格差をなくすためには、『もうけに対する課税』ではなく『持っている資産に対する課税=資本税』を導入する必要があるのかもしれません。
実際に、アメリカの上院議員からは
「もっている資産に対して課税する、資本税を導入するべきだ」
という提言がでています。
もし、これがアメリカで導入されれば、そのまま日本に導入されるのかもしれません。
もちろん、
- 資本税は、格差をなくすための『富裕層に対する課税』
となる可能性が高く、一般的なサラリーマンに影響をおよぼす可能性は低いですが、
- FIREやセミリタイアを目指している=多くの資産を手に入れようとしている
わけなので、私たち投資家にとっては、『心配事』であることは確かです。
よって、この記事では『実際にアメリカで提言されている資本税』を参考にしながら、『資本税が導入されるとどうなるのか?』について、考察していきたいと思います。
<目次>
- 格差をなくすためには資本税が必要
- 『投資によって儲けたお金』と『もっているお金』のどちらに課税するのが正しいのか?
- 政府と市場、どっちが賢い?
- アメリカでは『資本税(資産課税・富裕税)』が提言されている
格差をなくすためには資本税が必要
2015年に世界中で話題となったトマ・ピケティの『21世紀の資本』では、
- 『資本によって得られる利益の増えるペース』は、『労働によって得られる利益が増えるペース』よりも早い
- つまり、このままいけば資本家と労働者の格差は広がり続ける
という調査結果をもとに、
- 格差を小さくするためには、『もっている資産に課税する=資本税』を取るしかない
という提言をしています。
反対に、岸田新総理は、
- 金融所得に対する課税が一律20%となっているのはおかしいので、是正するべき
- つまり、『投資によって儲けたお金』に対する課税を変える
との発言をしていますが、どちらが正しいのでしょうか?
筆者が思うに、『格差』の中でも大きな問題として、
- 一部の圧倒的な金持ちが、かなりの資産をもっている
という現状があるわけですが、『金融所得に対する課税』を増やしたところで、その格差が縮まるとは思えません。
『投資によって儲けたお金』と『もっているお金』のどちらに課税するのが正しいのか?
例えば、もしあなたが『いっさい働かずに、代々資産から得られるお金だけで生活している一族の人』だったとして
- 1000億円の資産をもっている
- 資産を取り崩さず、配当だけで生活している
- 毎年2%の配当が得られる
- 資産から得られるお金は、毎年16億円 = 1000億 x 2%(配当) x 80%(金融所得課税)
- すなわち、年間の生活費は16億円で暮らしている
としましょう。
この状態から『金融所得の課税が50%に増税された』とされたとしましょう。
(これが、全世界で同時に、どれだけ金持ちでも逃れられないほど強固に実施されたと仮定)
すると、
- 資産から得られるお金は、毎年10億円 = 1000億 x 2%(配当) x 50%(金融所得課税)
となるわけですが、そこであなたは
「生活費は16億円から減らしたくないから、毎年資産を6億円ずつ取り崩そうかな」
と、思いますか?
思いませんよね。
ほかに儲ける手段をもっているか、マネーリテラシー皆無の人でなければ、
「まぁ、しょうがない。毎年10億円で生活するか。」
と考えることでしょう。
あたり前ですが、資産を取り崩すような生活をしていれば、いつかは資産がなくなってしまうので、ほとんどの人はそこに手を出すようなことはないでしょう。
すると、
- 金融所得課税を増やしたとしても『資産1000億円の金持ち』の資産は1000億円のまま減らない
- それどころか、資産は『資産価値(株価など)の上昇』に合わせて増えていく
ことになります。
もちろん、『税収=金持ちが支払う税金』は増えるので、『増えた税金を、低所得者に配ることで、格差が小さくなる』と考えられないこともありません。
しかし本当にそうでしょうか?
金融所得課税を強化したということは、
- 『税収=金持ちが支払う税金』のと同じだけ『金持ちによる支出が減った』わけで、
- 金持ちが利用していた、(例えば)高級レストランや、高級自動車メーカの売上が減ることになるわけで、
- 高級レストランや、高級自動車メーカ(と、その関連会社)で働く『ふつうの労働者』や『派遣社員』や『バイト』の収入が減ることになるわけで…
と、税率を上げたことで、『お金持ちが、お金を使っていたことで回っていた経済』が減速することになります。
つまり、
- 金融所得課税を強化する
という行為は
- 『金持ちが消費することで儲けられていた人達』にお金がとどかなくなり、
- 政府が決めた『税金の使いどころ』に該当する人に直接とどく
ということになるだけです。
政府と市場、どっちが賢い?
これが『良いコト』なのかどうかは、
- 『お金が自然と市場に流れていく』ことよりも『政府が考えたお金の使い方』のほうが賢いかどうか
で決まります。
もし政府が『ムダ使い』的なものをしているのであれば、『増税しても意味がない』と言えるでしょう。
MMT(モダン・マネー・セオリー:現代貨幣理論)から考えて、一番最悪なのは、
- 増えた税金を、国債の返済に充てる
という行為で、もしこれをすれば、
- お金持ちが利用していたお店の利益が減る
- 政府による支出も増えない
- すなわち、市場に流れるお金が消失することとなり、景気の悪化が加速する
こととなってしまいます。
しかしこれは
- 増税しても『資産1000億円の金持ち』の資産は1000億円のまま減らない
という前提に立っているので、『資産1000億円の金持ち』の『資産を分配する』増税、すなわち『資本税(資産課税・富裕税)』であれば話は別です。
アメリカでは『資本税(資産課税・富裕税)』が提言されている
実際に、アメリカでは『資本税(資産課税・富裕税)』が提言されており、エリザベス・ウォーレン上院議員は、
- 資産5000万ドル以上の世帯にたいして資産の2%の課税
- 資産10億ドル以上の世帯にたいして資産の3%の課税
という案を出しています。
もし、これが実現すれば(面倒なので『1ドル=100円』とすると)
- 1000億円の資産があれば、30億円の資本税を支払う
ということになります。
もちろん、これは『追加』の課税であるため、上であげた『1000億円の資産があり、毎年2%の配当がえられる』ケースで考えると、
- 資本税30億円 + 従来の金融課税4億円 → 毎年34億円の税金を支払う
ことになります。
上の例では、
- 配当金だけで生活しているので、資産が(株価の減少以外では)減ることはない
となっていたわけですが、
- 資本税が追加されれば、配当金だけで生活していたとしても、資産が取り崩されていく
ことになり、それはすなわち、
- 1000億円の金持ちから『使う予定のなかったお金』を引き出すことができる
- つまり、金持ちのお金が市場に流出し、広くいきわたることになる
- よって、格差が縮小する
というわけです。
もちろん、株価が大きく上昇すれば
- 1000億円の資産から、3%の資本税をとって、残り970億円となる
- 株価が10%上昇し、資産が1067億円となる
と、『資本税と取ったところで、資産が増える』ことにもなりますが、重要なのはそこではなく
- 『資本税がなければ、出てくることのなかったお金』が市場に流れるようになった
という点です。
むしろ、『資本税として10%徴収する』とすれば、
- 金持ちの資産が、高い確率で減っていくこととなる
- 金持ちからの大きな反発が避けられない
となってしまいますので、
- 課税は強化するけども、資本に対する税率は『税金を払っても、”たぶん”資産が増えるであろうライン=3%』とする
というのが、エリザベス・ウォーレン上院議員による提案の基準なのではないでしょうか。
(過去の株式投資によるリターンは、5~7%程度に収斂しているため)
また、課税対象の下限は、
- 資産5000万ドル(55億円)以上の世帯にたいして資産の2%の課税
と、『明らかに庶民とは言えない』レベルとなっています。
よって、もし日本に導入されたとしても
「国をあげて投資をススメておいて、課税を増やすなんてバカげている!」
「”格差是正”を上げていながら、ただのサラリーマンにも増税するようなふざけた制度を導入した!」
といった批判はされないでしょう。
うわさされているような『金融所得課税を25%~(?)に増税する』という政策を岸田政権がぶち上げれば、こういった批判がされるでしょう。
この『資本税』の導入が、ベストな選択かどうかは分かりませんが、
- 平凡な人生を送っている人は増税されない
- 普通ではありえないようなレベルのお金持ちから、大量のお金を徴収することができる
という意味では、十分に検討に値する内容かと思います。
ただし、トマ・ピケティも言っている通り、
- 一国だけが資本税を導入しても、資本税のない国にお金が逃げるだけで効果がない
という大きな問題があります。
よって、
- 資本税を導入するのであれば、世界が足並みをそろえてやる必要がある
と言え、『どうやって足並みをそろえてやるのか』が大きな課題だと言えそうですね。
最後に、話は変わりますが、
「自分で金持ちになった人がどうお金を使おうが勝手だけど、親からもらったお金だけで裕福な暮らしをするのは許せない」
という言葉を聞くことがあります。
しかし、筆者はそうは思いません。
- 自分で金持ちになった人が、『子どもに与える』という行為をしているだけで、『金を稼いだ人が、使いたいように金を使っている』だけ
- 言い方を変えるとお金を稼いだ親が『子供に贅沢な暮らしをさせる』という使い方をしているだけ
- つまり、稼いだ人が、お金を使いたいように使っているだけ
という意味では、「しょうがないかなー」と思うのです。
自分がもしお金持ちになったら「子供には豊かな暮らしをして欲しい…」と思うでしょうし、その「親の想いは大切にして欲しいなぁ」というコトです。
とはいえ、苦労せずに大金を手に入れた2代目は、バンバン浪費してしまかもしれませんけどね。
そんなことを考えていると、
「もしかして、時が立って資産の相続が進めば、格差は縮小されていく?」
なんて想像してしまい、
「金持ちのマネーリテラシーが低いといいなぁ…」
とバカげた期待をしてしまう筆者でしたw
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