
このブログでは『逆張り』をモットーにしています。(『モットー』は外来語だとこの時知りましたw)
世間で株式投資が楽観視されすぎていると感じると株式下げをし、
ハイテク推しが行き過ぎていると感じればハイテク下げをし、
このブログの中でも、Aを上げる記事を書いたらAIを下げる記事を書くようにしています。
その際には、当然『それらしい人の発言している、それらしい根拠』を探してくるわけですが、『上げ』と『下げ』両方の発信を容易に見つけることができます。
『経済”学者”』のような人がが同じ環境を評価しているのにも関わらず、です。
その『人によって言うことが異なる』という事実に関しては、多くの人が把握しているとは思います。
しかし、「なぜそうなっているのか?」までしっかりと理解している人は少ないかもしれません。
そこで、
- 経済学における「研究者間のバラつき」はどこから生まれるのか(The Sources of Researcher Variation in Economics)
という論文を紹介したいと思います。
経済学における「研究者間のバラつき」はどこから生まれるのか
先に結論を書いてしまうと、
- 経済学者によって異なった対象群からデータを集めてしまうことが最大の原因だった
とされました。
この結論は「そりゃそうだ」なんですけども、お付き合いいただけると楽しんでもらえるのではないかと思います。
この研究では、
- 146の研究チームに『DACA(若年移民保護政策)がフルタイム就業確率をどれくらい変えたか?』を3回調査させた
- 1度目は、自由に調査
- 2度目は、『処置群・対照群を明確に定義』 ⇒ 年齢指定や、10年以上米国在住が対象、DID(Difference-in-Differences)の利用などの条件を設定
- 3度目は、調査に使うためのデータを指定
とし、それぞれの調査結果にどの程度のバラつきがでるかを調査しています。
結果は、政策効果推定値のIQRが
- 1度目:3.1pp
- 2度目:4.0pp
- 3度目:2.4pp(調査結果のブレが一番小さい)
となっておりました。
(とてもざっくり説明すると、IQRが10ppだったとしたら、研究チームの中で『下位25%の値を出したチームの値』と『上位25%の値を出したチームの値』の差が10%だったよ、という意味。とにかく値が小さいほどブレが小さい!以上!)
つまり、
- 1度目の自由に研究させた結果よりも、条件を指定した2度目の結果の方がバラつきが大きくなっている
- 3度目で、対象データを限定することでやっとバラつきが小さくなった。
という結果でした。
2度目の条件指定でバラつきが大きくなった
この『2度目の条件指定でバラつきが大きくなった』という結果は、直感的に理解しづらいモノですが、研究チームはその原因を
- 指定された設計を 完全に守らない研究者が一定数いたため
としています。
例えば「○○はサンプルから除外すること」という指定がされていても、サンプル数の減りすぎを懸念して『除外条件の緩和』『他のデータからサンプルを補完』などが行われ、チーム毎にバラつきが発生してしまいました。
つまり『ちゃんと研究するために、色々と工夫をした』ということであり、結果を捻じ曲げようとしたわけではなく「真剣に研究に取り組んだ結果」と言えるでしょう。
この『工夫』に研究者毎の差が存在しているため、結果としてバラつきが大きくなってしまっていました。
3度目のデータ指定でバラつきは小さくなった
データを指定する3度目では、さすがにバラつきが小さくなりました。
これを行うまで、調査対象とされる人数にすら大きなバラツキが存在しており、
- 1度目:IQR 約30万人(真ん中50%の研究チーム間でも、調査対象の人数に30万人もの差が出ていた)
- 2度目:IQR 約3万人
- 3度目:ほぼゼロ
となっていました。
当然と言えば当然ですが、
- 調査対象とするデータを限定されれば、調査結果のバラつきが小さくなる
ことが分かり、反対に
- 同じ研究テーマであっても、各自がバラバラのデータを使っているがために調査結果に大きなバラつきが出る
とも言えます。
例えば、同じデータをベースにしていたとしても
- 若者とは『25歳以上』を対象とするか『25歳超』を対象とするか
- 年齢は切り捨てか、切り上げか
- 短期労働者も含むか
- フルタイムとは週時間労働以上か
と、データの切り抜き方によって結果が異なってしまいますし、
「DACA(若年移民保護政策)の効果を調査せよ」
とだけ言われた時には、
- 就業時間を見るのか、就業率を見るのか
- 移民全体を見るのか、若年移民だけを見るのか
- どの期間を調査対象とするのか
などなど、利用するデータの種類に差異が出てしまうことがあります。
また、このバラつきは『研究者の経験によって左右されるものではない』ともされており、未熟な学者による調査が問題ではないことが分かっています。
あいまいな『問い』が多い
繰り返しになりますが、今回例として挙げた『DACA(若年移民保護政策)がフルタイム就業確率をどれくらい変えたか?』という具体的な問いでさえバラつきが見られます。
よって、
- 日本は豊かになるか?
- 景気はよくなるか?
といった
- GDP成長率、実質賃金、体感景気などの何を参照するのか
- 成長率が伸びればいいのか、他国より上になればいいのか
- 労働者にとってなのか、高齢者にとってなのか
- いつ時点がゴールなのか
などがハッキリしない問いであれば、なおさら結果はバラつきます。
それどころか、真逆の結果になってもおかしくありません。
これを参考にするのはとても難しいです。
だからといって、
「経済学者の言うことはあてにならない!参考にならん!」
と言いたいわけではありません。
結果にウソはない
むしろ
「似たような問いに対する研究結果であっても、調査方法によってまったく異なった結果となるのだから、どのような条件のもとこの結論が出ているのかを理解しなければならない」
と考えます。
世の中では、
- 若年層は豊かになったが、高齢者の生活は厳しくなった
- インフレは落ち着いたが、賃金が伸びなくなった
- 賃金は上昇したが、労働時間が伸びた
- GPDは伸びたが、格差が広がった
- 自国を守る力を手に入れたが、他国から脅威をみなされるようになった
- いまの生活はラクになったが、子ども・孫世代の生活は苦しくなった
といった、『前半部分だけ見れば成功だが、後半も含めると成功とは言えない結果』が数多く存在しています。
そして、前者を強調するのか、後者を強調するのかは、発表者によって異なりますが、いずれにしても虚偽の発言をしているわけではありません。
そこを理解しておけば、
「この研究結果ではメリットばかりが強調されているが、裏に隠れたデメリットも存在していそうだぞ」
「このデータを使って研究しているので、これが日本全体に当てはまるとは思わないぞ」
といった
- 学者の言うことを受け止めはするものの、それ”だけ”が全てではないことが理解できる
ようになります。
それができれば、様々な経済学者がバラバラなことを言っていても、
「それぞれが真実を言っているわけだが、それだけが真実ではない」
「これは気になったので、自分でも色々と調べてみよう」
と全体像を理解することにつながるのではないかと思います。
最後に
なお、この記事では
「学者の言っていることがバラバラでも、使ってるデータや見方が違うだけでデタラメを言っているわけじゃないぞ!」
ということを書きたかったわけですが、もちろん、
- 嘘をついている人
- 勉強不足で間違ったことを言っている人
もいますので、よしなに。
なお、私は前者にならないよ気を付けていますが、後者にはなっていることが往々にしてあるかと思いますので、後者であることに気づいた方は、暖かく、かつ具体的なご指摘を頂ければ大変助かります。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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