更新日:2021/5/13
この記事では、近頃よく聞くようになった「何となくエコっぽい言葉」
- SDGs
- ESG
- CSR
について、可能なかぎり分かりやすく解説していきたいと思います。
また、
- バフェットはSDGs、ESG投資に積極的
- バフェットはSDGs、ESG投資に否定的
と、相反する評価を下されているバフェット(とバークシャー)の考えについても解説していきたいと思います。
多くの人がしっかり理解する事を避けてきたこれら言葉について、覚えて頂ければと思います。
なお、ものによっては(特にESG、CSR)意味がきっちり定義されていないものもありますので、この記事の内容は『筆者による理解』であることをご理解ください。
<目次>
SDGs、ESG、CSRとは
まずはそれぞれの意味を簡単に書いていくと、
- SDGs:目標 :Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)
- CSR :取り組み:Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)
- ESG :評価基準:Environment、Social、Governance(環境、社会、ガバナンス)
となります。
言い方を変えると、
- 企業は社会から認められるために、SDGsという目標をかかげる
- SDGsを達成するために、CSRを行う
- きっちりと取り組めているかどうかを、ESGで評価する
といった感じになります。
さらに違う言い方にすると
- SDGsを目標にかかげている企業は、良い企業
- CSRを行っている企業は、良い企業
- ESGの高い企業は、良い企業
となります。
ただ、『良い企業』=『投資することでリターンが狙える企業』ではなく、あくまで『良いイメージがつきやすい企業』であることに注意が必要です(この辺りは記事後半で)
では、それぞれの言葉について、もう少し詳しく見ていきましょう。
SDGsとは
SDGsは『Sustainable Development Goals』の略で、国連がかかげた2030年までの達成を目指した目標で、2015年9月のサミットで決められたもので、その名の通り
- 持続可能な(Sustainable )
- 開発、発展の(Development )
- 目標(Goals)
のことで、これは企業に対しての目標ではなく『社会としての目標』です。
覚え方は、SD"Gs"が、Goalsの略なので『目標』とそのまま覚えられます。
具体的には
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
という17の大目標があり、この目標をもっと細かくした『169のターゲット』が存在しています。
また、さらにその下には、232の具体的な目標(数値目標のある指標)があります。
わかりやすく一言にまとめてしまうと「いい世界にしよう」という目標で、言い方を変えると「利益だけを求めるのではなく、社会のための行動を取るべきだ」という目標となります。
そして、この『社会のための具体的な行動』がCSRなわけです。
CSRとは
CSRは『Corporate Social Responsibility』の略で、その名の通り
- 企業などの団体(Corporate)における
- 社会的な(Social )
- 責任(Responsibility)
のことです。
筆者の覚え方は、Chanto Sokorahenni Reigitadashikusuru(ちゃんと そこら辺に 礼儀正しくする)ですw
『社会的な責任』とは、『社会にある問題に取り組む責任がある』ことで、主に
- 消費者
- 従業員
- 環境
- 取引先
- 株主
に対しての責任のことです。
企業がCSRに取り組む目的をざっくりと言うと、
- 上記で挙げた社会的問題に取り組み
- 自社だけでなく社会全体の発展を目指し
- 企業のブランド力(CSRに取り組んでいる素晴らしい企業だ!)を向上させる
となります。
具体的な活動内容としては、
- 植林活動
- 再生可能エネルギーの利用
- 多様な人材を採用
- CO2排出量の削減
などで、分かりやすい例を挙げると、昔からよくある
- 会社近辺の道路に落ちているゴミを拾う
という活動もCSRに含まれるでしょう。
そして、『企業CSRなどの”善い行い”をしているかどうか』を測るために、ESGがあります。
ESGとは
ESGは『Environment、Social、Governance』の略で、
主には、投資家が企業を評価するときに
- 環境(Environment)
- 社会(Social)
- ガバナンス(Governance)
の3項目に対する姿勢を見るためのものです。
筆者の覚え方は、Ecoka Sounanoka Godankaihyoukade(エコか そうなのか 五段階評価で)ですw
以前であれば、
- ESGを気にした経営では利益がでない(投資先として魅力がない)
と言われており、例えば
- CO2の排出量を減らしたところで儲からない
- 障がい者を雇ったところで業務効率は上がらない
- 不祥事に目を光らせているとコストが増えるだけ
などと考えられていました。
しかし、今では
「企業が長期的に、安定した成長を続けるためにはESGを考慮する必要がある」
という考え方が広がりつつあります。
実際に、ブラックロックによると『2012年からの6年間で、ESGファンドは平均的なファンドよりも高いリターンを得られた』という調査結果もあり、近年ではESGが重要視されるようになってきました。
高リターンが得られる要因としては
- 消費者が「社会にとって良い企業の商品を買おう」と思うようになってきたため、ESGに重点を置く企業の業績が向上してきた
と、言ってしまえば簡単に説明がつきますが、筆者は
- 投資家による『ESGに重点を置く企業』の期待値が低かったため、株価が割安となっていただけ
- 期待値が低すぎたせいで、投資によるリターンが良かった
のだと考えています。
これは、ジェレミー・シーゲル氏の著書『株式投資』で語られている、
- 『人気もあり、企業の成長が早い企業』よりも『人気がなく、成長していない企業』の方が株式投資によるリターンが多かった
という過去の実績と同じことで、『人気の有無』や『企業の業績』といったものと、株式投資によるリターンは関連しないということを示しています。
企業が高成長することで、人気となれば、割高となり、投資リターンは下がる(こともある)
企業が低成長することで、人気がなくなり、割安となり、投資リターンは上がる(こともある)
だけの話です。
さらに言うと、「社会にとって良い企業の商品を買おう」と考える消費者が存在しているとは思いますが、そういった消費者が企業の利益に影響を及ぼすほど存在しているかどうかには疑問が残ります。
実際に、あなたは「多少高くても(品質が悪くても)いいエコな企業の商品を買おうかな?」と思ったりしますか?
筆者は、(めったに)そうは思いません。
つまり、『2012年からの6年間でESGファンドは、平均的なファンドよりも高いリターンを得られた』わけですが、だからといって『ESGに注目が集まっているからといって、ESGファンドが今後も投資対象として魅力的かどうかは分からない』となります。
さて、『投資』『ESG』と聞くと、バフェットのことを語らずにはいられません。
バフェットとESGと
冒頭でも書いた通り、
- バフェットはSDGs、ESG投資に積極的
- バフェットはSDGs、ESG投資に否定的
と両方の評価をされています。
具体的な内容としては、
バフェットは2021年5月に開催されたバークシャーの株主総会で、株主より提案された、バークシャーに対する
- 気候変動リスク管理に関する情報開示を求める
- 事業全般のダイバシティー(多様性)強化に関する情報開示を求める
という決議に対して反対票を投じ、
「積極的にESG(の開示)に取り組むつもりはない」という意思表示をしました。
とはいえ、この意思表示とは反対に、バフェットは風力発電など再生可能エネルギーに多額の投資をしており、「ESG投資に積極的な人物だ」という評価も受けています。
この点についてバフェットは、「税制面で有利でなければ、再生可能エネルギーへの投資なんてしない」と言っており、『ESGに重きをおいた投資ではなく、あくまでもリターンできる投資をしているだけ』との考えを表明しています。
楽天トウシルに、以下バフェットの言葉が載っていましたので引用します。
もし、電力会社が持つ石炭火力発電所を止めようと思えば、私たちの株主か消費者のいずれかがそのコストを負担することになります。
たまたま住んでいる地域によって、一部の消費者が高い電気料金を払うことになったとしたら、それは“良きこと”なのでしょうか。
市場のシステムを変えるのは政府の仕事である(=コストは政府が負担する)べきです。
バフェットは
- 企業のお金は株主のもの
- よって企業は利益を追求するべき
というスタンスを取っています。
しかし、ESGを重視することは、企業、消費者、株主への負担増となることがあります。
よって、バフェットは
- 『企業がESGを重視することで、企業、株主の利益が減ってしまう』という事態を避けなければならない。
そのために、
- 『企業がESGを重視することで、企業の業績アップにつながる』という状況を政府が作り出すべき。
と、指摘しているわけです。
『ESGに重きを置いた活動をすることが、世界にとって重要』であることは誰しもが理解していることかとは思いますが、その活動によって企業の利益が減少してしまえば、そういった活動を行うことすらできなくなります。
また、『利益を出しつつも、ESGにも気を配る経営』をしていたとしても、競合に『ESGを全くしていない企業』があるのであれば、競争力で劣ることとなります。
よって、バフェットは
- 企業は利益を追求するべし
- ESGを重視することが利益につながるようにするべし
と言っているわけです。
昨今では、『ESGファンド』や『ESGを重視した投資』が当たり前のようになりつつありますが、「ESGを重視することは良いことだ!」と盲目的にならないよう注意する必要がありそうです。
出典
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