更新日:2021/3/24
「割安な銘柄に投資してもむくわれず、株式市場は深刻な機能不全に陥っている」
という結論を出している、野村アセットマネジメントのファンドマネジャーらによる『バリュー投資の再考』という論文を紹介します。
この論文では、1980年以降の日・米の株式市場を調査対象とし、
- 『1年先の企業の業績を正確に予想できる』という前提のもと、その予想を使って『割安だ』と判断できる銘柄に投資した場合のリターン
を調べました。
結果は、
- 平均すると年利10%超のリターンを手に入れられた(市場平均を超える)
- ただし、2010年以降はリターンが減少する傾向にあった
- 特に米国市場では、2019年のリターンがインデックス以下となった
となりました。
この『将来の業績に対して株価が低い企業に投資しても儲からない』というのは、
などを読んだ投資家からすれば「知ってる」の一言で終わる話かもしれませんが、『1年先の企業の業績を正確に予想できる』という常人ならざる力を持っていても、この結果が変わらないのには少々驚きです。
この結果には、以下3つの理由があると述べています。
- 世界経済の成長率低下に伴う、投資マネーの集中
- パッシブ運用(インデックス投資)の膨張
- ESGなど、利益以外にも企業価値を判断する材料が増えた
世界経済の成長率低下に伴う、投資マネーの集中
世界経済の成長率が低下しつつあることによって、
- 『安定した企業(世界経済が成長しないと、成長しづらい企業)=割安な銘柄』の魅力が低下
- 『世界経済と関係なく大きな成長が見込める企業=ハイテク企業など』の魅力が向上
し、投資マネーがGAFAMに代表されるようなハイテク企業に集中しています。
つまり、割安な企業は見向きもされず『企業の利益に対してリターンが少ない』という結果を招いています。
パッシブ運用(インデックス投資)の膨張
インデックス投資を活用する投資家が増えたことによって、企業の業績(や将来性なども)を無視して投資されるケースが増え、業績と株価が一致しづらくなりつつあります。
とはいえ、インデックス投資はまだまだ主流とは言えず(※)、これによる影響は小さいのではないかと思います。
※主流ではないと思いますが、それを証明する根拠も見つからず…。どなたか、情報をお持ちでないでしょうか?
それでも、インデックス投資が広がりつつあるのも確かで、このまま広がり続け、『インデックス投資が当たり前』とすらなってしまえば、
『企業の業績と株価の関連性はひくい』どころか、
『企業の価値と株価の関連性はひくい』とすらなりかねません。
関連記事:インデックス投資がブームになることによる問題を検証
とはいえ、そんなインデックス投資が広がれば広がるほど、アクティブ投資が有利となるわけなので、
『インデックス投資が流行りすぎたせいで、企業の価値と株価の関連性がなくなった』という時代はこないとは思いますが。
利益や保有資産以外にも、企業価値を判断する材料がふえた
時代の流れがはやくなった昨今では、知的財産が企業の成功のカギとなっています。
またGAFAMのようなハイテク企業は『ためこみ続けているビッグデータ』を武器に戦っています。
この『知的財産』や『ビッグデータ』といった『無形の財産』は、企業の会計上に出てくる存在ではないため、今までの判断のしかたでは、『適正な株価なのかどうか』を判断することが難しくなりつつあります。
古くからある指標では、『GAFAMは割高』という判定を下されるわけですが、『無形の財産』をもちいて分析すれば『適正な株価』と判断されるのかもしれません。
(無形財産の価値をはかるのは、むずかしいですが…)
つまり、『いままでと同じ考え方では、適正価格をはかることが難しい時代』となりつつあるわけで、
- 古い考え方で『割安だ』と判断した企業に投資したところで、リターンが得られるとは限らない
となるわけです。
というわけで、インデックス投資をしよう
というわけで、『1年先の企業の業績を正確に予想できる』という驚異的な能力をもっていたところで、市場平均を超えるリターンを得るのは容易ではない、という時代となりつつあります。
元より投資家が市場平均を超えるリターンを得るためには、かなり高いハードルがあったわけですが、それがさらに高くなったわけです。
つまり、
- (能力や時間のない)平凡な個人投資家にとって、インデックス投資がベターな選択
であることが、さらにハッキリしてきたわけです。
というわけで、「これからも自信を持ってインデックス投資を続けていこう」と決意をあらたにしてくれる論文を紹介させてもらいました。
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