少し前は『コロナバブル』という単語を聞く機会が多かったかと思いますが、最近ではその単語を聞くことがほとんどなくなりました。
また、SNSやニュース記事を見ていても、
- 現在の株価に対して危機感を持っているコメントの数が減っている
と感じています。
筆者は、その理由を
- 多くの人が、いまの株高の状況に慣れてしまったから『バブル』だと思わなくなったのではないか
と想像しています。
『異常』とも思える状況も、それが長期間つづけば『普通』となってしまいます。
まさに、いまそうなっているのではないかと思います。
とはいえ、これはただの『筆者の想像』であるため、
- いまの株価は適正な価格なのか?
- コロナバブルは起きていないのか?
について、データを元に考察していきつつ、これからどうするべきか?についても考察していきたいと思います。
<目次>
- 『コロナバブル』は起きているのか?
- 日本とアメリカのPERを比較
- バフェット指数から占う割高感
- PER、バフェット指数からみる適切な株価
- 投資家の増加は、株高を肯定できるのか?
- 割高だと暴落するの?
- インデックス投資家は愚かな投資家?
- じゃあどうしよう?
- 実は『コロナバブル』と言うほどの状況ではない?
- まとめ
『コロナバブル』は起きているのか?
まずは全世界の株価(MSCI-ACWI)の推移を見てみましょう。
過去3年の推移がこんな感じ。
過去10年だとこんな感じ。
これらグラフを見ると、
- 2020年の暴落以降は、急激な勢いで株価が上昇している=バブルが発生している
ように見えますが、過去10年のグラフを見ると
- 2015年~2019年にかけて横ばいだったので、その時の成長を取り戻している=まともなペースで上昇している
ようにも見えてしまいます。
というわけで、(当たり前ですが)株価を見ているだけでは『ただの感想』しか出てきませんので、『いまの株価は適正なのか?』を見るのにもっとも手っ取り早い指標であるPERを見ていきたいと思います。
全世界の株式の平均PERは以下グラフの通りに推移しています。
PERは『株価収益率』のことで、ざっくり言うと、
- 企業の利益が横ばいで推移すると仮定して、いまの株価で投資すると、投資したお金を何年で回収できるか?
と考える指標で、例えば
- PER20倍であれば、投資して20年後に元本が回収できる
- PER30倍であれば、投資して30年後に元本が回収できる
と考えられますので、
- PERが高ければ高いほど割高といえる
ことになります。
そして、『PERは15倍程度が基準(平均)』と言われているので、
- PER30倍という現状は、かなり割高
といえる状況となっています。
これは、グラフ上の過去のPERと比べてみても明らかです。
とはいえ、あくまでも『全世界の平均PER』なので、国別のPERを見ていきたいと思います。
対象国は、投資先として人気のアメリカと日本の2国です。
日本とアメリカのPERを比較
過去5年の実績PERの推移は以下グラフの通り。
日経平均のPERは、2020年の1年間は高かったものの『2021年8月時点でPER16.25倍』と、さほどの割高感は感じません。
2021年4月ごろからPERが一気に正常化していますが、このPERは”実績”PERである(過去に発表された決算の内容を元に、PERを算出している)ためで、
- 2020年の決算内容は悪かったために高PERとなっていたが、2021年4月~発表された決算内容が良かったためにPERが一気に低下した
ことが大きな要因です。
しかし、S&P500は『2021年8月時点でPER34.32倍』と、かなりの割高感を感じます。
とはいえ、繰り返しになりますが、
- PERは、”利益が今のままであれば”何年で元が取れるか
なので、
- 成長率の高い企業であれば、PERが高くなるのは当然
とも言えます。
よって、「S&P500にはすごい企業が多いから、日本よりPERが高いのは当たり前だ!」という意見もあると思います。
(実際に、2016年~2019年頃のPERが安定していた時期を見ると、S&P500のPERは常に日本より高かった)
そこで、過去150年のS&P500のPERの推移も見ていきましょう。
結果はこんな感じ。
このグラフからは、
- 歴史的に見ても、S&P500のPERはかなりの高値となっている
ことが分かります。
PERが30倍を超えたのは、
- ITバブル
- リーマンショック
の前後しかなく、どちらもその後にPERが下落(株価が暴落)しています。
これだけ見ると、「バブルじゃん!」と思ってしまいがちですが、PERはあくまでも『割高感を測る指標の一つ』でしかないため、もう一つ、割高かどうかを見る有名な指数である『バフェット指数』を見ていきたいと思います。
バフェット指数から占う割高感
『バフェット指数』とはその名の通り、世界一の投資家であるウォーレン・バフェットが重視する指標で、
- 株価の時価総額を、名目GDPで割って算出
するもので、『市場全体の割高感』を見るために使用され、
- バフェット指数が100%を超えると割高
といった見かたができます。
そのバフェット指数の過去50年の推移がこちら。
見ての通り説明するまでもなく、『かなりの割高感』が出ています。
過去最高値であるのは言うまでもありませんが、2000年にあったITバブルの時でさえ150%未満であったのが、現在は200%を超えるほどのダントツの高値となっています。
PER、バフェット指数からみる適切な株価
ここまでを整理すると、
- PERは15倍程度が基準であるが、現在は全世界:30倍、S&P500:34倍
- バフェット指数は100%が基準であるが、現在のアメリカ市場は210%
となり、短絡的に考えると、
- いまの半分の株価が適正な値
となってしまいます。
もちろんこんなカンタンに適正な株価を計算できるはずもありませんし、
- コロナ対策による財政出動のため、大金が市場に流されている
- コロナ禍によって、不要な業務の棚卸、新技術の台頭により業務効率化が急加速した
- コロナ禍を追い風に、業績を伸ばしている企業が多い
などなど、市場にとって有利な条件がそろっていることから、ある程度の割高は当たり前なのかもしれません。
実際に、PERやバフェット指数といった指数は、
- 『過去の実績』や『いまの株価』などを数値化しただけのものであり、『今後の成長』を加味していない
ため、『これからは、いままで以上に世界中の企業が急成長する』のであれば、『いまの株価は適正な株価である』と言えるのかもしれません。
しかし、紹介した指数が『基準の2倍』という現状を認めるためには、『いままでの2倍のペースで企業が成長する必要がある』となりわけですが、その可能性は低いと言わざるを得ません。
というわけで、指標を見る限り
- 現状は、過去の指標と比べると割高に見える
と言うしかありません。
とはいえ、最近の株高を肯定する理由として
- 投資家が増えたから
という話を聞くことが増えてきましたので、そこについても考察していきます。
投資家の増加は、株高を肯定できるのか?
『投資家が増えた=需要が増した』ということなので、
- 需要の増加に合わせて株価が上がる
という考えです。
投資家が増えたのは
- スマホ等の登場により投資が身近になった
- インデックス投資があたり前となり、気軽に投資できるようになった
といったことなどが要因で、
実際に、日本人投資家は以下グラフのようの増加し続けており、世界中の投資家数も同様の傾向にあると考えられます。
出典:日本取引所グループ
よって、
- 需要が増えているので、各指数が過去よりも高いポイントとなるのは当たり前
とも言いたくなります。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
極端な話、すべての投資家が
「投資した元本が20年くらいで返ってくるなら積極的に投資しよう」
「30年たっても元が取れないのであれば、リスクをとってまで投資する価値はないな」
と考えていたとすると、PERは20倍~30倍となるわけですが、
これは投資家の人数が1万人だろうと、1000万人だろうと変わらないのではないかと思います。
つまり、『投資家が増えた』と『株価が高くなる』を完全にリンクさせることはできないわけです。
よって、「やはり、いまは割高なのだろう」というのが筆者の正直な感想です。
とはいえ、本当に割高だったとしても、暴落が待っているのかどうかは別の話なので、そのあたりも考察していきます。
割高だと暴落するの?
『暴落する』のは、きっかけが何であれ、多くの投資家が
- いまの株価は高すぎる
- これから株価が下落していく
と、考え始めることで起きます。
つまり、
- 論理的には割高(例えば、元本が100年後にやっと回収できる、とか)となっている
としても、投資家が「べつに割高じゃない」と考えていれば暴落はしないわけです。
ここら辺は難しいところですが、
- (プロ投資家のような)市場をしっかりと分析している投資家であれば、いまが『論理的には割高』かどうかを把握している
のは当たり前ですが、すべてのプロ投資家が「論理的には割高だ」と考えていたとしても、プロ投資家たちが売りに走り、暴落が起きるとも限りません。
というのも、例えば、
- 本来の価値は100円の”モノ”がある
- プロ投資家は、本来の価値を知っている
- 個人投資家Aは、”モノ”を持っており、150円で売りたいと考えている
- 個人投資家Bは、”モノ”は200円の価値があると考えている
というケースを想定すると、
- プロ投資家は、個人投資家Aから『本来の価値を超える150円』で”モノ”を買い、個人投資家Bに『本来の価値を大きく超える200円』で”モノ”を売る
と考えられます。
さらに、
- ”モノ”の価値を300円だと考えている個人投資家Cが登場した
とすると、
- プロ投資家は、個人投資家Bから220円で”モノ”を買い、個人投資家Cに300円で売る
となるでしょう。
つまり、
市場の価格がおかしなこととなっていようとも、
『それ以上の値段で買おうとする人』がいる限り、
本来の価値を知っているプロ投資家であっても、
”モノ”の値段を釣り上げる行動を取り続け、
実際に取引される値段はあがり続ける。
というわけです。
昨今では、投資のための情報収集にインターネットを使うのが当たり前となり、多くの投資家が『投資するために必要な情報』を気軽に入手できるようになりました。
よって、
- 正しい情報がすぐに投資家間で広がるので、極端な割高にはならないだろう
- よって、大事件が起きない限り”大暴落”と言えるような暴落はないだろう
と考えがちです。
しかし、「まだまだ買い時だ」と考える『愚かな投資家』がいれば、いくらでも株価が上昇するリスクはありますし、
株価が上がったのちに、その『愚かな投資家』が「実は割高かもしれん」と考えるようになれば、株価が上昇した分だけ大きな暴落が発生することになります。
そして、筆者が危惧しているのが、
- その『愚かな投資家』は『インデックス投資家』なのではないか?
ということです。
インデックス投資家は愚かな投資家?
『インデックス投資家』の中には、
- 『ドルコスト平均法』を活用し、株価は無視して定期的に買い続ける投資家
がいます。
この投資家はまさに『愚かな投資家=本来の価値を大きく超えていたとしても、もっと高い値段で買う投資家』なのかもしれません。
そして、この『愚かな投資家=いくらであろうとも買う投資家』の存在を知っている投資家は、(例え「既に割高だ」と思っていても)株価を釣り上げつづけると考えられます。
つまり、
- インデックス投資&ドルコスト平均法が当たり前になることで、株価が暴騰しやすい環境となった
と言えるかもしれません。
そして、さすがの『愚かな投資家』であったとしても、どこかのタイミングで「あれ?さすがにこの株価はやばくないか?」と気付き、そこから暴落が始まるリスクがあります。
…とか、想像してみましたが…、
うーん…、自分の投資スタイルを批判しているようで、なんだかなぁ…。
というわけで
- 昨今の投資環境の変化も、割高を是正する理由とならない
- むしろ、極端すぎる暴騰を生み出し、大暴落を発生させるかもしれない
と筆者は考えています。
そこで、次に考えなければならないのが「じゃあどうするか?」です。
じゃあどうしよう?
筆者は、インデックス投資&ドルコスト平均法での投資をしているわけですが、これからも変わらず投資するべきだと考えています。
というのも、(「暴落するかも」と言っておいて何ですが)
- 暴落するとは限らないから
- 暴落するとしても、いつ暴落するか、いつから反転するかが分からないから
と考えているためです。
投資家たちが「さすがにこの株価はやばくないか?」と一斉に思えば、暴落するでしょうが、
少しずつ「やばい」と思う投資が増えれば、『右肩上がり』→『横ばい』→『ゆるい下落』くらいで落ち着くかもしれません。
それどころか、いっさい下落せずに『株価がゆるくあがり続ける』といった状態がつづき、その間に企業が成長していき株価に追いつく可能性すらあります。
具体的には、
- いまは、企業の価値=100、株価=200だとする
- これから毎年、企業の価値が10ずつ増加する、株価は1ずつ増加する
- 11年後には、企業の価値=210、株価=211となり、割高な状況が解消される
というケースだってあるわけです。
また、暴落するとして、運よく暴落前に資産を売ることができたとしても、その後に買い戻すタイミングを計ることは困難です。
例えば、「売った時よりも30%値下がりしたら買い戻そう」と考えていたとしても、『20%しか値下がりせずに反転』したとすると、『現金を持ったまま投資できない=機会損失している』状況が続くことになります。
また、「株価が上昇しだしたら買えばいいだけよ!」と思う方もいるでしょうが、『上昇したと思って買ったら、すぐに下落しだした』なんてのはよくある話で、ここら辺の『タイミング投資の難しさ』は改めて解説するまでもないでしょう。
それ以前に、
- インデックス投資=株の価値を読むことを諦めた
- ドルコスト平均法=株を売買するタイミングを計ることを諦めた
であるのにも関わらず、ここにきて急に「私は株を売買するべきタイミングを正確に計れるのだ!」と考えるのはおかしな話でしょう。
というわけで、割高と思える現状においても、いままで同様の投資スタイルを継続するわけです。
しかし、このスタイルは『定期収入がある≒仕事をしている』からこそ選べるスタイルなので、FIREやセミリタイアしているのであれば、考え直す必要があるかもしれません。
が、それはまたの機会に…。
さて、そんな感じで『いまは割高』ということを前提に語ってきたわけですが、最後にそれを覆すようなデータも紹介したいと思いますw
実は『コロナバブル』と言うほどの状況ではない?
下のグラフは、
- リフィニティブ社による、『12か月先の利益』を元に算出したS&P500の予想PER
で、
- 前述してきた『過去の利益』を元に算出した実績PER
と比べると、かなり適正値(PER15倍)に近い値となっています。
出典:野村證券
この差は
- 12か月後には、企業の利益がかなり回復すると予想している
ために出ており、
- その予想通りにいけば、いまの株価はさほど割高ではない
ということになります。
コロナ禍において12か月先の利益を予想することは難しいとは思いますが、こういったデータがあることも覚えておいた方がよいでしょう。
まとめ
といった感じで、『コロナバブル』について考察していきました。
ざっくりまとめると、
- 過去の利益からみると『明らかに割高』
- インデックス投資家(ドルコスト平均法)によって、過去以上の暴騰が起きるかもしれない
- かといって暴落が起きるとも限らない
- よって、いままで通りにタンタンと投資をしよう
というのが筆者の意見です。
『マエストロ』と呼ばれるほどに金融市場に精通していたグリーンスパン元FRB議長でさえ、
- バブルが発生しているかどうか(弾けるかどうか)は分からない
と言います。
様々な指数を見て、
- 割高かもしれない
- 近いうちに暴落するかもしれない
と想像することはできますが、そんなカンタンに予想できるはずがありません。
これは、
- 多くのプロ投資家が必死に未来を予想したところで、それが当たる可能性は低い
ことからも明らかです。
(カンタンに予想できたら、世の中が金持ちであふれてしまいます)
よって、特殊な才能や能力をもたない『ふつうの投資家』は、市場に惑わされることなく、タンタンと投資を続けていくことが賢明な選択だと言えそうです。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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