「アメリカ以外の株式を除外するな!」的な論文があったので紹介。
Don't Neglect Investments Outside the US(英文ですが…)
ざっと要約するとこんな感じです。
- アメリカの銘柄は高値で低い収益を提供している。国際市場と比較しても、アメリカの株式市場の高値感は目立っており、その差は年々広がっている。
- 全世界の株式は相関関係にあると考えられがちだが、つねにそうとは限らない。
- 過去の経験から、市場と通貨はサイクル的に変動することがあり、アメリカ市場の支配が永続的ではないことが示唆されている。
- グローバルな株式市場への投資にはリスクもあるが、長期的な観点から見ると、多様性を取り入れることは賢明な選択であると言える。
では、少し詳しく見ていきましょう。
アメリカ株式 vs その他世界株式のリターン
まずは、アメリカ株式 vs その他世界株式の成績から。
赤線がアメリカ株式で、青線がアメリカを除く全世界株式です(どちらもモーニングスターの商品ですが、詳細は割愛)
見てわかる通り、アメリカ株式の圧勝ですね。
この要因は、
- アップル
- マイクロソフト
- アルファベット(google)
- メタ
- アマゾン
- NVIDIA
- テスラ
といったごく一部の企業が爆発的に成長したことであり、アメリカ経済全体が他国を圧倒していたわけではありません。
アメリカ以外ではテンセントやアリババといったハイテク企業が大きな成長をしましたが、中国政府の取り締まりによって足を引っ張られており、これらアメリカのハイテク企業に追従することができていません。
全世界株式におけるアメリカ株式のシェア
これによって、全世界株式におけるアメリカ株式のシェアが急激に上昇しています。
2008年時点ではアメリカ株式のシェアは40%を下回っていましたが、現在は60%近くにまで上昇しています。
『アメリカ株式』と『その他世界株式』のPER
この要因は、「アメリカの企業が成長してきた」だけではなく「アメリカ企業への期待値が実態以上に上がっている」ということが下のグラフから分かります。
これは『アメリカ株式』と『その他世界株式』のPER(株価収益率)を比較したもので、
- 以前より『アメリカ株式』は『その他世界株式』よりも高PERであった
- 昨今ではその差がさらに広がりつつある
ということが分かります。
つまり、
- アメリカ株式は期待値がかなり高い
- アメリカ株式は比較的に割高である
ということができます。
この状況は、他のデータからも説明することができます。
『アメリカ株式』と『その他世界株式』の配当利回り
その一つが下の表で、アメリカ株式の配当利回りが極端に低くなっていることが分かります。
『配当利回りが低い=株式リターンが低い』とは言えないものの、「割高かもしれない」と考える根拠の一つとはいえるでしょう。
この『高PER』『低配当利回り』は、『アメリカ企業が他国企業よりも大きく成長すれば肯定することができる』とも考えられますが、OECDによる成長率予想は以下の通りで、
- アメリカ経済の成長率が、ずば抜けて高くなると考えることは難しい
のではないでしょうか。
(世界の成長率2024年に2.7% 中国減速響く、OECD下方修正)
また、過去の実績を見て「アメリカ株式のリターンが素晴らしい!!」と賭けている人も多いかと思いますが、常にそうだったわけではありません。
アメリカ株式は常に優位ではない
例えば、2000年代最初の10年間は、『アメリカ投資家では失われた10年』と言われていますが、アメリカ以外はそうでもありませんでした。
紫線が『アメリカ株式』で青線が『その他世界株式』です。
このおよそ10年間『アメリカ株式』はほぼ横ばいとなっていますが、『その他世界株式』は大きく上昇しています。
過去を見ている限り、市場や通貨にはサイクルがあり、
- いま好調な市場が、いつまでも好調であり続けることはない
と考えたほうがよいでしょう。
『アメリカ株式』と『その他世界株式』は常に同じ方向に動くわけではない
また、「アメリカ株式は他国の株式と相関関係にあるから、あえて分散投資する必要はない」と考える投資家もいるようですが、そうとは言い切れない状況にあります。
確かに、下グラフの通りに基本的には相関関係にあるわけですが、常にそうであるわけでないことも分かります。
このデータからも
- リスクを下げるためには『アメリカ株式集中投資』は避けたほうが良い
と考えられるのではないでしょうか。
-----
といった感じで、「Don't Neglect Investments Outside the U.S. 」を紹介させてもらいました。
この論文は「アメリカ株式に投資するな」と言っているわけではなく、「分散したほうがいいんじゃないかな?」という程度の提言なので、あまり重く受け止めないほうがよいかもしれません。
また、この論文の著者は、モーニングスターのストラテジストであるダン・レフコヴィッツ(Dan Lefkovitz)の書いたものなので、いわゆるポジショントークも含まれていると理解しながら読んだほうが健全化もしれません。
しかし、それでも個人的には
「やっぱりアメリカ株式一択は止めておいたほうがいいかな~」
と再認識するに至る内容でした。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
------
あなたのクリックが本ブログの評価を決定します。以下バナーをクリック頂けると嬉しいです。よろしくお願いします^^
ツイッターでは記事の公開を通知したり、投資に関係するニュースを取り上げたりしています。よろしければフォローをお願いします!