最終更新日:2021/1/20
メンタリストDaiGoさんも「人を動かす最強の心理学」 といって紹介している、『影響力の武器』を要約しながら、一部紹介させて頂きます。
投資に限らず日常的にも
「何でこんなことしたんだろう?」
「上手い事だまされた気がする…」
と、あとから冷静になって振り返ってみると、『ありえない選択』をしてしまっていた、という経験があるかと思います。
著書『影響力の武器』では、こういった行動の原因を解説しつつ、『ありえない選択』をしないためにはどうすればいいのか?についても教えてくれます。
この『ありえない選択』をしてしまうのは、『頭が悪い』『何も考えていない』『人生経験が浅い』といった理由ではなく、
- 知らず知らずに、本能的にコントロールされている
ことが原因です。
よって、『影響力の武器』は
- 不要なものを買ってしまう人
- 衝動的な選択をしてしまう人
- 他人に流されてしまう人
- 他人に騙されてしまう人
- 権力者に弱い人
といった、『知らぬ間に影響力の武器の犠牲になっている人々』が読むべき本と言えそうです。
また、逆に『他人をコントロールして、自分の意のままに動かしたい』と考えている人にとっても、良書と言える内容となっています。
さて、まずは『簡単に依頼の成約率をアップする方法』を一つ紹介します。
”ので”を付けるだけで依頼の成約率が爆増する
コピー機の前にいる人に
「すみません、先にコピーを取らせてもらえませんか?」
と、頼むよりも、
「すみません、コピーを取らなければならない”ので”、先にコピーを取らせてもらえませんか?」
と頼んだほうが、成約率が1.5倍以上(60%→93%)にもなるという方法です。
2つのセリフの違いは「コピーを取らなければならない”ので”」という言葉が入っているかどうかだけです。
コピー機を使おうとしているので『コピーを取らなければならない』というのは、聞くまでもなく分かっているはずですが、それでもこの一言が入っているだけで、成約率が大きく上昇します。
これは、”ので”という単語が入っているがために、「きっと大切なことを依頼しているのだろう」と勝手に解釈してしまい、実際には意味のないことを付け加えているだけにも関わらず、何も考えずに承諾してしまった、と考えられます。
人間に限らず生物には、このように『○○が起きたら、○○だと解釈する』というロジックが埋め込まれているため、本人の知らぬまに『影響力の武器』のえじきとなってしまうことがあります。
著書『影響力の武器』では、
- 返報性(ギブ・アンド・テーク)
- コミットメントと一貫性
- 社会的証明
- 好意
- 権威
- 希少性
の6つの影響力の武器を紹介しています。
まずは『返報性』について紹介します。
この『返報性』には
- 嫌いな人からのギブに対しても、お返ししてしまう
- いらいないモノをもらっても、お返ししてしまう
という驚くべき特徴があります。
返報性のルールは強力
返報性に関する、具体的な研究結果を一つ紹介します。
美術鑑賞という名目に参加した被験者が、もう一人の被験者と見せかけた実験者Aから、
「1枚25セントの『くじ付きチケット』を何枚か買って欲しい」と依頼された時にどのようにふるまうか、という実験です。
1つのグループは『実験中の休憩時に、実験者Aからコーラを1本プレゼントされたグループ』で、もう一つは『何もプレゼントされなかったグループ』です。
結果、『コーラをプレゼントされたグループ』は、そうではないグループの2倍のチケットを購入していました。
コーラは(当時)たった10セントのものであったのにも関わらず、25セントのチケットを平均して2枚買っていたという、驚きの調査結果です。
さらに、被験者に対して『実験者Aに好意を持ったか』どうかを確認したところ、『好き』『嫌い』の回答と、チケットを購入した枚数にはほとんど相関性がありませんでした。
すなわち、相手への好意と関係なく「借りは返さなければならない」と自動的に反応してしまっている、と言えます。
さらに、返報性の恐ろしいところは、『いらないモノをもらっても、”借りがある”と感じてしまう』ところにあります。
花をもらったお礼に寄付してしまう
『影響力の武器』では、クリシュナ協会という宗教団体が『返報性』を利用して、寄付金を集める具体的なエピソードを紹介しています。
空港にやってきた人-ビジネスマン-が人ゴミの中を早足に歩いていく。
クリシュナの勧誘者が彼の前に進み出て、彼に一輪の花を差し出す。
…中略…
これはクリシュナ協会からの贈り物ですから、どうぞお持ちになってください…ただ、クリシュナの素晴らしい活動を一層発展させるための寄付をいただけるのなら有難いのですが…。
男性はもう一度断る。
「この花、いらないんだよ。もってってくれ」
しかし、勧誘者は受け付けない。
「これは、あなたへの贈り物なのです」
明らかに男性の顔に迷いの色が浮かぶ。この花をもって、何もお返しに与えることなしに立ち去ってしまうべきか?
…中略…
もう一度離れようとするが、駄目。どうしてもその場を後にすることができない。
男がポケットを探り1ドルか2ドル取り出して渡すと、相手は丁重に受け取る。これで、やっと自由になれる。
実際、自由になって男は「贈り物」を手に歩き出す。
そして、ゴミ箱を見つけると、手にしていた花をポイと投げ捨てた。
というわけで、『いらない花を無理やり渡された』ことで『強制されていない寄付』をしてしまった、という面白いエピソードを紹介しています。
これは、クリシュナが実際に使用していたテクニックで、このテクニックによって多大な寄付を集め、協会が大きく発展することに役立てました。
普通に考えれば「プレゼントをくれてありがとう」という感謝の気持ちがきっかけで「お返ししなきゃ」という感情が生まれてくるものだと思いますが、
実際は「(たとえ不要なモノであっても)モノをもらったのだから、返さなければ」と、『最初にモノをもらう側』からしたら『理不尽』とも言える判断をしてしまうようです。
この、
- 好意に関係なく、もらったモノ以上のお返しをしてしまう
- 不要なものをもらってもお返ししてしまう
は簡単に悪用できるので、自身が騙されないよう注意が必要です。
逆に、自分が他人をコントロールしようとする場合にも、わりと簡単に活用できてしまうので、”いざ”という時には使ってみてもいいかもしれませんね。
次は、現実世界で多く利用されている影響力の武器『一貫性』について、解説していきます。
一度承諾してしまったら、自動的に継続してしまう
『影響力の武器』では、以下のプロジェクトを紹介しています。
その研究チームは、天然ガスを使用する家庭に省エネのヒントを伝え、省エネに協力するよう依頼しました。
しかし、一定期間の経過後にガス使用量を調べたら実質的な節約はまったくされていませんでした。
そこで研究チームは、省エネに協力するよう依頼する際に「省エネに同意した家庭は公共精神にあふれ、省エネを実践している市民として新聞に名前が公表されます」ということを合わせて伝えました。
結果、ガスの使用料は大きく節約され、それは長期間継続しました。
これだけ聞くと「そうりゃしょうでしょうよ」と思うかもしれませんが、この実験の面白いところは、「新聞に名前が公表されます」と伝えた後に、手紙で「新聞に名前を載せることはできなくなるだろう」と伝えたところです。
普通に考えると『名前が載る』という約束が消えたため、最初から『名前が載る』と聞かされていないグループ同様に『節約効果がでない』となりそうですが、そうではなく、大きな節約が継続していました。
これが一貫性の効果で、「新聞に名前が載るなら節約しようか!」と一度決断すると
- 光熱費が節約できる
- 節約している私は素晴らしい
- 地球に貢献している
という『節約を”善”とする柱=節約する目的』が出来上がり、『新聞に名前が載る』という最初のきっかけが消えてしまっても、これら柱が『節約する』という行為を支える働きをします。
この例からも分かる通り、『一貫性』も非常に簡単に悪用が可能です。
『影響力の武器』の中では、実際に筆者(ロバート・B・チャルディーニ)が『一貫性』にやられたエピソードを紹介しています。
これには多くの方が苦笑いしながらも「分かる…」と唸るのではないかと思います。
とても魅力的な若い女性「こんにちは。都市居住者のレジャー習慣についての調査を行っています。いくつかの質問にお答え願えませんでしょうか。」
チャルディーニ「どうぞ、お入りください。」
女性「どうもありがとうございます。この椅子をちょっとお借りして、すぐに始めさせていただきます。一週間に何回くらい、外で夕食をおとりになりますか。」
チャルディーニ「そう、1週間に、おそらく3回、いやたぶん4回ですね。行けるときはいつでも。本当ですよ。すてきなレストランは大好きですからね。」
女性「すばらしいですわ。お食事にはいつもワインを注文なさいますか。」
チャルディーニ「輸入物に限りますがね。」
女性「わかりました。映画はいかがですか。よく映画を見にいらっしゃいますか。」
チャルディーニ「映画ですか。いい映画は飽きるってことがありませんね。私が特に好きなのは、洗練されていて画面の下に字幕が出るやつですよ。あなたはいかがですか。映画はお好きですか。」
女性「えぇ…まあ、好きです。さて、質問に戻りましょう。コンサートにはよく行かれますか?」
チャルディーニ「行きますとも。もちろん、だいたいはクラシックですがね。でも、質が高いポップ。グループも好きですよ。」
女性「(すばやく書き留めながら)すばらしいですわ。では、最後の質問です。劇団やバレエ団のツアー公演はいかがですか。この街にやってきたときには、ご覧になりますか。」
チャルディーニ「ああ、バレエね。あの動き、優雅さ、表現…大好きですよ。バレエが”大好きである”のところに印をつけておいてくださいね。機会があれば必ず見に行きます。」
女性「わかりました。少しの間、お答えを見直させてください。ミスター・チャルディーニ」
チャルディーニ「本当は、ドクター・チャルディーニなんですがね。ちょっと硬すぎるかな。ボブと呼んでくない?」
女性「わかりました、ボブ。ここまであなたから得た情報によれば、『クラブアメリカ』に入会なさることで年間千二百ドルも節約できますよ。少しの入会金で、あなたがおっしゃったほとんどの活動に得点が受けられます。あなたがおっしゃたあらゆるものに、私どもの会社ではとてもたくさんの割り引きがありますが、あなたのように社会で活躍なさっている方が、これを利用なさらないわけはありませんよね。」
チャルディーニ「(罠にかかった二十日鼠のように)ええ…そ、そう、そうですね。」
笑い話にも見えますが、「これはやられるわ…」という感想を持った方も多いのではないでしょうか。
チャルディーニ氏の『見栄を張りたい』という欲を利用し、『クラブアメリカに入会するべき人である』となる言葉を引き出し、後には引けない状況に追い込んでから入会を勧めています。
これだけベラベラとしゃべってしまった後に「入会はしない!」ときっぱりと断れる人はマレでしょう。
もし断ったら、魅力的な若い女性に「今までの発言は嘘だったのだ」「こいつはうそつきだ」と思われてしまうので、それは避けなければなりません。
これは、『一貫性』を悪用した一例ですが、(ここまで手の込んだものでないにせよ)似たようなことをやらかしたことがある人は多いと思います。
例えば、
- 「野球?よく見に行くよ。」と言ってしまったが為に「今後一緒に見に行こうよ」と誘われ、断りづらい。
- 「洗車は洗う事そのものが楽しいんだよ」と言ったら「じゃー俺の車も洗って」と言われて、断りづらい。
といったことはよくある事例ではないでしょうか。
軽い気持ちでしてしまった発言であっても、一貫性を保つためには肯定せざるを得ない、大きな決断を迫られることがあります。
そのような事態に遭遇した際に「これは『一貫性』のテクニックを悪用しているだけだ。肯定する必要はない。」と考え、
自分の過去の発言を裏切ることになろうとも、自分にとってメリットのある選択をするよう心掛けましょう。
まとめ:影響力の武器から身を守ろう
ここまで紹介した通り、人は『影響力の武器』によって簡単にコントロールされます。
というのも、人間の能力には限界があるため『できるだけ効率的に判断しよう』とし、
- ”ので”が付いていれば、重要な依頼なのだろう
- 一度選んだ方向を守れば大丈夫だろう
と『周りに存在している豊富な情報』を無視し、手っ取り早く答えを導き出せるようにしているためです。
よって、いかに優れた頭脳を持っている人であっても、『影響力の武器』にはやられてしまうことがあります。
多くの場合、この『影響力の武器』に流された判断は正しいのですが『悪用してくる人がいる』ということを覚えておきましょう。
おそらくあたなも
- 他人によく騙される
- 買いたくもないモノを買ってしまうことがある
- よくカモにされる
といった悩みをもっていたり、
- 他人をコントロールしたい
- 営業能力を高めたい
といった目的をもっているかと思います。
もし、そうであれば、著書『影響力の武器』は大いに役立つこと間違いなしです。
この本は、心理学の専門家からだけでなく、一般読者からも高い評価を受けている名著であるため、多くの図書館に置いてあるかと思いますので、興味を持ったのであれば、まずはそこから探してみてはいかがでしょうか。
なお、著書『影響力の武器』を読んで「紹介しよう」と思っていた内容は、この記事に書いた内容の10倍くらいはありますが、長くなってきたので断念しますw
また、機会があればどこかで紹介させてもらいます。
最後に子育て中の筆者(ひょしおんぬ)にとって、興味深い『影響力の武器』を軽く紹介させてもらいます。
『希少性』という影響力の武器は、誰もが知っている『数が少ないモノの方が価値が高く感じる』ものですが、これは2歳ごろから効果が出るようになります。
『数が少ないもの』とは『制限されるているもの』と等しいと言えるため、
親が「○○はやっちゃダメ!」というと、
子どもは「希少性のある○○は価値のあるものなんだ!!!!」と考え、
より、その○○を求めるようになります。
これが俗に言う『魔の二歳児』というやつですね。
『影響力の武器』から学んだ知識は、いたるところで活用できそうです。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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