ブルームバーグ(Bloomberg L.P.)は、2万人の従業員をかかえ、金融市場のさまざまな情報をリアルタイムで提供する『ブルームバーグターミナル』が収益の85%占めている、金融・ソフトウェア・メディア企業。
ロイター(Reuters)は、2500人の従業員をかかえ、1851年に創業した老舗企業であり、『中立な報道』をポリシーとして世界中の信頼を得ている世界最大級のメディア企業。同業であるトムソン社に2008年に買収されてできたトムソン・ロイター社の子会社。
どちらも、『メディア』という認識だった方と多いかと思いますが、ブルームバーグの収益の85%がブルームバーグターミナル(詳しくは後述)であったことに驚いた方も多いのではないでしょうか。
投資をするためには、様々なメディアからの情報収集が欠かせませんが、『このメディアは、どんなメディアなのか?』を知っておくことも重要です。
具体的には、
- 特定の思想を持っていないか?
- 誤報を繰り返していないか
- 情報源は何なのか?
といったことが重要で、これらを無視して、流れてきた情報をそのまま鵜呑みにしてしまうと、投資のリターンを押し下げるような行動を取りかねません。
そこで、この記事では、ブルームバーグとロイターを比較、違いを見ていきつつ、両社の特徴をとらえ、両社の情報をどのように活用すればいいのか、を理解するべく進めていきたいと思います。
<目次>
ブルームバーグとロイターの違いは?【比較】
まずは両社の基本情報を見ていきましょう。
ブルームバーグ(Bloomberg L.P.)の基本情報
- 創業:1981年
- 従業員数:20,000名
- 本社:ニューヨーク 731レキシントンアベニュー(通称ブルームバーグタワー)
- 収益:100億ドル(2019年実績)
- 創業者:マイケル・ブルームバーグ、トーマス・セクンダ、ダンカン・マクミラン、チャールズ・ゼガー
- 金融市場にまつわるプロ向けの情報を提供する事業がメイン。
- 約180か所の拠点を世界中に持つ
- 非公開株式会社で、であるマイケル・ブルームバーグ氏が88%所有する
- 誤報や非白人への差別、セクハラなど、問題が目に付くことが多い
ロイター(Reuters)の基本情報
- 創業:1851年(創業170年以上!)
- 従業員数:2,500名(トムソン・ロイターは24,400名)
- 本社:ロンドン シティオブロンドン
- 収益:63.5億ドル(2021年のトムソン・ロイター実績)
- 創業者:ポール・ジュリアス・ロイター
- 世界中にある様々な情報を発信する事業がメイン。
- 約200か所の拠点を世界中に持つ
- 『中立的報道』をポリシーとしている(一方的に『こちらが悪』と決めつけないよう『テロ』という言葉を使わないようにしているほど。そのポリシーのせいでかなり叩かれてますけどね…。)
なんとなくブルームバーグとロイターの違いが見えてきましたね。
適切な表現ではないかもしれませんが、
- 金融業界でイケイケドンドンなブルームバーグ
- どっしりと根を張って中立な報道をするロイター
みたいなイメージでしょうか。
では、それぞれをもう少し詳しく見ていきましょう。
ブルームバーグ(Bloomberg L.P.)とは
ブルームバーグは『メディア』と思われていることが多いですが、先にも書いた通り『ブルームバーグターミナル』をメインの収入源としている企業です。
ブルームバーグターミナルとは
ブルームバーグターミナルとは、プロ投資家や企業、政界など様々な業界の専門家に資本市場の情報をリアルタイムに提供するシステムです。
ブルームバーグターミナルのユーザは、提供された情報をもとに監視や企業分析を行い、迅速に取引を行うことができるようになり、
ほとんどの大手金融機関は、ブルームバーグターミナルを利用していると言われており、ユーザあたり22,500ドル(約300万円)/年で利用できます。
このブルームバーグターミナルを作ったのが創業者であるマイケル・ブルームバーグです。
マイケル・ブルームバーグは、元々ソロモンブラザーズでシステムの開発部門を率いていましたが、1981年にソロモンブラザーズが買収されたタイミングで解雇されたため、自身で会社をおこして『高品質な情報を提供することで料金を得るシステム』を開発しました。
ブルームバーグターミナルは高く評価され、最初の顧客であるメリルリンチが『5年間は、このシステムを他社へ提供しないように』という制限つきで、同社の株式購入とともに契約しました。
ブルームバーグは、『少しでも素早く取引が行えるよう』ブルームバーグターミナル用のキーボードを作っており、『リアルタイムな取引』に大きな需要があったことが分かります。
ブルームバーグターミナル以外の事業
ブルームバーグニュース
Bloomberg.comなどを通じて、ニュースを配信。
ほとんどの方がイメージしているブルームバーグは、この事業によるものでしょう。
ブルームバーグテレビ
24時間報道しつづける有料のビジネス報道チャンネルです。
およそ2億世帯で報道されています。
『ブルームバーグジャパン』という日本向けのチャンネルもありましたが、2009年に終了しています。
ブルームバーグマーケッツ
金融のプロ向けの月刊誌。
147か国で購読されています。
ブルームバーグベータ
スタートアップへの投資会社。
人工知能など、先進技術を主なターゲットとして投資する投資会社です。
買収によって巨大化
ブルームバーグはこれら複数の事業を持つにあたり、様々な企業を買収してきました。
代表的な買収には、
- 1992年:ニューヨークののラジオ局WNEW
- 2009年:週刊ビジネスマガジンBusinessWeek
- 2009年:エネルギー市場のデータ収集にを得意とするNewEnergyFinance
- 2011年:専門家向けの法律、税制、規制を得意とするBureau of National Affairs
- 2012年:ソフトウェア開発会社のPolarLake
- 2015年:市場のインデックスを提供するBRAIS(バークレイズ・リスク・アナリティクス・アンド・インデックス・ソリューションズ・リミテッド)
- 2019年:都市のイノベーションを得意とする出版社CityLab
などがあります。
ちなみに、買収された企業は『○○ブルームバーグ』のように改名し、インデックスに関しても『ブルームバーグ債券インデックス』といった名前に変更しています。
(自分の名前を入れていくという、日本人には理解しがたい行為ですねw)
ちなみに、創業当初はマイケル・ブルームバーグが最高責任者を務めていましたが、2001年にNY市長選に出馬するためレックス・フェンウィックに交代、2014年からは再びマイケル・ブルームバーグが最高責任者となっています。
ロイター(Reuters)とは
ブルームバーグとは違って、ロイターはイメージ通りに『メディア』を主な事業としている企業です。
ロイターの歴史
ロイターの歴史は古く、1851年にポール・ロイターがロンドンで通信社を立ち上げたのが始まりです。
世界中に多くのスタッフを持ち、国際ニュースを誰よりも早く仕入れる能力が買われていました(今のようにインターネットはないんで…)
例えば、
- エイブラハム・リンカーン暗殺
- ヒトラーがベルナドッテ伯爵を通して西側の同盟国と交渉しようとした
- ベルリンの壁の崩壊
といったニュースをもっとも早く報道したメディアとなりました。
(リンカーン暗殺は、ヨーロッパで最速)
また、1923年からラジオを使ったニュース報道を開始。
当時ではまだ珍しい試みでした。
1945年には、すでに世界有数のメディアにまで成長し、ほとんどの国にサービスを提供し、数千もの新聞社を顧客としていました。
2002年時点では、世界中のニュースは、ロイター・AP通信・AFPの3社が発信元だと評価されていました(ブリタニカ国際大百科事典より)
2008年には、世界最大級の情報企業であるトムソンコーポレーションに買収され、トムソン・ロイター社となりました。
ロイターの『信頼の原則』
ロイターは、1941年から
- 「信頼の原則 (Trust Principles)」を支持し、情報やニュースの収集・配信における独立性、高潔性、偏見からの自由を守るために、日々努力を重ねる
というポリシーを掲げています。
具体的には、
- いかなるときも、特定の勢力、グループ、派閥に支配されない。
- 高潔性、独立性、偏見からの自由は、常に完全に維持されるものとする。
- 新聞社、通信社、放送局およびその他のメディア顧客に対し、ならびに企業、政府、機関、個人およびその他トムソン・ロイターと契約を締結しているか、締結する可能性のあるものに対し、偏見のない信頼性のあるニュースを提供するものとする。
- 報道機関の利益のみならず、サービス提供先である多くの利害関係者を配慮するものとする。
- 国際的なニュースおよび情報ビジネスにおける主導的な立場を維持するために、ニュースその他のサービスおよび製品の拡大、開発および改良について努力を惜しまないものとする。
という5つの原則を掲げています。
この原則を守っていることがもっとも分かりやすい例が、『テロリストという言葉を使わない』という慣例です、
これは、911(ワールドトレードセンターへのハイジャック機衝突)の時でさえ守られ、『アメリカは被害者』『アルカイダはテロリスト』とすることなく、中立の立場から報道をつづけました。
もちろん、この中立性によって批判が集中しましたが、いまだこの原則を守り続けています。
こんな気骨のあるメディアはそうそうないでしょう。
信頼できる正確な情報をスピーディに入手するための犠牲
ロイターは『世界中から信頼できる正確な情報をスピーディに入手する』ために、世界の200か所にジャーナリストを送り込んでいます。
しかし、それによって多くのジャーナリストが犠牲になっています。
日本人ジャーナリストの村本博之さんもその一人で、2010年4月におこなっていたタイの反政府活動の取材の際に、胸を撃たれ死亡しました。
他にも、13人(wikipediaより)のジャーナリストが(ほとんど中東で)亡くなっています。
仮に、取材によって死亡したジャーナリストが日本の企業所属であれば、『もう2度と、危険な地域へジャーナリストを派遣しない』と判断するところでしょうが、
ロイターは、『世界中から信頼できる正確な情報をスピーディに入手する』を実現するために、ジャーナリストの派遣を続けています。
まとめ:ブルームバーグとロイターの違いを紹介させてもらいました
といった感じで、ざっくりとブルームバーグとロイターを比較しながら違いを紹介させてもらいました。
個人的な意見ですが、
- ブルームバーグは、金融市場に特化しており、最新の情報を素早く入手・公開できる力があるが、稀に行き過ぎることのある企業
- ロイターは、世界中から信頼できる正確な情報を入手し、特定の組織に媚びることなく中立な報道ができる企業
というイメージを持ちました。
よって、これも個人的意見ですが、『メディア』として利用するユーザ目線としては
- デイトレードのようなイケイケドンドンな投資をする人はブルームバーグを主要な情報源とすべし
- インデックス投資のように、じっくりと投資をするような人はロイターを主要な情報源とすべし
なんてことも思いました。
また、これをもって『どちらが優れているか』を判断することはできませんが、
『様々な角度から分析された情報を入手し、自分の中での解釈することが重要』
であることは間違いないため、偏った情報源に頼ることなく、世界的メジャーであり、性質のことなった両社の情報を参考にすることで、それが達成できるのではないでしょうか。
少なくともyahooを読むよりは、優良な情報を手に入れられると思いますよ。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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