『テスラ』のCEOとして有名なイーロン・マスクが、自動車業界だけでなく世界を変えていくかもしれない計画を立てていることはご存じでしょうか?
『世界を変えた企業』といえば、
- Apple
- Amazon
の4企業、通称GAFAのことを思い出すでしょう。
これら企業はいわゆる『シリコンバレー型』と言われる『アイデアとプログラミングによってお金を生み出す企業』です。
確かにこれら企業によって『世界が激変した』ことは間違いありませんが、あくまでも『生活を便利にした』という域かはら出ていないのかもしれません。
しかし、イーロン・マスクは、
- 人類が火星で暮らせるようにする
- 脳をコンピュータに直接つなぎ、制御できるようにする
- 地下に低気圧なトンネルをつくり、時速1000km以上で人やモノを運ぶ
といった、世界を激変させるような『モノ』を開発する計画を実現するべく活動しています。
『イーロン・マスクと言えば電気自動車』と考えられがちですが、イーロン・マスクは、
人類が火星に移住するロケットを作り上げるにはもう少し時間がかかる。
それまでに地球環境の破壊が進んでしまうので、排気ガスをまき散らすガソリン車に代わり、世界中に電磁自動車(EV)を走らせよう。
と、『電気自動車は、ただのつなぎ』とも取れるような発言をしています。
また電気自動車についても、
電気自動車の年間販売台数を、世界中で1億台にする。
と、『世界で売られる全ての自動車を電気自動車にする(2020年の世界自動車販売台数は7848万台であるため)』と宣言しているのですが、これは『テスラの販売台数』ではなく、言葉通り『世界で売られる電気自動車の台数』を指しています。
テスラは、2014年に『テスラの全ての特許を公開する』と宣言・公開していることから、これが本気であることが分かります。
これらは、まさに『イーロン・マスクは世界をつくりかえる男』と言えるエピソードの一つで、イーロン・マスクにはこういったエピソードが数えきれないほどあります。
というわけでこの記事では、著書『世界を変えるイーロン・マスク 著:竹内一正』を引用しつつ、イーロン・マスクという人物について紹介していきたいと思います。
また、「イーロン・マスクの想像する世界に投資したい!」と考える投資家も多いでしょうから、『投資』という目線からも考察していきたいと思いますので、最後までお付き合いください。
<目次>
- イーロンマスクの最大の敵は既得権益
- 既得権益と戦う
- マスコミの捏造記事と戦う
- テスラの自動運転による死者の確率は?
- テスラへの転職組は、『アップルから』が最多
- 総合的にロケットのことを一番理解しているのはイーロン・マスク
- 投資先としてのイーロン・マスク
- まとめ:イーロン・マスクは世界をつくり変える男!
イーロンマスクの最大の敵は既得権益
冒頭でも書きましたが、イーロン・マスクはGAFAと違って『モノ』をつくるビジネスを手掛けており、そこには既に巨大なライバルが存在しています。
例えば、
「世界で販売する自動車のすべてを電気自動車にする」
と宣言すれば、
- 自動車業界(とくに需要のなくなるエンジン関連の製造メーカ)
- 石油業界
- それら業界に群がる政治家など
から大きな反発を受けることは必至ですし、
「ロケットの開発コストを100分の1にする」
と宣言すれば、
- 既存のロケット業界
から目の敵にされることは確実です。
しかし、イーロン・マスクはその既得権益者からのバッシングに負けることなく、数多くの成功を手にしてきています。
その『勝ち続けられる理由』を見ていきましょう。
既得権益と戦う
アメリカの宇宙産業といえば『NASA』ですが、実際にロケットなどを開発、製造しているのは民間企業です。
宇宙産業は、高い技術力を要求されるだけでなく『軍事目的』でも利用されるので、ごく一部の巨大企業(ボーイングやロッキード・マーチンなど)ばかりがNASAからの受注を受けていました。
『NASA・国防総省・一部の巨大民間企業だけでアメリカの宇宙事業のすべてが完結する』といえるような状況にあったわけですが、その中で
- どのような契約がされているのか
- どのようにお金が流れているのか
等々はブラックボックス化されており、まさに『利権が渦巻く世界』となっていました。
そこに、イーロン・マスク率いるスペースXが参入していくわけです。
当初は、
「なんの実績もない企業が、NASAや国防総省の相手にされるはずがない」
と半ば無視されてきたわけですが、前述した通りイーロン・マスクは
「ロケットの開発コストを100分の1にまで減らす」
と宣言し、『実際に10分の1にまで削減することに成功』という実績を手に入れました。
こうなると、NASAや国防総省はスペースXを無視するわけにはいなくなります。
というのも、この状態になってもNASAや国防総省がボーイングなどとだけ取引を続けていると、
「なぜ、安いスペースXを使わないんだ!税金のムダ使いだ!」
と、国民からの声があがってくるためです。
まさに、
- 製品の魅力だけで利権に食らいついた
と言える、スカッとする(そしてイーロン・マスクのすごさが分かる)エピソードです。
また、ご存じの通り自動車産業にも巨大な利権がからんでおり、イーロン・マスクはそことも戦っています。
マスコミの捏造記事と戦う
自分にとって都合の悪い存在が登場したときに、
- マスコミを利用して、ライバルを叩き落す
というのは日本でも常套手段として使われていますが、テスラに対しても同じような戦いが発生しました。
著書『世界をつくり変える男 イーロンマスク』では、
2013年、ニューヨークタイムズは「テスラ・モデルSを運転していたが、途中でバッテリーが切れ、レッカー車を呼ぶことになった」
という衝撃的な批判記事を掲載しました。
テスラが提供している急速充電システム「スーパーチャージャー・ステーション」で充電をして、東海外のニューアークから約200マイル離れたコネチカット州ミルフォードを目指してモデルSを運転したという体験記事です。
という記事を紹介しています。
さらに、
- 満充電であれば、時速65マイル(105km)で、265km走行可能と言っているが、時速54マイルでも200マイル先に到着できなかった
- 外気温は零度だったが、節電のためにエアコンを「低」にしていた
という「省エネ運転していてもバッテリー切れになった」と書いていたのです。
しかし、イーロン・マスクは対象車両の走行ログを確認し、
- 充電が切れたログは残っていない
- 実際は、時速65~81マイル(105km~130km)で走っていた
- それ以前に100%充電していなかった
という事実をつかみ、イーロン・マスクは
この記事は、初めから悪いレビューを書こうという悪意に満ちていた。
と記者を厳しく批判したことで世論を味方につけ、最終的には
記事は正確さに欠け、適切な判断がなされなかった
という記事の誤りを認めるコメントを発表させることに成功しました。
また『利権との戦い』とは違いますが、「テスラの自動運転は危険」というイメージというイメージを持っている方も多いでしょうから、テスラがそういった『間違ったイメージ』と戦ってきた例も紹介したいと思います。
テスラの自動運転による死者の確率は?
テスラは何度も危機にさらされていますが、その中でも
- テスラ車の自動運転で死亡事故が発生した
という話題を思い出す人は多いのではないでしょうか。
2016年に、テスラのモデルSによる自動運転中に、大型トラックに追突してドライバーが死亡してしまう事件が発生し、テスラに対する批判が集まりまりました。
こういったケースに遭遇すれば、ほとんどの企業は
「安全が確認できるまで、自動運転を使えないようにします」
といった表明をするかと思いますが、イーロン・マスクは違いました。
イーロン・マスクは
テスラのオートパイロットを使ってユーザたちが走行した距離は合計約2億km以上になり、今回が初の死亡事故である。
統計的には、米国では1.6憶km走行で1件の死傷事故が起きており、それらを比較するとオートパイロットは人間よりも優れていると判断できる。
と発言し、『自動運転の使用』『自動運転のさらなる開発』を続けました。
さらには、
自動運転機能を正しく使った場合、人間が運転するよりも安全性は向上する。
そのために、メディアの論調や法的な責任を恐れてリリースを遅らせることは道徳的に許されない。
とまで発言しました。
これには、自動運転の開発者たちはかなり勇気づけられたことでしょう(自分で開発したシステムの使用中に人が亡くなったわけですから…)
もし日本でこのような発言をすれば、メディアやSNSから
「リスクの大小ではない!実際に人が死んでいるのだ!」
「そんなことを遺族の前で言えるのか!」
と、感情論によって総叩きに合うことは間違いないため、経営者はそのようなリスクを冒す発言をすることはないでしょう。
それによって、自動運転の開発は遅れ、他社、他国に置いていかれることは間違いありません。
しかし、イーロン・マスクは上記のような発言をし、前進を止めることなく開発をつづけたことで、自動運転技術で世界でトップの座を守り続けることに成功しています。
イーロン・マスクが優れた経営者であることを示す、いいエピソードです。
このように、イーロン・マスクは論理的に物事を見定め、チャレンジをし続けていくことから、イーロン・マスクの元には優秀な人材が集まり、より技術力の高い集団を形成しています。
テスラへの転職組は、『アップルから』が最多
テスラは、新参メーカであるため多くの人材を転職組でまかなっています。
そして、あたり前ですがテスラは自動車メーカです。
しかし、そのテスラをリードする人材は、GMやフォードのような自動車メーカからではなく、アップルからの転職組が一番多いです。
その理由は『スティーブ・ジョブズの引退』です。
アップルは、2011年にスティーブ・ジョブズからティム・クックにCEOが変わりました。
ご存じスティーブ・ジョブズはテクノロジーに精通している人物であることから、エンジニアたちは
- スティーブ・ジョブズを技術的に納得させられる商品を作らなければならない
という立場におかれ、つねに時代の先をいく技術の開発に追われていました。
しかし、新CEOのティム・クックは『企業の経営』を得意とする人物で、『コストの削減』『性能の向上』といった小さな改善をエンジニアに求めることはあっても、『革新的な技術』を求められる機会は減りました。
そこで物足りなさを感じたエンジニアたちが、
「世界を変えようとし、先進的な技術を求めているイーロン・マスクの元にいけば、刺激的な環境で仕事ができる」
と考え、テスラに集まってきているわけです。
そして、そういったエンジニアがいるからこそ、テスラは『世界一の自動車メーカ』となり、またそこに惹かれて優秀な人物が集まってくるわけです。
これが、テスラが短期間で世界一の電気自動車メーカとなれた大きな理由です。
また、イーロン・マスクはスティーブ・ジョブズと同じく、『エンジニアと技術面でも激論を交わす』ことでも有名です。
総合的にロケットのことを一番理解しているのはイーロン・マスク
イーロン・マスクは基本的な物理学を学んできたものの、ロケットに関しては素人同然でした。
であるのにも関わらず、いまや『スペースXの中で、総合的にロケットのことを一番理解しているのはイーロン・マスク』と言えるほどの知識を身に付けています。
イーロン・マスクは本の虫としても知られており、過去のインタビューで
「スペースXに必要なロケットの知識をどこで学んだのか?」
という質問に対して
「多くの本から学んだ」
と回答をし、著書から多く学んだことを強調しています。
参考記事:イーロン・マスクが読書をすすめる理由【イーロン・マスクおすすめの本も紹介】
しかし、どうやらそれだけではなく、著書『世界をつくり変える男』では、
現場に入り込み、質問を浴びせ議論を交わしながら驚くべきスピードで知識を吸収し、本質を理解していきます。
イーロンの置かれたハイテク業界は、いわば楽器と演奏者がどんどん進化し、増えていくので、それだけハイスピードで知識をバージョンアップしながら、自分の解釈を加え、新たな演奏にランクアップさせていかなければなりません。
ロケット開発のスタート時、イーロンは素人でしたが、猛烈なスピードで、ハイレベルの知識を身につけ、瞬く間に相手がNASAの専門家だろうが、ひるむことなく議論を戦わせるレベルになりました。そして、相手を論破してしまうほどの知識を持ち得るようになったのです。
と紹介しています。
ハイテク業界は日進月歩であることから、そこのトップで居続けるには相当の努力が必要で、常に知識をアップデートしなければなりません。
イーロン・マスクは、その知識をスペースXやテスラのエンジニアとの議論から学び、『総合的にロケットのことを一番理解している』と言われるほどの人物になったわけです。
巨大企業となったGAFAは、すでに『金の生る木』を手に入れており、この先に大きな技術革新がなかったとしても、それなりな利益を得て、それなりに成長していくことでしょう。
しかし、イーロン・マスクの抱える企業はそうではありません。
いまだ形となっていない
- 人類が火星で暮らす
- 脳をコンピュータに直接つなぎ、制御する
- 地下に低気圧なトンネルをつくり、時速1000km以上で人やモノを運ぶ
といった目標を持ち、それに着実に近づくことができているのは、イーロン・マスクが『圧倒的な吸収力を持った人物』であるからだと言えそうです。
さて、ここまでで『イーロン・マスクはすごいやつだ』ということは理解頂けたかと思いますが、「投資対象としてはどうなのか?」についても考察していきたいと思います。
投資先としてのイーロン・マスク
イーロン・マスクが『天才』と言えるべき人物であることに疑いはありませんが、『投資先』として見た場合は、『不適当』と言いたくなる要素が多くあります。
イーロン・マスクは、多くの企業の代表を務めていますが、残念ながらテスラ以外は上場していないため、スペースXなどの株を買うことはできません。
(「スペースXの子会社『スターリンク』が上場するのではないか?」という噂はあります)
それどころか唯一上場しているテスラでさえ、イーロン・マスクは2018年に「テスラの非上場化を検討している」と発言しています。
それは、イーロン・マスクが「できれば上場したくない」と考えているためです。
『上場する』ということは、『外部(株主)からの圧力を受けるようになる』ことでもあり、イーロン・マスクのような天才であっても、『株主の声』から逃れることはできません。
『株主の声』はうつろいやすく、『利益重視』となりがちで、イーロン・マスクのような『天才』にとっては雑音でしかありません。
よって、イーロン・マスクは『株主の声を聞く』、『株主にために』といった考えはせず、あくまでも『自分の目標を達成する』ことを目標に会社を動かしています。
つまり、『テスラへ投資する』ということは、
- イーロン・マスクは、『株主の意向に反する行為』であっても、必要であれば躊躇なく行う
- それによって、株主が売りに走る
- 株価が下落する
といったリスクがあるわけです。
また、前述の通り、イーロン・マスクは、
- 『世界で販売する自動車をすべて電気自動車にする』という目標を達成するために、テスラがもっていたすべての特許を公開した
ということを平気でやれる人物でもあり、株主にとって重要な『企業の利益』を重視していません。
(もちろん、『テスラの規格を広める』という戦略もあるでしょうが)
こういった面からも、
- イーロン・マスクは世界を変える天才ではあるが、『儲けたい』という目的で投資するべきではない
といえ、
- イーロン・マスクに投資するべき人は、イーロン・マスクの作る未来に『ロマン』を感じられる人
だと言えそうです。
まとめ:イーロン・マスクは世界をつくり変える男!
といった感じで、著書『世界をつくる変える男』を参考にしながら、イーロン・マスクについて紹介させてもらいました。
イーロン・マスクは、口先ばかりでなく
- 短期間で世界一の電気自動車会社をつくり上げる
- ロケットの打ち上げ費用を10分の1にまで激減させる
といった驚くべき実績をあげている、まごうこと無き天才です。
スペースXは、
- 2024年までに火星へ有人ロケットを打ち上げる
と宣言しています。
『世界一の宇宙事業団体』であるNASAは、同じ目標を「早くても2030年に」と公表しており、イーロン・マスクの計画の壮大さが分かります。
しかし、イーロン・マスクのこれまでの実績を見ている限り、この目標がただの大口ではないように思えます。
イーロン・マスクによって人類の進化が加速していくことは確かでしょう。
この天才によって、作り上げられる未来が楽しみでしょうがありません。
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