非常に興味深いColumn: Stocks are cheap, but still not cheap enough vs bonds | Reutersというコラムがあったので紹介、考察していきます。
ざっとまとめると、
- 株価が下落して株式が魅力的に見えるけども、債券の方がもっと割安で魅力的なんじゃないの?
という内容となっています。
『株式』と『債券』はどちらも伝統的な投資先で、片方にお金が集まれば、もう片方からお金が逃げていくことになります。
よって、『株式』だけでなく『債券』の現状を理解することは、今後の株価を予想するうえでも重要です。
「株のことは何となく分かっているんだけど、債券はよく分からないんだよね~」という人も多いと思いますので、この記事から色々と学んでいっていただければと思います。
<目次>
債券は、対株式で考えると過去10年間でもっとも割安にある
コラムでは、
様々な著名な投資家が「債券は、少なくとも過去 10 年間で株式に比べて最も競争力がある」と述べている
と紹介しています。
その根拠の一つ目がこれ。
S&P500とアメリカのハイ・イールド債のリターン比較
黄色線は『アメリカのハイ・イールド債(リスクが高めだけど、リターンも高い債券)のリターン(%)』。
赤色線は『S&P500の株式益回り』。
これ(株式益回り)はPER(株価収益率)の逆数で、
- 投資したお金に対して、企業はどれくらい利益が上げられるのか?
- 直近の『6.5』という数値は、今年の『期待リターンは6.5%』と考えられる(超ざっくり言うとですが)
を指しています。
で、どちらも2022年に急上昇しているわけですが、ハイ・イールド債(黄色線)の方がより上昇しており、株式益回り(赤色線)との差がかなり大きくなっています。
このグラフからは、
- 『ハイ・イールド債』も『株式』も、値下がりによって期待リターンが大きくなってきたんだけども、『ハイ・イールド債』の方がより魅力的になってきているよ
と読み解くことができます。
とはいえ、あくまでも『ハイリスクな債権と株式の比較』であり、
「ハイ・イールド債のリターンが高いのなんか、あたり前じゃないの」
というツッコミがあるかもしれません。
というわけで、続いてはこれ。
S&P500とアメリカの10年国債のリターン比較
青色線は『アメリカの10年国債のリターン(%)』。
黄色線は『S&P500の株式益回り』。
国債は『ローリスク・ローリターン』、株式は『ハイリスク・ハイリターン』なので、『S&P500の株式益回りの方が期待リターンが高い』のは当たり前なのですが、直近ではその差が縮まりつつあります。
その『差』の推移がこれ。
(縦軸が狭いグラフだったので、縦に引き伸ばしています)
見て分かる通り
- 『国債利回りと株式益回りの差』が2008年以来、もっとも小さくなっている
ことが分かります。
これは
- 『リスクを取ってリターンを期待する株式』と『低リスクでリターンをえられる国債』のリターン差が小さくなっている
- よって、「リスクを取ってまで株式を買わなくても、国債でいいんじゃないの?」と考える人が増える
という状況を指しています。
つまり、
- この指標においては、2008年以来もっとも国債が魅力的な状況にある
ということが言えます。
仮にこの傾向がつづいていき、『国債利回り』と『株式益回り』が同じ7%になったとすると、
『リスクはあるけど7%のリターンが期待できる株式』と『リスクがないのに7%のリターンが期待できる国債』が同時に存在することになり、誰もが
「リターンが同じならリスクのない国債を買うわ」
となることが想像できます。
そこまで至らなかったとしても、リターンの差が小さくなればなるほどに『株式を買う人』は減っていくでしょう。
続いてはこれ。
S&P500の配当利回りとアメリカの10年国債のリターン比較
青色線は『アメリカの10年国債のリターン(%)』。
黄色線は『S&P500の配当利回り』。
ざっくりと言い換えると、
- 変動の激しい『株価』をのぞいたら、株式と国債はどれくらい儲かるの?を示したグラフ
のようなものです。
見て分かる通り、2009年前後からはどちらも似たような値となっていましたが、直近では「国債の方がむっちゃリターンが高いじゃん!」と言える状況となっています。
2022年の株価の下落によって『S&P500の配当利回り』も上昇傾向にはあるものの、『アメリカの10年国債のリターン(%)』の上昇には遠くおよびません。
2020年10月末時点で、
- アメリカの10年国債のリターン:4.23%
- S&P500の配当利回り:1.75%
とその差は『2.48%』となっており、2007年以来最大の差となっています。
つまり、
- この指標においては、2007年以来もっとも国債が魅力的な状況にある
ということが言えます。
配当利回りだけの比較よりも、『株式益回り』を使った上の比較のほうが現実的な比較ですが、どちらを見ても
- 国債がここ十数年来でもっとも魅力的になっている
という結果が見て取れます。
「株価が割安になってきたけど、もっと割安な投資先があるよ」
上のグラフの通り、S&P500のPER(株価収益率)は急激に下落し、
「いまこそ株式を買うチャンスだ!!」
と考えている投資家は多いでしょう。
しかし、
- 株式が魅力的になってきたけど、国債はもっと魅力的になってきた
という事実を見逃してはなりません。
また、ここ数日は株価が急騰して、株価の魅力が減少、国債の魅力が相対的に上昇しています。
市場をウロウロしている『お金』は「良い投資先はないか~?」とつねに探しまわっており、その監視対象は株式だけではありません。
よって、
「株式なんかよりも、債券の方が魅力的だ!」
「株式を売って、債券に乗り換えよう!」
という投資家が増えれば、すでに割安になっている株式が、もっと値を下げることになります。
そのことを意識せず、
「株価が下がったから、株を買おうかな~」
と、ひとつの情報だけに意識をむけないよう注意する必要がありそうです。
積立インデックス投資家がすべきこと
…というのが一般的な考え方ではあるものの、私にはまったくもって関係のない話でございます。
というのも、株価がこれからもっと下げようとも、反対に上げようとも、『給料を手に入れたら株式を買う』という行動に変わりはないためです。
このままの流れでいくと『国債が株式のリターンを上回る』なんて事態になることもあるかもしれません。
しかし、その事態が長期間にわたって続くとは考えづらいです。
というのも
- 国債が人気になればなるほど(株価が下がれば下がるほど)、株式の益回り≒株式の期待リターンが上昇していく
ためです。
そして、ジェレミー・シーゲル氏の調査によって
- 過去実績から、長期にわたる『株式のリターン』が『債券のリターン』を大きく上回る
という事実が判明しています。
(著書:株式投資より)
よって、たとえ国債がどれだけ魅力的に見えようとも、これからも臆することなくタンタンと株式への投資を続けていくことが、積立インデックス投資家が取るべき行動だと言えるでしょう。
投資との付き合いは死ぬま続き、数十年以上をともに過ごさねばなりません。
その長い付き合いになるパートナーの評価を『短期間のちょっとした変化』によって変えていては、落ち着いて付き合うコトなどできません。
よって、パートナーが不調に陥っていようとも、
「まぁ、調子の悪い時もあるよね」
「それで、他のヒトが魅力的に見えちゃうときもあるよね」
「でも、生涯をともにするパートナーはキミ以外考えられない」
と、『生涯』の物差しで考えることが重要なのではないかと、私は思います。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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