わたし史上最高にバズった下の記事の反響や、「Nasdaq-100 Is Not an Index」という記事から、
「”インデックスファンド”と聞いて思い浮かべるものが、人によってバラバラだねぇ」
と気付きました。
そこで、『インデックスファンドの定義』なるものを調べてみることにしました。
日本と米国では定義が違う可能性もあるので、どちらも調査しています。
なお、私が理想とするインデックスファンドは、
- 時価総額加重平均で、特定の株式市場・債券市場全体の動きを表すインデックスを対象としたファンド
なわけですが、その通りの定義となっているんでしょうか。
というわけで、確認していきましょう。
日本でのインデックスファンドの定義
まず、「インデックスファンドとは」というキーワードでグーグル検索して上位に出てきた金融庁、野村証券、SMBC日興証券、三井住友銀行、マネックス証券、大和証券などを確認しました。
もっとも信頼できそうな金融庁の文言を抜粋すると、インデックスとは
特定のマーケットの動向を表す指標のこと。
市場全体の動きを数値化した株価指数や債券指数、不動産投資信託市場の動きを数値化したもの等があります。
インデックスファンドとは、
日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)等の指数をベンチマーク(基準となる指標)として、そのベンチマークに連動した運用成果を目指すファンド。
ベンチマークに基づき運用を行うため、ファンドマネジャーによる銘柄の入れ替えの頻度が少なく、運用にかかわるコストがほかの投資信託に比べて低い、といった特徴があります。
と定義されていました。
金融庁だけでなく、各サイトの共通項をまとめると、
- 特定の指数をベンチマークとし、それへの連動を目指すファンド
- 指数には、株式指数だけでなく、債券やREIT、コモディティなども含まれる
といった感じで、それに加えて野村證券、三井住友銀行、大和証券は、
- インデックスファンド=パッシブファンドである
と定義しています。
また、金融庁、三井住友銀行の2つには、
- 市場の動きを数値化した代表的な指数
という記載がありましたが、金融庁の方には『市場の動きを数値化したものなど』と、”など”が付いています。
…が、
” など ” を付けんでくれえええええええ!!
”など”がなかったら、「市場の動きを追従しないインデックスはダメ」って言えたのに…。
さて、気を取り直してまとめると(ほぼ繰り返しになりますが)
- 株式だろうとコモディティ(商品)だろうとと、インデックスに連動していたらインデックスファンドだよ!
- ただし『入れ替えの少ないパッシブファンド』のことだよ!
ということになります。
アメリカでのインデックス投資の定義
んで、ここからは米国企業(英語サイト)からの情報。
確認したのは、
SEC(米国証券取引委員会)、ici(米国投資信託業界団体)、ヴァンガード、CNBC、Forbsあたりで、信頼できるであろうSECの文言を抜粋すると、
「インデックス ファンド」は、市場インデックスの収益を追跡することを目的とした投資信託または上場投資信託の一種です。
市場指数は、株式市場または経済のセクターを表すことを目的とした有価証券 (株式や債券など) の「バスケット」のパフォーマンスを測定します。
また、SEC(米国証券取引委員会)は「インデックスファンドはどのように投資するのでしょうか?」という問いに対して、
インデックスファンドは一般的に、アクティブではなくパッシブな投資スタイルを採用してきました。
これは、証券の売買を頻繁に行わないことで、長期的に利益を最大化することを目指していることを意味します。
と回答しています。
ici(米国投資信託業界団体)は、
一般的にインデックスとは、特定の金融市場(株式、債券、コモディティ市場など)またはそのサブセットのパフォーマンスを測定するために設計された資産のポートフォリオである。
スマート・ベータ・インデックスに連動しようとするファンドは、インデックスファンドのサブセットである。
と定義しています。
つまり、米国でのインデックスファンドの定義は、
- 株式だろうとコモディティ(商品)だろうとと、インデックスに連動していたらインデックスファンドだよ!
- 一般的にはパッシブ投資だが、そうである必要はないよ!
ということになります。
日米の定義の違い
というわけで、日米で共通している点としては、
- なんらかのインデックスに連動していれば、株式であろうと債券であろうとインデックスファンドである
また、違っている点をあげると
- 日本のインデックスファンドはパッシブファンドである(アクティブファンドは含まない)
- アメリカのインデックスファンドにはアクティブファンドも含まれる
ということになります。
各社の表面上の定義を確認しただけなので「インデックスとはこうなんじゃあああ!!」と断言することはできませんが、『広くはこう定義されている』と考える分には間違っていないでしょう。
アクティブなインデックスファンドの実績
さて、そうなると気になってくるのが『アクティブなインデックスファンド』の存在です。
『アクティブなインデックスファンド』が目指す『市場を超える』という目的そのものは悪いものではなく、むしろあたり前な目的だと言えるでしょう。
しかし、以前も紹介したIndex Funds May Be Riskier Than You Think(インデックスファンドは思っているよりリスキーかも)という記事では、
- 『市場を超えようとするインデックスファンド』の、の最も多いバックテスト結果はベンチマークを1.2%上回っている
- しかし、最も多い実績は、ベンチマークを1.0%下回っている
という非常に残念な結果を紹介しています。
このデータを見ている限り、著書『敗者のゲーム』などによって語られている
- 『アクティブな投資によって市場平均を超えようとした結果、市場平均を下回ることになる』という考え方は、『アクティブなインデックスファンド』にも通用する
と考えられます。
んで、ここで気になってくるのが
- 時価総額加重平均じゃないインデックスに連動していたら、それは(日本で)インデックスファンドとして認められるのか?
という問題です(アメリカの定義では、はっきりとインデックスファンドと名乗れます)
例えば、JPX日経インデックス400は、『自己資本利益率(ROE)の高さなどを銘柄選定に使用したインデックス』で、いわゆるスマートベータというやつです。
これは、ざっくり説明すると
- 『投資先を選ぶルール』や『加重方法』をアクティブに選び
- 選んだ銘柄をパッシブに運用する(ルールを守って投資する)
といったものになり、アクティブファンドなのか、パッシブファンドなのかハッキリしません。
ちなみに、インデックスファンドの生みの親であるジョン・ボーグル氏は、著書『インデックス投資は勝者のゲーム』でスマートベータのことを
「アクティブ戦略をインデックスと呼んでいるだけである」
「これらの戦略を私は信じていない」
「今日勝てるファクターは、明日には負けるファクターとなる可能性が高い」
と述べています。
個人的にはこれに同意であり、
「日本ではスマートベータをインデックスとは呼んで欲しくないなぁ」
とは思うものの、すでに日本市場にもこういったスマートベータ指数をもちいたファンドが存在しており、これを排除することは難しいでしょう。
とはいえ、『インデックスファンドは思っているよりリスキーかも』であげられているような『残念なアクティブインデックスファンド』が大量に発生していくことがないよう祈っております。
「インデックスファンド」ってなんだっけ?
というわけで、「インデックスファンドってなんだっけ?」について調査、考察させてもらいました。
私の望む定義である、
- 特定の株式市場、債券市場全体の動きを表すインデックスを対象としたファンド
とはまったく違いましたが、
- 日本では、パッシブファンドだけがインデックスファンドである
- アメリカでは、アクティブファンドであってもインデックスファンドに含まれるものがある
ということが分かっただけでも良い勉強となりました。
繰り返しになりますが、各所が公開している『表面上の定義』を確認しただけなので、正確な定義とは言えないかもしれませんが、『広くはこう考えられている』と理解する分には十分でしょう。
日本で『インデックス投資』が紹介されるときには、『わりと無難な投資法』といったニュアンスで語られることが多いですが、
- インデックスに連動しているファンドに投資すればインデックス投資である
とすると、『かなりリスクの高い投資法』もインデックス投資に紛れ込んでしまうことになります。
そこで、ご意見頂いた
前に冗談半分で書いたことがありましたが、アクティブインデックスとパッシブインデックスとを明確に分けるべき時代が近づいてきているのかもしれません… https://t.co/zjRwghzzCt
— ニューロンズ🧙♂️ (@Singularitalian) 2023年7月22日
のようにジャンル分けをして、
「パッシブインデックスファンドの方がより無難だよ」
というアピールをしつつ、
それは無理だと思います・・・
— 眼鏡小僧 / やすひろ (@meganekozo) 2023年7月24日
最近、インデックス投信よりも「オルカン」という単語のほうが私はよく使います。
インデックス投信だと、結局何に投資してるのか?が分からないので、オルカン(eMAXISslimに限定せず、全世界に連動した指数に投資する)はいいぞーと言ってますね
のご意見の通り、
「インデックス投資は良い選択だと思うよ」
でなく、
「オルカンやS&P500に投資するのは良い選択だと思うよ」
と、市場や商品を限定した言葉を使うようにした方がいいのかもしれません。
(お二人ともご意見ありがとうございます!)
私はインデックス投資に出会ったおかげで大きな資産を作ることに成功しました。
しかし、その「インデックス投資」の対象に様々なインデックスファンドが参入し、「インデックス投資いいよ!」と言い辛くなりつつあるのは非常に残念です。
とりあえず、
「ジョン・ボーグル氏が以前より使っていた『伝統的なインデックスファンド』という単語でも使おうかなぁ。」
とも思いましたが、
「『伝統的な』ってなんやねん」
とツッコまれそうだし、ほとんどの人には説明なしに伝わらないと思うので断念しますw
というわけで、『インデックスファンド』という響きだけに騙される個人投資家が増えないことを願いつつ、この記事を終わりにします。
あー疲れた。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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------以下、「インデックスファンドとは」の各社の記述を一部抜粋-----
対象ベンチマークの指数に連動する投資成果を目指して運用(パッシブ運用)する投資信託のこと。
対象ベンチマークには日経平均株価(日本)、TOPIX(日本)、NYダウ(米国)、S&P500(米国)のような株価指数や、NOMURA-BPIのような債券指数など様々な資産の指数(インデックス)がある。
ベンチマーク(目安)となるインデックスには、日経平均株価、ダウ平均株価などの株価指数の他、債券指数、REIT(不動産投資信託)指数、コモディティ指数などがあります。
インデックスファンドとは市場全体の動きを表す代表的な指数に連動した成果を目指す投資信託です。
インデックスとは指標、ファンドとは投資信託のことで、パッシブファンドとも呼ばれます。
日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など株価や債券の指数(インデックス)に、ファンドの基準価額が連動するような運用を目指すファンドのこと。
「パッシブ・ファンド」と呼ばれることもあります。
インデックス・ファンドは、1971年にアメリカでS&P500に連動するファンドが最初に開発され、アメリカではその後、企業年金を対象として急速に普及しました。
インデックス投資とは、市場の値動きを示す指数(=インデックス)の値動きに連動をめざす投資手法です。
特定の市場ベンチマーク(人気の S&P 500 指数などの「インデックス」) のパフォーマンスを可能な限り厳密に追跡します。
ファンドが保有する株式や債券を手動で選択する代わりに、ファンドのマネージャーは、追跡するインデックス内の株式や債券のすべて (または代表的なサンプル) を購入します。
インデックスファンドとは、S&P500やナスダック100などのベンチマーク指数に連動する投資ファンドのことです。
インデックス ファンドは、S&P 500 などの金融市場指数のパフォーマンスを再現することを目的とした投資信託の一種です。
この戦略はパッシブ運用と呼ばれます。インデックス ファンドは、積極的にベンチマークを上回ろうとするのではなく、ベンチマークになることを目指します。
一般的にインデックスとは、特定の金融市場(株式、債券、コモディティ市場など)またはそのサブセットのパフォーマンスを測定するために設計された資産のポートフォリオである。
スマート・ベータ・インデックスに連動しようとするファンドは、インデックスファンドのサブセットである。