「年収7.5万ドル以上になっても幸福度は上がらない」
と聞いたことのある方は多いと思いますが、どうやらそうでもないようです。
『幸福度が上がらない』の根拠となっているのがこのグラフで、
これは、2010年に(みんな大好きな)行動経済学者ダニエル・カーネマン氏と経済学者アンガス・ディートン氏が行った研究結果(2010年時点なので、インフレを考慮すると現在では9万ドルが上限)で、いまだにこれを聞く機会は多いです。(High income improves evaluation of life but not emotional well-being)
んだが、2023年には(みんな大好き)ダニエル・カーネマン氏を含むチームが、
- 少なくとも、年収50万ドル(およそ7500万円)までは、年収とともに幸福度があがっていく
と改めて発表しました。(Experienced well-being rises with income, even above $75,000 per year)
その結果がこれ。
年収48万ドルを超えても
- Experienced well-being:日々の経験からくる幸福感(赤線)
- Life Satisfaction:人生への満足度(青線)
が増え続けていますね。
感情だけをみても、
ポジティブな感情(自信がある、気分が良い、刺激がある、興味深い、誇らしい)は収入とともに増えていき、
ネガティブな感情(怖い、怒っている、気分が悪い、退屈、悲しい、ストレス、動揺)は収入とともに減っていく。
という結果となりました。
どうして結果が大きく変わったのか?
今回の調査も、前回の「年収7.5万ドル以上になっても幸福度は上がらない」という調査も、ダニエル・カーネマンが入っているわけですが、結果が大きく変わりました。
その要因は様々ありますが、
- 前回は「○○の時、あなたは幸福でしたか?」という『過去』への問いだったが、今回はスマホを利用して「いま、あなたは幸福ですか?」という『リアルタイム』の問いになった
- 前回は問いへの回答が「幸せ or 不幸せ」の2択だったが、今回は「幸せレベルは何点か?」と、より細かく採点するようになった
の2点が大きいのだと考えられています。
2010年の論文では、
- 年収7.5万ドルを超えると、主だったニーズを満足させることができるようになり、より幸福にはなりづらい
と推測されていたわけですが、今回の調査では
- 7.5万ドルを超えていれば「幸せ」にはなれるものの、それ以上に収入を増やすことで「”より”幸せ」になれることが分かった
ということになります。
何をもって幸せを感じられるのか?
なお、『幸せ』と『自分の人生のコントロール感』には強い相関関係があることが分かっています。
その理由は
- 収入が増えることで、経済的な自由が手に入り、選択肢が増え、自分の意思を通しやすくなる
ことだと考えられています。
「お金があれば、ある程度の時間を買うことができる」という面もあるわけですが、実際には
- 収入が多い人ほど「時間が足りない」という感覚が強い『時間貧困』に陥っている
ことが分かっています。
時間貧困は小さいながらも幸福度にマイナスの影響を及ぼすものであるため、この『時間貧困』にどう向き合っていくかが『収入を増やしつつ幸福感を落とさない』ために重要となります。
お金さえあれば幸せになれるか?
「お金は人生にとってどれだけ重要か?」という、定番ではあるものの簡単には答えのでない問いが存在していますが、これに関しても今回の調査で明らかになりました。
具体的には、
- 低所得者は「お金は重要でない」と考えるグループの方が幸福である。
- 高所得者は「お金は重要である」と考えるグループの方が幸福である。
との結果になりました。
この結果は、
- お金そのものは重要ではなく、マインドセットが重要である
と受け取ることもできますし、
- ないものねだりは不幸を招くが、持っているものを重要視すれば幸せになれる
とも言えるでしょう。
つまり「現状を都合よく解釈しろ」ってことですw
足るを知る
この結果からは、『足るを知る』が重要であることが分かります。
仮に多くの収入を手に入れることができたとて、
- 「もっともっと娯楽を…!」と、さらなる快楽を求め
- それを実現するためのお金を得るために、長時間仕事をして
- 『時間貧困』におちいってしまい、いつまでも幸せになれない
となってしまっては元も子もありません。
『何かを手に入れるために幸せを犠牲にしない』ためには、『いかにして現状に満足するか』も大切です。
収入が増えればそれに越したことはありませんが、収入を増やすことができなかったとしても、『お金ではない大切なもの』に目を向けることで幸せが手に入る傾向にあると分かりました。
とはいえ、今回の調査では『収入が多ければ多いほどに幸福感は増す』ことが示唆されているため、
「時間をかけずに収入をガンガン増やせば幸せになれるってわけね」
と、「そりゃそーよw」と突っ込まざるを得ない結果でもありました。
この『年収7.5万ドルで幸せの上限がくるわけではない』という結論は、多くの人が「ですよねー」と反応するような納得の結論だったのではないでしょうか。
とはいえ、繰り返しになりますが、幸福に影響を与える要素は多岐にわたるため、『収入さえ多ければ幸せなのだ』になるわけではありません。
『収入が増えていけば幸福度も増していく』は、あくまでも一般論であることを理解し、自分にあった「収入」・「幸せ」のバランスを追求していく必要がありそうですね。
というわけで、読者のみなさまにおかれましては
- 年収7.5万ドルにとらわれることなく、無理のない範囲で収入増を目指すべし。
と、数か月後にセミリタイアする私からお伝えしたいと思います。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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