンドを通じて買われているとは、思ったよりインデックスは巨大なようで…。
ここからは
「アメリカだけ世界中からインデックスだけで巨額のお金が集まっているのか…?」
といったことなど、色々と想像できてしまいますね(これはまた後述)
全体の取引に対するインデックスファンドの取引率

これは、市場の取引全体における、インデックス、アクティブファンドによる取引率で、
水色棒がインデックスファンドによる取引率で、(左側メモリ)
青色棒がアクティブファンドによる取引率です(色の選択に自信なし…!)
全期間で、両ファンドの取引を足しても5%未満にしかならず、ファンドによる取引量が少ないことが分かるのと、
- インデックスファンドの取引量が増えてきたとはいえ、2024年時点でも1%強にしかなっていない
ことが分かります。
ときに、
「インデックスファンドの勃興が市場をゆがめている」
という批判を聞くこともありますが、こういった事実から「そうでもない」とバンガードは反論しています。
インデックス投資家の増加とボラティリティ
続いてはインデックス投資家の増加とボラティリティの変化。

インデックス投資に対する批判で、
- インデックス投資家が増える
- よく分かっていない投資家ばかりになる
- ボラティリティが高まり、市場に混乱を呼ぶ
という展開がなされることがありますが、バンガードはこれも否定します。
黄色線であるインデックスファンドの割合は大きく増えていますが、ボラティリティ、VIXが特段乱れるようなことは、いまのところ起きていません。
とはいえ、あくまでも「現時点では」なので、この先には注意が必要かもしれませんね。
リターン分散
そして、リターン分散。

これも聞いたことがある批判かもしれませんが、
- インデックスファンドが増えると、すべての銘柄が同じようなリターンになってしまう≒市場がゆがむ
というものがあるわけですが、それは否定するためのグラフです。
青棒は『ラッセル3000指数から、10%以上乖離している銘柄の割合(インデックスから大きく離れた銘柄の数)』を指しています。
インデックスが大きく増加しているのにも関わらず、この割合が大きく変わっていないことから、バンガードは
- インデックスが増えても、平均から大きく乖離したリターンの銘柄ばかりであることが変わっていない
- 「すべての銘柄が同じように買われるせいで、すべての銘柄が同じようなリターンになる」という批判は成立しない
と主張しています。
市場全体に賭けるインデックスとそうではないインデックス
最後に「インデックスファンドにも色々あるぞ!」と主張するためのこれ。

黄色線がアクティブファンドの月次リターン
水色棒が市場全体に賭けるインデックスファンドの月次リターン
青色棒が『非』市場全体のインデックスファンドの月次リターンです。
見づらくて申し訳ないのですが、一部だけズームするとこんな感じで

- アクティブファンドは値動きが激しい
- 『非』市場場全体のインデックスファンドの値動きも結構激しい
- 市場全体のインデックスファンドだけが値動きが落ち着いている
ことが分かります。
つい最近、私も近しい記事を書いていたわけですが、
- 「イデックスファンドであれば、どんなファンドでも比較的に値動きは小さい」という考えは幻想である
ということがハッキリ分かります。
インデックス投資が増えつつあり、これにより救われている投資家も多くいるとは思いますが、『インデックス投資』とひとくくりにしてしまうことには注意しなければなりませんね。
最後に
というわけで、バンガードによる『インデックス投資の真実』という報告書を紹介させてもらいました。
ここで紹介させて頂いたのは報告書のごく一部でしかありませんので、ぜひ原文をお読みいただければと思います。
それに加えて、
- この報告書は、多くのインデックスファンドを販売しているバンガードのよる報告書
ということを理解したうえで読んで頂ければと思います。
バンガード推しの人間は多いと思いますし、私もそうです。
しかし、常にバンガードが正しいとは限りません。
これはバンガードに限らず、どんな人間、どんな組織にも同じことが言えます。
というわけで、「バンガードが発信しているインデックスの情報は正しい!」と妄信せず、じっくりと学んでいって頂ければと思います。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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