自民党の総裁選に向けて『解雇規制の緩和』にも注目があつまっていますね。
個人的には「経済成長のためにはやらざるを得ない」とは思うものの、「不幸になる人もいるんだろうなぁ」とも思います。
『解雇規制の緩和』が話題となっているのは、現状は
- 企業は簡単に人を解雇できない。よって企業が人を採用する時には慎重にならざるをえない。
- これによって人材の流動性が悪くなり、非効率な企業でにも人がとどまってしまう。
- これが日本全体の経済成長を阻害している。
というわけで、雇用規制の緩和をすることで、
- (これまでに比べ)人を簡単に解雇できるようになるため、採用も気軽にできるようになる。
- 高給を求めて人々が転職できるようになり、(高給を支払える力のある)生産性の高い企業に人が集まる。また、そうでない企業は淘汰される。
- これにより経済成長が期待できる。
といった変化が期待されているからです。
これは、
- 努力しても報われない(報酬への影響が小さい)から頑張らない
- 頑張らなくても解雇されないから働かない
という人々にプレッシャーを与える(頑張らないと解雇されるかもしれない)ことにもつながりますので、『転職してでも収入を上げたい人』を応援するだけではなく、『頑張らずに現状維持したい』という人々に努力させる動機を与えることにもなります。
これによって、転職する人・しない人のどちらの生産性もアップさせることが期待できます。
良いこと尽くめにように見えますね。
実際に、転職することで高給が期待できる人々にとっては良い世界となりそうです。
しかし、
高給を期待しない人々に対しても「成果を出さなければ解雇されるかもしれない…」という不安を武器に「その不安を払拭したいのなら頑張れ!」と押し付けるのは良い社会なのでしょうか?
有名なマズローの欲求階層説によると、もっとも低次な欲求として『生理的欲求』『安全欲求』が定義されています。
マズローの欲求階層説 | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)
『いつか解雇されるかもしれない』という状況は、この低次2欲求が満たされていない状況になりかねず、これより上の『親和欲求』『商品欲求』『自己実現』に目が向かなくなってしまうことになります。
つまり、
- 『解雇規制の緩和』によって、ひたすら低次の欲求を満たすためだけに働き続ける人が生まれるかもしれない
と考えられます。
さらに『解雇』は、成果を出さない人だけがターゲットになるわけではなく、『経済が悪化した』という個人ではどうしようもない事態によって発生することもあります。
リーマンショック後の失業率を見ると、日本より解雇が容易なアメリカ(水色線)では急激に失業率が上昇していますし、
新型コロナウィルスによるパンデミック時のアメリカ(太灰色線)は、それを超える失業率となっていました。
その点『解雇しづらい日本』は、失業率の変化がマイルドであったため
「今後、我が家はどうなってしまうんだろうか…?」
と不安にさいなまれる人々が少なかったのではないかと想像できます。
これを見ていると、少なくともイチ労働者である私としては、「アメリカのように解雇されやすい社会はいやだなぁ」と感じます。
とくに、私はすでに『不安』を武器に働いているタイプ(失敗を恐れるからこそ精度の高いアウトプットを出せる)であるため、これ以上の不安を与えられたら耐えられないかもしれません。
そして、同様のタイプの方はそれほど少なくないでしょう。
----
とはいえ、この『”簡単には解雇できない”が日本経済の足をひっぱっている』には同意で、経済成長のためには『解雇規制の緩和』が良い戦略となるであろうとも思います。
よって、
- 基本的には、「神の見えざる手」があるのだからどんどん規制緩和をしていき、各人が好き勝手にできるようにするべし!
- それによって経済をガンガン成長させよう!
としつつも、
- その世界にマッチできなかった人は、国がしっかり救っていくので不安にならなくていいよ!
というサポート体制を整えることが大切なんだろうと思います。
(または「経済成長なんてイラネ」「少しずつ衰退すればいいじゃん」と開き直ってしまう手もあると思っていて、個人的にはこれが好きですが、色々と問題を引き起こす恐れがありそうですね…)
というわけで、
「解雇規制の緩和で経済成長を狙うのもいいけど、その世界から取り残される人々のことも忘れないでね!」
という記事を、近々労働市場から退場予定のスパコンSEがお送りいたしました。
「解雇規制が緩和されたぞおおおおおお!」という時代には、高みの見物ができるポジションでありたいものです。
「人がゴミのようですね( ━●_ゝ●)」
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
------
あなたのクリックが本ブログの評価を決定します。以下バナーをクリック頂けると嬉しいです。よろしくお願いします^^
ツイッターでは記事の公開を通知したり、投資に関係するニュースを取り上げたりしています。よろしければフォローをお願いします!