インデックス投資家に愛用されている投資信託・ETFの多くは、『時価総額加重平均』が採用されています。
多くの人はこれを意識することなく利用しているかと思いますが、「他にもっといい選択肢はないんかいな?」ということで考察してみることにしました。
<目次>
時価総額加重平均とは
まずは、時価総額加重平均についてのおさらいです。
S&P500の時価総額加重平均に投資しているのであれば、投資比率が
といった感じで
- 時価総額加重平均では、時価総額が大きい企業ほど保有割合が高くなる
ことになります。
S&P500でもっとも巨大なApple社への投資比率は6.6%になるのに対して、
S&P500でもっとも小さい名柄(例えば21世紀フォックス-B)への投資比率は0.01%にしかなりません。
よって、『時価総額加重平均』でS&P500へ投資しているケースでは
- 構成比率の大きいApple社などの値動きの影響は大きい
- 構成比率の小さい21世紀フォックス-Bなどの値動きの影響は小さい
ということになります。
これによって、
- メリット:『時価総額が小さい企業=比較的に値動きが安定しない』の影響を受けづらい
- デメリット:『実体以上に株価が暴騰している企業』を多く保有することになる
といった特徴があります。
例えば、
- 『時価総額加重平均』で投資をしていた場合、構成比率の大きいテスラが暴落(2022年に65%下落)したダメージはそれなりに大きくかった
ということになります。
また、一般的には
- 時価総額の小さい企業 = 業績が安定していない = 株価も安定していない
と考えられますので、『基準価格の推移がマイルドになる』という特徴もあります。
そして、『時価総額加重平均』とは違って
- 全銘柄を同じ比率で保有する『均等加重平均』という考え方
も存在しています。
均等加重平均とは
『均等加重平均』はその名の通り、投資比率が
といった感じで、
- 均等加重平均では、すべての銘柄を同じ比率で保有する
ことになります。
つまり、S&P500であれば、Appleであろと21世紀フォックス-Bであろうと0.2%ずつ保有することになるわけです。
均等加重平均のメリットデメリットは、時価総額加重平均の反対になります。
メリットが得られる具体的なケースの一つには
- 株価が高い銘柄の投資比率がおさえられ、株価が低い銘柄の投資比率が高まり、投資の鉄則ともいえる『安値を買う』が自然と採用される
といったものがあります。
2022年のテスラの暴落に関しても、
- テスラの投資比率は0.2%しかなかったため、テスラが65%の暴落をしても全体からしたら微々たる下落でしかない
ということになります。
また、
- 『時価総額の小さい企業 = 業績が安定していない = 株価も安定していない』が正しいとしても、『リターンが劣る』とは限らない
とも考えられます。
小さい企業ほど株価の値動きは大きくなりがちで、それどころか破綻してしまうケースも多いでしょう。
しかし、『小さい企業が急成長し、投資家に大きなリターンをもたらす』なんてこともよくあります。
つまり、
- 比較的にちいさめの企業への投資割合が高くなる均等加重平均は、値動きが大きくなりがちではあるものの、大きなリターンをもたらすこともある
ということになります。
反対にデメリットと言えるケースの一つとしては、
- 『ギリギリ上場できているが、いつ消滅してもおかしくない小さな企業』と『長年にわたって安定した事業を続けており、経営が盤石な大企業』のどちらが破綻したとしても、同じダメージを受ける
といったものがあります。
んで、
「それぞれにメリット・デメリットがあるのは分かったけども、どっちが儲かってるの?」
という疑問が沸いてきたので、実績を確認してみます。
時価総額加重平均と均等加重平均を比較
比較対象は、
- SPY(SPDR S&P500 ETF)
- RSP(Invesco S&P 500 Equal Weight ETF)
の二つです。
なお、経費率が『SPY:0.09%』『RSP:0.20%』と、均等加重平均であるRSPの方が不利(リターンが小さくなりがち)となっています。
時価総額加重平均と均等加重平均の直近1年を比較
まずは直近1年の実績を並べてみます。
※2022年1月3日時点を100ポイントに統一
結果は、
- SPY(時価総額加重):82.8ポイント
- RSP(均等加重) :91.0ポイント
と結構な差をつけてRSP(均等加重)がリードしています。
これは2022年にテスラやメタ、アマゾンといったかなりの時価総額をほこっている銘柄が、のきなみ下落したからで、想定通り
- 時価総額加重は『期待が集まることで株価が暴騰していた銘柄』の下落に弱い
ということが改めて分かりました。
ただ、この状況だけを切り取るのは不公平なので、RSPがリリースされた2003年5月からの全期間で比較してみましょう。
時価総額加重平均と均等加重平均の直近20年を比較
結果は、
- SPY(時価総額加重):424.3ポイント
- RSP(均等加重) :570.5ポイント
となり、こちらでもRSP(均等加重)が結構な差をつけてリードしている結果となりました。
比較するまでは、
「経費率の高いRSPは、長期間になればなるほどイマイチになっていくだんだろうな~」
と想像していただけにオドロキです。
さて、この結果を考察する前に『時価総額加重平均が有利であろう期間』の比較結果も見てみましょう。
時価総額加重平均と均等加重平均の『2021年までの10年間』を比較
対象の期間は『2021年までの10年間』で、
- GAFAのような巨大企業が、株価をガンガンあげていった期間
- かつ、2022年の暴落を除く
という『時価総額加重平均にとって有利で働くだろう期間』を選択しています。
結果は、
- SPY(時価総額加重):373.8ポイント
- RSP(均等加重) :340.6ポイント
と、ついにSPY(時価総額加重)がリードする結果となりました!
さすがにこの期間では時価総額加重が有利なようですね。
ちなみに、SPYが大きく伸びてくる2020年より過去のデータだけを切り取ると、
と、競り合った推移となっており、『○○のほうが有利である』と言うことはできません。
というわけで、
- 全期間(直近20年)のデータを利用した比較では『均等加重平均が有利』ということになりましたが、これはただの偶然である可能性もある
と理解しておいた方が良いでしょう。
時価総額加重平均と均等加重平均の有利な期間について考察
というわけで、結果をまとめると
- 直近1年間(大企業の暴落)では、均等加重平均のリターンが優れていた
- 大企業が伸びている期間(2011年~2021年)では、時価総額加重平均のリターンが優れていた
- 直近20年(RSPの全期間)では、均等加重平均のリターンが優れていた
という結果になりました。
一般的な考え方としては
- 時価総額の大きい企業 = 業績が安定している = 株価も安定している
- 時価総額の小さい企業 = 業績が安定していない = 株価も安定していない
と考えられていますので、時価総額加重の方が安定したリターンをもたらす、というイメージが強いです。
しかし、常にそう言えるわけではありません。
例えば、
- 時価総額の大きい企業 = バブルで株価が暴騰しているだけの企業ばかり=株価が安定しない
なんていう状況にあれば、時価総額加重のリターンは悲惨なものとなる、という結果になるでしょう。
これを私なりに言い方を変えると、
- 世の中にいる投資家が『賢明な投資家』ばかりであれば、バブルが発生するようなことはなく、時価総額加重のリターンは安定したものとなる
- 世の中にいる投資家が『ブームに流される投資家』ばかりであれば、バブルが発生し、時価総額加重のリターンは悲惨なものとなる
なんて感じになります。
そして、少なくとも『過去20年間』『直近1年間』の期間においては、
「『ブームに流される投資家』が優勢だったのかな~?」
なんていう感想を持ってしまいました。
今後どちらが優勢な時代となるのかは分かりませんが、個人的には「均等加重平均の方が魅力的だなぁ…」と思います。
しかし、現時点では『まともな均等加重平均の投資信託』が存在していない(探せていない)ので、今後そういった商品が登場することに期待したいと思います。
(いい投信があったら教えてください!!)
なお、『銘柄の均等加重平均』ではないものの『地域の均等加重平均』を実装している投資信託はあるので、よければ見ていってください。
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