10年前に『ブレグジット』というやつが話題になったことを覚えていますか?
当時は
「若者の未来を高齢者が奪った」
「数年後に『こんなはずじゃなかった』と言うことになる」
「感情で投票するとこうなる」
「史上最大のセルフ経済制裁」
と、バカにされていたことを記憶していますが、時ともに噂を聞く機会は減り、近ごろは『ブレグジット』という単語すら聞かなくなってしまいました。
が、
「注目されている時だけさんざん騒ぎ、その後の経過を知ろうとしないのは良くない!」
と思い、ここで確認することとしました。
さぁ、ブレグジット後のイギリスはどうなっているのか!?
GDP
まずはGDPです。
以下はゴールドマンサックスによる調査結果で、

UK—The Economic Cost of Brexit, Ten Years On
- ユーロ圏のGDPの推移
- アメリカのGDPの推移
- イギリスのGDPの推移
を、2016年Q2を100として表したグラフです。
リーマンショック後、イギリスとアメリカと似たような推移を辿ってユーロ圏より力強い成長をしていったものの、離脱してから(破線より右側)は、アメリカからは大きく突き放され、ユーロ圏からも置いていかれました。
平均GDP成長率を並べると、

と、ブレグジット前の20年間(左グラフ)のイギリスは、アメリカとユーロ圏の中間程度の成長率となっていましたが、ブレグジット後にはユーロ圏よりも劣る成長率となってしまっています。
やっぱり残念だった。
また、以下のグラフは
- ブレグジットしたせいで、どれほどのGDPを失ったか?
を、『ブレグジットしなかった仮想イギリス』を作りだしてシミュレーションした結果で、

実線はGSのシミュレーション結果、赤い点は他の機関(NIESRなど)による算出結果となっていますが、2026年時点でGDPの損失が5~10%ほどとなってなっており、『ブレグジットしなかった仮想イギリス』との差は広がり続けています。
ブレグジットして10年、いまだに下落傾向にあるイギリス。
何が落ちていったのか
というわけで、ブレグジットによってGDPが残念な結果となった可能性は高いのですが、その中身をもう少し見ていきたいと思います。
以下グラフはブレグジット後の貿易”量”の推移で、

この間、G7諸国は10-15%程度の貿易量の増加をしていてわけですが、イギリスに関してはほとんど伸びていません。
これは当たり前のことで、EU離脱により、
- 通関手続きの増加(書類・検査・税関対応)
- 関税という障壁の出現
などによってコストが高まるわけですから、イギリス以外との貿易を優先しようとするインセンティブが生まれるためです(Centre for European Reform)
さらに、こういったネガティブな状況によって企業の設備投資は以下グラフの通り鈍化しており、

現実世界のイギリスは『ブレグジットしなかった仮想イギリス(ドッペルゲンガー)』に比べて、大きく劣っていると試算されています。
それも
- イギリスで設備投資(新工場設立など)をしても、EUへ売るコストが高くつく
というあたり前の話が原因だと考えられます。
そうですよね。
増えた移民
なお、そこまでしてブレグジットを実行した理由の一つに
「移民をこれ以上受け入れたくない」
というものがありました。
EU圏内では自由な移動を制限することができず、ポーランドなどから大量の移民が流入、イギリス人の職を奪われるようなことがあったからです。
なんですけども、イギリスへの移民の推移は以下のようになっており、

ブレグジット後(2016年)からEU圏内からの移民を大幅に減少することに成功(流出超過にもなった)したものの、EU外からの移民を大量に受け入れることとなってしまいました。
というのも、
- EU圏内からの移民が減少
- 人手不足になる
- EU外から人手を確保するようになる
となったからで、しかも
- EU外からの移民は労働者よりも労働者の帯同家族の方が多かった(EU圏内だったら家族を連れてくるまでもないケースが多し)
ということで、大きな移民増となったしまったわけです(Office for National Statistics)
これで良かったんか?
やり直したいイギリス民
といった状況にあるわけですから、「EUに再加入するか?」という調査では、

再加入を望む人が増え続け、現状に満足している人が減り続けているという、残念な推移を辿っているわけです。
そりゃそうよ。
最後に
というわけで、ブレグジットから10年たったイギリスの現状を色々と見てまいりました。
冒頭であげた
「若者の未来を高齢者が奪った」
「数年後に『こんなはずじゃなかった』と言うことになる」
「感情で投票するとこうなる」
「史上最大のセルフ経済制裁」
といった言葉通りの結果と言えるかもしれませんね。
とはいえ、『ブレグジットしていなかったらもっと悲惨なイギリスになっていた』という可能性も考えられますし、中には
- ブレグジットはイギリスの貿易に悪影響を与えていない!(Institute of Economic Affairs)
と主張する機関もありますので、確かなことは言えません。
とはいえ、私はこう言いたいと思います。
「みんなの想像通りになったね」
と。
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