世界最大の資産運用会社である『ブラックロック』と『バンガード(ヴァンガード)』のどちらが市場に対してより強い力を持っているかご存じですか?
昨今では、日本人の投資家が増えるのに合わせて、日本の証券会社が販売する素晴らしい投資商品が増えてきました。
しかし、実績や信頼、ブランド、企業の規模などでは、
- ブラックロック(iシェアーズETFシリーズの販売元)
- バンガード(VTIやVTなどの販売元)
といった『世界を代表する運用会社』にはまったく及んでいないのが現状です。
それぞれをざっくりと説明すると、
- バンガード社は、「インデックスファンド」の生みの親で、50年以上の歴史を持つ世界最大”級”の資産運用会社。カリスマ創業者であるジョン・ボーグル氏の「顧客第一」の精神をたいせつにしている企業。
- ブラックロック社は、世界最大の資産運用会社で、圧倒的な収益を上げつづけている企業。巨大のヘッジファンド(富裕層などを相手にし、空売りなどオプションも駆使するファンド)を持っている。
となります。
この2つの企業は日本の個人投資家からも絶大の人気・信頼を得ていますが、肌感覚的にはバンガード社のほうに人気があるように思えますが、その理由はなんなのでしょうか?
この記事では、バンガードとブラックロックの『収益』や、『従業員数』、『会社の規模』などを比較しながら両社を紹介、それぞれの魅力をお伝えしていきます。
ただの雑学としても面白いネタですが、これから投資先を選ぶときの参考情報としても役に立つことは間違いないでしょう。
<目次>
ブラックロック vs バンガードの概要を比較
まずは、2021年時点の両社の概要を比べてみましょう。
バンガード | ブラックロック | |
---|---|---|
設立 | 1975年 | 1988年 |
従業員数 | 17,600人 | 16,500人 |
運用資産 | 7.1兆ドル | 9.0兆ドル |
収益 | 69.4憶ドル | 160.0憶ドル |
特長 |
世界初の個人投資家向けの |
世界最大の資産運用会社 |
どちらも歴史ある企業で、従業員数や運用資産を見ると『同じ程度の規模』となります。
しかし、収益(いわゆる『いくら儲けているか』)に関しては、ブラックロックの圧勝(バンガードの2.3倍)となっています。
これは、バンガードの創業者である故ジョン・ボーグル氏の
「個人投資家のために、リターンを最優先するファンドであれ」
「可能な限り信託報酬(個人投資家から受け取る手数料)を下げよ」
という思想による影響も大きいと考えられ、
- バンガードは、『個人投資家目線』を優先しすぎるため、利益率が低い
と言えそうです。
参考記事:【要約】航路を守れ バンガードとインデックス革命の物語 著:ジョン・ボーグル
そう考えると、
「ブラックロックは、個人投資家から手数料を多くとっているのか?」
という疑問が出てきますので、実際に売られている両社の商品(ETF)を比較していきましょう。
運用している資産総額はどれほどのものか
ちなみに、運用資産額を合わせると16.1兆ドルにもなり、NADAQ、ニューヨーク株式市場の時価総額ランキング(2022/4/25時点)と比べると、
- 2.6兆ドル:アップル
- 2.1兆ドル:マイクロソフト
- 1.5兆ドル:アマゾン
- 1.5兆ドル:グーグル
- 1.0兆ドル:テスラ
- 0.6兆ドル:エヌビディア
- 0.5兆ドル:台湾積体電路製造
- 0.5兆ドル:ユナイテッドヘルス
- 0.5兆ドル:ジョンソン&ジョンソン
- 0.4兆ドル:バークシャーハサウェイ
合計:74兆ドル
と、GAFAMやテスラ、エヌビディアなど、超大企業がまるっと買えてしまうほどのお金を持っていることが分かります。
1年間の利益はどれほどのものか
さらにさらに、利益を合わせると229.4億ドルにもなり、東証に上場している企業の時価総額と比べると、
- 308億ドル:富士通(東証35位)
- 307億ドル:キヤノン(東証37位)
- 261億ドル:NTTデータ(東証44位)
- 230億ドル:オリックス(東証48位)
- 204億ドル:第一生命(東証55位)
- 168億ドル:日産自動車(東証75位)
と、『1年間の利益だけで、オリックスや第一生命を丸っと買収できるくらい稼いでいる』ことが分かります。
『ブラックロック社やバンガード社がいかに巨大なお金を動かしているか』がよく分かりますね。
ETFの経費率を比較
というわけで、経費率(投資信託でいうところの信託報酬:毎年支払う手数料)を比較していきます。
※ものによっては連動している指数が違いますが、ご容赦ください
※最後の()内は、資産総額です。
S&P500指数に連動するETF
- バンガード :VOO:0.03%(2340.0億ドル)
- ブラックロック:IVV :0.03%(2877.8億ドル)
全世界株式に連動するETF
- バンガード :VT :0.08%(219.3億ドル)
- ブラックロック:ACWI:0.32%(169.0億ドル)
新興国株式に連動するETF
- バンガード :VWO:0.10%(835.8億ドル)
- ブラックロック:IEMG:0.11%(831.6億ドル)
とうわけで、主要なETを紹介させてもらいましたが、
- 経費率は『ほぼ同じ』か『ブラックロックの方が高い』
という状況にあります。
とくに、全世界株式連動型の差は大きく、ブラックロックの方が4倍高い経費率となっています。
連動している指数が違うので、公平な評価ではないかもしれませんが、この差は気になるところで「さすがジョン・ボーグル!バンガードは素晴らしい!」と言いたくなります。
とくに、最近の日本の個人投資家は、『全世界の株式へ分散投資する』という商品に人気が集まっており、
投資信託を知り尽くした投信ブロガーによる投票で決まる。『投信ブロガーが選ぶFound of the Year 2020』では、
- 一位:eMAXIS Slime 全世界株式(オールカントリー)
- 二位:ニッセイ外国株式インデックスファンド(先進国のみ)
- 三位:VT(バンガード・トータル・ワールド・ストック)
と、一位、三位は『全世界株式へ投資する商品』となっていたことからも、
- 日本の個人投資家にとって、より『優良な商品』を出してくれているのはバンガード
ということが分かります。
続いては、そんなバンガードについて少し紹介します。
バンガード(ヴァンガード)とは
バンガード社の誕生は1975年ですが、バンガード社の前身であるウェリントン・ファンドは1929年に誕生しており、かなり歴史のある企業であることが分かります。
なお、『バンガード』の名称は、アメリカ独立戦争・ナポレオン戦争で活躍し、イギリス海軍のネルソン提督(世界三大提督の筆頭と言われる)が載っていた軍艦『Vanguard』からとっています。
そして、前述した通り、バンガードは『コスト』を重要視しており、公式HPでは『ヴァンガードを際立たせるもの』のひとつとして、
バンガードは業界で最も低いコストで商品を提供してきました。
実際に、2020年のファンドの資産加重平均費用比率(投資家が支払った平均コスト)は0.09%でした。
これは、業界(Vanguardを除く)の平均である0.54%よりもはるかに低く、約83%もの低いコストで商品を提供しています。
この差は、年月とともに大きく広がっていくため、投資家は時間の経過とともにより多くの収入を得ることができます。
長期的な影響は驚異的です。
と、『バンガードが低コスト商品を提供していること』を強調しています。
引用部にも赤字強調していますが、
- 業界平均(バンガード除く)の手数料平均は、0.54%
- バンガードの手数料は、0.09%
というのには驚きです。
では、ライバル企業であるブラックロックも見ていきましょう。
こちらも「すごい」企業ですよ。
ブラックロックとは
ブラックロックは、1988年設立と、バンガードよりは歴史が浅いものの、
- 運用資産:9.0兆ドル
と、世界最大の資産運用会社です。
現在は、30か国に事務所をかまえ、100か国に顧客を持つ巨大企業となっています。
あまりに巨大になりすぎたことで、
- 多くの企業に多額の投資をしている(株を保有する)
こととなり、
- 兵器を製造する企業に多額の投資をしている!
- アマゾンの森林破壊をしている企業に投資している!
といった(いいがかりとも言えるような)批判を浴びることもでてきました。
また、投資信託やETFだけでなく、巨大なヘッジファンド(ベンチマークを持たず、下落相場でもリターンを狙う)部門を持っているのもブラックロックの特徴のひとつです。
なお、ブラックロックの公式HPでは、『ブラックロックの原則』のひとつとして、
私たちは、クライアントの利益を最初に考えます。
資産運用には、私たちの誠実さと、私たちがクライアントに与えるアドバイスを反映しています。
そして、『資産運用が、人々により良い未来を届けるのを助ける』という考えが、私たちのモチベーションとなっています。
と、バンガードと同じような考えを挙げています。
にしては、
- 年間収益 :160.0憶ドル
- 年間純利益: 50.0憶ドル
は、
「(バンガードにくらべて)儲けすぎじゃないかなぁ」
「もっと信託報酬、経費率を下げられるでしょ」
と筆者は思ってしまいます。
まとめ:ブラックロック と バンガードを比較してみました
といった感じで、世界最大規模のヘッドファンドを持つ『ブラックロック』『バンガード』を比較しながら紹介させてもらいました。
両社が同じ程度の規模であるからこそ、両社がしのぎを削り合い、圧倒的に安価(低い経費率)な商品が生まれているのではないかと思います。
筆者をふくむ『投資先の銘柄を選ぶことを諦めた個人投資家』にとっては、ブラックロック、バンガードのような企業が存在してくれているのは、非常にありがたいことです。
これからも両社が競い合い、すばらしい商品を生み出し続けてくれることに期待します。
出典:
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