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【要約】円高はどこまで続くか 為替レートが決まる本当の理由【書評】

最終更新日:2020/11/23

 

為替の値動きの仕組みを理解していますか?

 

海外資産へ投資していると気にせざるを得ない為替ですが、

  • 世界経済のリスクが高まると円高になる

くらいは理解していても、「何故そうなのか?」については理解していない人がほとんどではないでしょうか。

 

日本の総理大臣も、アメリカの大統領も変わった(変わることが確実な)今後は、為替が大きく動いていくかもしれません。

 

というわけで、ちょうどいい著書『円高はどこまで続くか』を見つけたので、一部要約しつつ紹介させてもらいたいと思います。

 

著者は元シティグループ証券株式会社取締役副会長の藤田勉氏です。

藤田氏は「必ずや、円が買われ、ドルが売られるという構造的な要因がある」と考え、一般的に考えられている『定説』や『通説』には事実と異なるものが少なくない。と考えているようです。

 

「じゃあ、その構造的要因とは?」

「間違っているという『定説』とは?」

といった疑問を持ちながら、『円高はどこまで続くか』について見ていきたいと思います。

 

<目次>

 

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日本が好景気でも不景気でも円高だった

一般的には、『為替はその国の景気に左右される』と思われがちですが、過去の円ドル相場を見ているとそうなってはいないようです。

『円高はどこまで続くか』では、

71年7月末の円ドル相場は360円だったが、バブルのピークだった89年末には143円となった。

この間、円はドルに対して、約18年間で2.5倍に上昇した。

89年にはバブルは頂点をつけ、90年代以降、日本経済は長期低迷に陥った。

ところが、バブル崩壊後の89年末から11年末までの22年間に、円は1.9倍に上昇した。

つまり、日本経済が好調なときも円高だったし、バブル崩壊後も円高だったのである。

と、『好景気でも不景気でも円高が進んだ』 という過去の相場を紹介しています。

 

「円高が進んでいる」と聞くと「日本経済は強く安定しているから、人気があって価格が上がっているのか」と思いがちですが、『バブル前も、バブル崩壊後も円高が進みつづけた』という実績には驚きですね。

 

なお、その後は『リーマンショック』『東日本大震災』『与党民主党ショック(?)』という危機が発生する中、円高は加速していき、11年8月には『1ドル=75.95円』という戦後最高値を更新しました。

そして、与党が自民党に戻った後には、『1ドル=110円前後』での推移を続けています。

 

というわけで、『為替はその国の景気に左右される』という通説が通用しないことが分かったわけですが、

「じゃあ実績から見たら、どんな場合にどう為替が動いてきたの?」

という疑問ついても、見ていきましょう。

 

人口が増加する高成長国の通貨は弱い(通貨安になりやすい)

『円高はどこまで続くか』では、過去の実績を元に以下のように解説しています。

過去10年間の経済成長率の

下位10ヵ国の経済成長率は平均1.5%で、実行為替相場騰落率は同5.0%上昇だった。

同上位10ヵ国の経済成長率は同5.9%、実効為替相場騰落率は同14.7%下落だった。

このように、経済成長率が高いと通貨が強いというよりは、なんとなく経済成長率が高いと通貨が弱いような感じである。

 

そして、『経済成長率が高い国』とは『高金利の国』であるケースが多いです。

すなわち、『高金利の国の通貨は弱い』ということになります。

 

『金利が高い』と聞いて、為替について考えると

「金利が高いから、人気が出て、みんなが買うから、通貨高になる?」

と、なりがちですが、実際は『逆』であることがよくわかります。

 

そうすると次に出てくる考えとしては、

「高金利ってことは、インフレになっているってことなので、それで通貨が下がりやすいってことか」

 と、浮かんでくるかもしれませんが、そうとも限りません。

 

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インフレでもデフレでも日本は円高

『円高はどこまで続くか』では、

日本は、インフレ率に関係なく円高が続いている。

日本がデフレになったのは98年(消費者物価指数がピーク)以降である。

たとえば、2度の 石油危機が発生した70年代に消費者物価指数は2.2倍になった。

そして、その間、円ドル相場は77.3%上昇した。

一方デフレに陥った98年から11年末の13年間でも47.7%円高ドル安になった。

つまり、日本がインフレのときも、デフレのときも、円高なのである。

 と、過去の円ドル相場を例に出し、『インフレ』『デフレ』が為替をコントロールする大きな要因ではないことを説明しています。

 

さらに、

デフレだから円高になるのではなく、円高だから物価上昇を抑制するのではないだろうか。

日本やスイスは持続的に通貨が強いため、経済成長率とインフレ率が低水準となり、結果として金利が低水準安定する傾向にある。

つまり、低金利、低インフレ、低成長が通貨高要因なのではなく、通貨高が低金利、低インフレ、低成長要因であると考えられる。

一方で、インドやインドネシアなどは持続的に通貨が弱いため、経済成長率とインフレ率が高まり、結果として金利が高止まりする傾向にある。

 と、筆者の個人的見解を述べています。

 

つまり、筆者の考えによれば、『低金利』『低インフレ』『低成長』は為替に影響せず、もっと『別の要因』が為替をコントロールしていると考えているようです。

 

というわけで、その『別の要因』とは何ぞや?についても見ていきましょう。

 

最大の要因と言えそうなのが『ドルが弱い』ことです。

 

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円高の原因はドルが弱いこと

『円高ドル安』ということは、『円が上昇している』というのと『ドルが下落している』のどちらか(または両方)が発生していると考えられます。

そして筆者は『ドルは構造的に弱い』と解説しています。

 

一般的には、

  1. 通貨安になる
  2. 貿易による利益が増える
  3. 通貨高になる

といった具合に、為替は一方通行にならず、循環しやすい仕組みとなっています。

 

が、ドルはそうなっておらず『ドル安』&『貿易赤字』が続いている状況にあります。

 

『円高はどこまで続くか』では、

以下の理由から、米国が長期間にわたって巨額の経常赤字をファイナンスし続けることが可能だった。

第一に、ドルが基軸通貨であるため、米国は、経常赤字を垂れ流しても、貿易決済が不能になるなどの通貨危機に陥ることがない。

ドル安は米国の輸出産業にとってプラスであるため、積極的に米国がドル高政策を取ることは多くない。

…中略…

 第二に、米国は巨額の経常赤字を生みながらも、同時に世界最大の資本収支の黒字国である。

01年の米国の経常赤字は3966億ドル、資本収支の黒字は4135億ドル、11年の経常赤字は4728億ドル、資本収支の黒字は4850億ドルだった。

経常赤字と資本収支の黒字はいずれも長期的に拡大しているために、巨額の経常赤字にもかかわらず、極端な通貨の下落が発生しにくい。

 とし、

  • ドルが世界の基軸通貨であること
  • アメリカの資本収支(海外への投資によるリターンなど)が大きいこと

の2点が、『ドル安』&『アメリカの貿易赤字』が続く理由、

ひいては、『円高ドル安に進み続ける原因のひとつ』としています。

 

つまり逆に見れば、

  • ドルが世界の基準通貨でなくなる
  • 資本収支が縮小する

といった事態が起きれば、『円高ドル安』は終わりを迎えるとも言えそうです。

 

前者については、中国が『デジタル人民元』などを使って基軸通貨を目指していることが間違いないとはいえ、そう簡単には実現しないと考えられます。

が、後者については『いつか起きる』と言えそうです。

 

その理由は、中国やインドといった新興国が経済的に急成長を続けており、『一方的に投資される側の国』だったのが『投資する側の国』にもなっていくことが考えられるためです。

 

また、日本のように『ひたすら貿易で稼いでいた国』が『海外へ投資して稼ぐ国』になっていくケースも考えられます。

 

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貿易立国から投資立国に変身する日本

『円高はどこまで続くか』では、

近年、日本の国際収支の構造が大きく転換しつつあることの認識が重要である。

11年の経常黒字は9.6兆円(前年比43.9%減)、所得収支の黒字は14.0兆円(同19.9%増)、貿易赤字は1.6兆円(9.6億円の悪化)、サービスしゅうしの赤字は1.6兆円(0.2兆円の悪化)だった。

貿易収支以上に重要であり、かつ長期的に黒字拡大のけん引役になると考えられるのが、所得収支である。

日本が保有する海外の資産は増加しており、これが所得収支の黒字拡大の主因だ。

80年代、90年代までは、経常黒字のほとんどが貿易黒字だったが、近年、経常黒字のほとんどは所得収支の黒字になっている。

11年は、所得収支の黒字が14.0兆円と、経常黒字9.6兆円を大きく上回った。

つまり、日本はかつての貿易立国から投資立国へと変身しつつある。

 と説明しています。

 

そして、この傾向が加速しつつあるのは多くの方が感じている通りで、実際に以下記事にもまとめさせてもらった通り、若者の間で投資は当たり前のものとなりつつあります。

参考記事:【朗報】20代は投資信託を当たり前に活用している

 

なかには「個人投資家が増えたところで大したことねーよ」と思う方もいるかもしれませんが、日銀発表による2020年6月時点の個人資産は

  • 合計   :1883兆円
  • 現金・預金:1031兆円
  • 株式等  :  173兆円
  • 投資信託 :    68兆円

と、かなりの額に達しており、『現金・預金(1031兆円)』の半分が海外へ投資され、年間3%のリターンが得られたと仮定すると、

  • 毎年15兆円を超す投資リターンが得られる

ことになります。

 

これは『2011年の日本の経常黒字:9.6兆円』を大きく超えていることからも、規模の大きさがよく分かります。

 また、このリターンが全てアメリカへの投資から得られたとすると、『2011年のアメリカの資本収支の黒字:約50兆円』が『約35兆円にまで減る』と考えても、日本の個人資産の影響力の大きさがよく分かります。

 

つまり、今の傾向が進めば、

  • ドル安一辺倒がゆるされなくなる

とも言えるわけです。

 

 そんな日は意外と近いのかもしれません。

 

まとめ:いつまでも円高が続くわけではない

まとめ:いつまでも円高が続くわけではない

ここまで記事にさせてもらった通り、『円高はどこまで続くか』では、円高ドル安の理由として

  • ドルが世界の基軸通貨であること
  • アメリカの資本収支(海外への投資によるリターンなど)が大きいこと

を挙げています。

とはいえ、この2つが永続的に続く可能性は低いため、いつかは『円高』が終わるを迎えることがありそうです。

 

そうなる要因の一例として

  • 日本の個人資産が海外投資につかわれるようになる

を挙げさせてもらいました。

以下記事でもまとめさせてもらった通り、日本の個人資産はかなりの額となっており、一部が投資にまわされるだけでも、大きなお金の動きが生まれます。

参考記事:日銀が個人の金融資産を発表【投資比率の低さは日本の伸びしろでもある】

 

その結果、『円安』が始まったとすれば、『すでに海外資産を持っていう投資家』は、日本円換算した時の資産額が大きく増えることになりますので、万々歳となるかもしれませんね。

 

とはいえ、今や(というか昔から)通貨は投資商品であるため、「○○が起きると○○となる」という考えが広がれば、投資家達が先取りすることによって違う値動きをするし、

「理論じゃなくて過去の実績から予想するんじゃ!」という考えが広がれば、今後は過去実績通りにの値動きをしなくなります。

 

「結局のところ、分からんw」というのが結論のひとつと言えそうですが、筆者(ひょしおんぬ)個人の意見としては、「長期的(数十年単位)には円安方向にいくのかな?」と思いました。

 

みなさまの参考になれば幸いです。

 

 本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。

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その気にさえなれば誰にでもセミリタイアできることが理解頂けるはずです。

 

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