「円安によってキャピタルフライトが進んでヤバい」
「投資を推進しても、キャピタルフライトが進むだけで日本にメリットはない」
と言う言葉を聞きますが、私はそうは思いません。
むしろ、
「キャピタルフライトによって、将来的には日本が豊かになるんじゃない?」
とすら思っています。
ざっくり書くと
- キャピタルフライトとは、資本が別に国に移動すること
で、具体的には、
- 日本円を持っていた投資家が、円を売ってドルを買う
- 日本円の給料を受け取ったサラリーマンが、円をドルに変えてアメリカの土地や株を買う
といったことを指しています。
で、いま心配されているのは、
- 日本円よりもアメリカドルの方が、また、日本の企業よりもアメリカの企業の方が優れているから、日本円をアメリカ企業に投資する人が増える
ということです。
『日本人がアメリカ企業へ(アメリカの市場で)投資する』ということは、
- 円を売りドルを買い
- そのドルでアメリカ企業の株を買う
というステップになるわけですが、それによって、
- 日本国内にあるお金が、アメリカへ流れていく
ということが起きます。
この点に関する話をするときには、デメリットばかりが強調されることが多いですが、メリットもあるはずなので、詳しく考察していきましょう。
日本のお金がアメリカに流れることによるデメリット
まずはデメリットとしては
- 日本で消費される(かもしれなかった)お金が、消費されなくなる
- 日本企業に投資される(かもしれなかった)お金が、海外企業へ投資される
の2点があげられます。
日本で消費される(かもしれなかった)お金が、消費されなくなる
これは、例えば
- 外食やレジャーをひかえて、浮いたお金をアメリカ株に投資する
といったことが発生するケースです。
『NISAの拡充』や『投資が魅力であることの周知』などによって、人々の『投資したい欲』が大きくなれば、
- いままで投資してこなかった人が、投資を始める
- いままでも投資していた人が、投資する金額を大きくする
といったことが起こると考えられます。
この『投資に使われるお金』の源泉が『タンス貯金』であれば、何の問題もありませんが、
「投資した方がよさそうだから、外食を節約、レジャーを控えて投資しよう!」
と考え、実行する人が増えると、
- 外食、レジャー産業の売上が落ち、
- それら産業に従事する人の給料が減り、
- 彼らが消費する金額も減り、
- お金の循環が悪くなり、景気が悪化する圧力がかかる
ことになってしまいます。
これはややこしい話で、
- 各個人の単位で考えると『投資(や貯蓄)をして、資産を増やしておくこと』は、正しい選択である
ことは間違いないのですが
- 『国』の観点から見ると『稼いだお金は、貯蓄をせずにバンバン消費すること』が、好景気につながる
ことも事実としてあるわけです。
(いわゆる『合成の誤謬(ごびゅう)というやつですね』
よって、
- キャピタルフライトによって、『日本で消費される(かもしれなかった)お金が貯蓄などにまわり、消費されなくなること』は個人にとってはメリットであっても、国としてはデメリットとなる
- それによって国全体が衰退していけば、個人にとってもデメリットとなる
と言えるわけです。
日本企業に投資される(かもしれなかった)お金が、海外企業へ投資される
また、『消費が投資にまわる』しても『日本企業へ投資している』のであればまだしも、最近では
- 日本人投資家が、海外株への投資を加速させている
という状況にもあります。
具体的には、(投資信託を経由した)2021年度の投資先を見ると、
- 海外株への投資額は8.300兆円
- 日本株への投資額は0.028兆円
と、
- 海外株への投資額が、日本への投資額の300倍近くある
という驚きの状況にあります。
出典:個人マネー、海外株に年8兆円 日本から「逃避」の気配: 日本経済新聞
ひと昔前であれば、『株式投資』といえば『日本株への投資』があたり前でしたが、いまでは海外株への投資がカンタンに行えるようになり、日本経済の弱さもあって海外株への投資が人気となっています。
つまり、
- 日本の銘柄へ投資されるはずだったお金が、海外の銘柄へ投資されるようになっている(キャピタルフライトが進んでいる)
という状況にあるわけです。
これによって
- 日本株の株価が上昇せず、海外企業の株価が上昇する
ことになり、
- 日本の企業が、お金を調達しようとしたときに大金を集めづらくなる
というデメリットが生じます。
しかし、『海外、とくにアメリカ株へばかりお金が流れていく』ことには、反面大きなメリットも隠れています。
日本のお金がアメリカに流れることは長期的にはメリットか
by AI画伯
『アメリカ株への投資』は、アメリカ株の株価を上げ、それら企業の資金調達を容易にするわけですが、長期的には日本にもメリットがあります。
それが、
- アメリカ企業があげた利益を日本にもってくることができる
という点です。
詳しくは海外投資の利益を非課税にして「投資立国日本」になればいいじゃないの記事でも書きましたが、
- 日本人がアメリカ企業の株主となり、アメリカ企業の利益を受け取るポジションに立つことができれば、(日本の産業が発展しなくても)日本が豊かになっていく
ということが期待できます。
日本経済は『失われた30年』と言われ、30年間にもわたって経済が低迷し続けてきました。
この間、国は色々と対策を打ってきていますが、大きく好転することはありませんでした。
(アベノミクスによって、失業率の低下、株価の上昇はしたんですけども…)
その原因は、
- 既得権益を守るための規制
- 少子高齢化
- 企業の生産性の低迷
などなど言われていますが、いまだ好転するための方法が確立されているようには見えません。
(そう簡単に景気がよくできるんなら、30年も低迷しませんしね)
そこで私は思うわけです。
「自力で成長するのを諦めたら?」
と。
日本は、経済成長はしていないものの、
- 2000兆円の個人金融資産
- そのうち1000兆円は現金・預金
と、むちゃくちゃお金が余っていることが、日銀の資金循環統計によって明らかになっています。
例えば、
- 現金・預金の100%をアメリカへ投資し、
- 年間5%のリターンがえられたとすると、
- 毎年50兆円が日本に流れ込んでくる。
なんてことが言えます。
(すべての預金をアメリカに投資したら、銀行が死んで日本経済が終了しますので、あくまでも数値だけの話です)
2022年の日本のGDP(IMFによる推計)は556.95兆円ですから、50兆円リターンによるインパクトは相当なものとなるでしょう。
これが、半分の25兆円だったとしても、かなり大きな効果があることに違いはありません。
つまり、
- キャピタルフライト(海外株への投資)によって、海外の企業があげた利益を奪い取れる権利を手に入れ、そのお金によって日本を豊かにする
という大きなメリットが期待できるわけです。
というわけで、冒頭でも書いた通り、
「キャピタルフライトによって、将来的には日本が豊かになるんじゃない?」
と私は考えているわけです。
本音では、
「世界で戦える日本企業が登場し、そういった企業が日本をリードしていって欲しい!」
と思っていますが、
「すごい企業やすごい人が出てくると、どうせ『既得権益者』とか『出る杭を打ちたがる人』とかが叩きまくって残念な結果になりそうだな~」
とも思ってしまっているのも本音です。
また、自分自身も
「頑張って働いてまで大金を稼ぎたいとは思わず、そこそこの暮らしができれば十分です」
というタイプで、また、同じように考えている人が多くいると感じています。
よって、
「「日本をよくせねば!」と、頑張って働かなくてもいいんじゃない?」
「代わりに、日本を豊かにするためにも、海外への投資をバンバンするのだ!」
「日本は、投資家を増やすべくもっと努力するべきだ!」
と考えているわけです。
というわけで、これからもこのブログで投資の啓蒙活動を続けていきたいと思います。
あくまで素人意見ではありますが、参考までに。
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ちなみに、この記事の中では『海外への投資』をキャピタルフライトとしていますが、野村証券によるキャピタルフライトの用語解説では、
資本逃避。政治や経済の混乱などにより信任を失った国から、他国へ資金を一斉に移動させることを示す場合が多い。
と『…などにより信任を失った国から』『一斉に移動』『示す場合が多い』とふわっと書かれているので、用語の使い方として合っているのか正直わかりませんw
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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