2021年9月に設置される予定のデジタル庁が、どんな役割をもっていて、何が変わるのか、現役SEである筆者がわかりやすく解説していきたいと思います。
デジタル庁をざっくり説明すると、その名前からイメージできる通り『行政のデジタル化を推進する機関』なわけですが、筆者の思うデジタル庁の最大の特徴は、
- デジタル庁がトップとなり、各機関(金融庁や消費者庁など)のデジタル化政策をコントロールできる強い権限を持つ
ところです。
政府機関は
『縦割り行政(各省庁の連携がとれていない)によって、非効率に運営されている』
と批判され続けていますが、デジタル化の推進に関しては、そうならないようデジタル庁が作られるわけです。
そして、例えば
- 引っ越しに関わるすべての申請を、スマホから一括できるようになる
- 確定申告を、自宅にいながらカンタンに済ませられるようになる
といったことが、デジタル庁によって実現すると期待されています。
筆者はデジタル庁についてはかなり期待しているわけですが、6月には平井大臣の「ぐちぐち言ったら完全に干す」発言が取り上げられたことで悪いイメージを持った方もいるかと思いますので、
デジタル庁について正しく理解してもらうべく、この記事で紹介させてもらいます。
(ちなみに「ぐちぐち言ったら…」発言について、筆者は「よく言った!」と称賛しています)
記事の最後には、平井大臣とひろゆき氏や、堀江貴文(ホリエモン)氏、サイボウズの青野社長といったIT業界の重鎮(?)とのやりとりをした動画を紹介させてもらいますので、よろしければ最後までお付き合いください。
(もとい、途中でこの記事に飽きたとしても、動画だけは見ていってください)
<目次>
- デジタル庁とは
- ライフイベントに係る手続の自動化・ワンストップ化
- データ資源を活用して、一人一人に合ったサービスを
- いつでもどこでも自らの選択で社会に参画
- デジタル庁になって何が変わるのか
- デジタル庁の職員は民間からも採用していく
- 今後のデジタル庁について
- デジタル庁、平井大臣のことがよく分かる動画紹介
デジタル庁とは
デジタル化の推進は、2020年9月に誕生した菅政権のキモの政策の一つで、それを達成するためにデジタル庁を発足させる方針とすることが、2020年11月に決まりました。
デジタル庁の検討開始から実際に設置されるまでの期間は、国家の組織としては驚くほどの速さで、菅政権のデジタル庁に対する強い期待がわかります。
いままでは、各省庁でバラバラにデジタル化が進められてきたわけですが、今後は
- まずデジタル庁がデジタル化の予算を確保する
- 各省庁のデジタル化に対して、デジタル庁から必要な予算を流す
ようになる予定です。
思い切って書くと、
「ITのことがよく分かっていない各省庁が勝手にデジタル化を進めているせいで、質の悪いシステムを、高いお金を払って作ってことになるのだ」
「これこからは、デジタル化を進めるのであれば、プロのいるデジタル庁を通せ」
という体制になるわけなので、非常に期待できます。
ちなみに、『デジタル化』という言葉には、『いまの手続きをオンラインでできるようにする』ことだけではなく、
『デジタルを前提とし、行政の仕組みから抜本的に変えていくこと』も含まれています。
具体的には、
- ライフイベントに係る手続の自動化・ワンストップ化
- データ資源を活用して、一人一人に合ったサービスを
- いつでもどこでも自らの選択で社会に参画
といったビジョンをかかげています。
かなり『デジタル化の恩恵は大きい』と言える内容が多いのですが、これだけではよく分からないので詳しく見ていきましょう。
ライフイベントに係る手続の自動化・ワンストップ化
『ライフイベントに係る手続の自動化・ワンストップ化』では、
- 出生や、修学、子育てなど、ライフイベントで発生する手続きを、スマホでワンストップで(一度の申請で全ての申請が)行えるようにする
- 手続きが必要となったタイミングで、地方自治体などから「○○な手続きをしてください」という通知が届くようにする
という目標が掲げられています。
出産などのライフイベントの時には、多くの申請が必要となるわけですが、
- どんな申請が必要なのかを自分で調べる必要がある
- 申請しないと補助金をもらえない(マニアックな)制度が多い
- どのタイミングで何の申請をしなといけないのかよく分からない
など、利用者からすると『利便性の悪い』状況にあります。
これが場合によっては、『制度を知らないことよって生まれる格差』を作り出しています。
しかし、デジタル化によって情報を一元管理することで、
- 必要な申請を、必要なタイミングに通知してもらえる
- 申請もスマホでできる
となることが期待できます。
筆者は『社会人の中に、行政への申請に対して不満を持ったことのない人はいない』と思っているので、ここが改善されることに大いに期待しています。
ちなみに、この『スマホでのワンストップ申請』には、『(死ぬほど面倒な手続きのある)引っ越し』も含まれるのではないかと期待されています。
というのも、これは、デジタル庁の前身であるIT総合戦略室が掲げていた目標でもあるためです。
ここは大いに期待したいところです。
参考までにIT総合戦略室が出している、引越しワンストップサービスの図を載せておきます。
残念ながら「分かりやすい」とは言えないので、興味のある方だけどうぞw
出典:引越しワンストップサービスの推進 | 政府CIOポータル
データ資源を活用して、一人一人に合ったサービスを
『データ資源を活用して、一人一人に合ったサービスを』では、
- 健診情報や、薬の処方歴などを一元管理し、適切な医療サービスを受けられるようにする
- 個人の移動のニーズを把握し、鉄道やバス、カーシェアリングサービスと連携することで、ストレスのない移動を提供する
といった目標が掲げられています。
いまは、健康診断の結果や、受診歴、薬歴などが一元管理されておらず、利用者が自分で管理しておくしかありません。
よって、
- 高齢者が併用してはいけない薬を組み合わせて使ってしまう
- 健診結果の急激な変化などを見逃してしまう
といった問題が起きこるリスクがあります。
デジタル庁では、こういった問題を解消することを目標の一つとしています。
例えば(筆者の考える例ですが)、健康診断の結果で『血圧が正常範囲の最低値ラインギリギリ』だった人が、翌年になって『正常範囲の最高値ギリギリ』となったケースは、
正常の範囲内とはいえ『異常』といえる変化が起きているわけですが、別々の医療機関で健診を受けていれば『正常』としか判断できません。
しかし、健診の結果を一元管理できていれば、『異常なほど変化している』ことが医療機関からも一目瞭然です。
『ストレスのない移動の実現』に関しても、情報が少ないので筆者の想像も入っていますが、鉄道や、バス、高速道路、カーシェアリングなど、各社がもっているデータを統合し、
「この時間の移動なら、バスが空いてて早いよ」
「この時間の鉄道は満員だらけだけど、カーシェアは空きが多いので安く利用できるよ」
などなど、最適な移動手段を提案できるようになると期待できます。
いつでもどこでも自らの選択で社会に参画
『いつでもどこでも自らの選択で社会に参画 』に関しては、
- テレワークを推進する
- 自宅にいながら、世界中の優れたコンテンツにアクセス(発信含む)できるようにする
といった具体案が掲げられています。
どちらも、既に進んでいる内容なので、
- デジタル庁の後押しによって強烈に推進していく
ということなのでしょう。
といった案があるわけですが、今までもデジタル化は進められていたわけなので、『デジタル庁が設置されることで具体的に何が変わるのか?』についても見ていきましょう。
デジタル庁になって何が変わるのか
デジタル庁が設置されることで生まれる大きな変化点のひとつとして、
- 政府から、大手ITベンダーに丸投げだった発注が変わる
が挙げられます。
いままでは、「こんなシステムを作ってくれ」と『ITの知識のない人』からITベンダーに対して丸投げにしていたため、
- 費用の詳細・具体的な内容を政府が理解できないため、必要以上の経費がかかってしまう
- ITベンダーの言いなりになってしまう(プロから「こうだ!」と言われたら反論できる知識がない)
といった、問題が発生していました。
そこで今後は、デジタル庁の内部にITに精通した人材を集め、ITベンダーに対して具体的な内容の発注をできるようにしていく予定です。
さらに、いままでは、政府からの業務を受注するためにもうけられていた入札条件(設立〇年以上、資本金○○万円以上など)によって大手企業しか受注できなかったわけですが、これも変えていこうとしているようです。
大手ITベンダーに発注したプロジェクトの多くは、
- 受注したプロジェクトを下請けに発注
- 下請け企業は孫請け企業に発注
- 孫請け企業はひ孫請け企業に発注…
となるケースが多いです。
そして、下の企業ほど投入される人口が多いピラミッド型となっており、
- 大手に発注したところで、結局のところ作業者のほとんどは中小企業
- 大手に人材は、管理業務だけを担当
となるパターンが非常に多いです。
であるのにも関わらず、大手が多くの利益を持っていくため、
- プロジェクトに必要な予算がふくれあがる
という問題があります。
デジタル庁の設置によってここにメスが入れば、システム開発にかかる費用は段違いに安くなることが期待できます。
とはいえ、大手ITベンダーを省いて発注するとなると、『いままで大手が担っていた管理業務』を代わりの誰かが行わないといけなくなるので、そこをデジタル庁内部の人間で補おうとしているわけです。
というわけで、デジタル庁では、システム構築した経験のある優秀な人材を民間から公募しています。
デジタル庁の職員は民間からも採用していく
デジタル庁では、(立ち上げ当初は)500名程度の人員を予定しており、うち100名は民間から採用する予定で、現在も公募しています。
ほとんどが非常勤での採用枠で、就業条件の例を挙げると、
- 労働時間は、週29時間以内のかつ、1日の最大7時間45分を超えない範囲
とされており、『副業・兼業が前提』とみえる募集をしています。
というのも、『優秀なIT人材は、すでに優良企業で高給をもらっている』ため、副業やリモートワークといった働き方も認めなければ、優秀な人材を集めることが難しいためかと思われます。
なお、年収は最大で1600万程度となりそうとのことなので、超優良なIT企業の報酬と比べると見劣りするかもしれませんが、そこそこの報酬を出すことで優秀な人材を集めようとしています。
(詳しくは記事後半のYoutubeをご参照ください)
ちなみに、『2ちゃんねるの創始者であるひろゆき氏』がデジタル庁に応募したそうですが、残念ながら落選だったようです。
ひろゆき氏は落選も、アドバイザーとして活躍している
ひろゆき氏は
「デジタル庁への文句を言ったら「文句を言うならお前がやれ」と言われなかねないので、自分から応募した」
「落ちたので、気兼ねなく文句を言える立場になった」
といった発言しています。
とはいえ、ひろゆき氏はデジタル改革の一環として創設される『デジタルの日』に関するアドバイザーとなっています。
また、7月25日時点で
「今もちょこちょこ会議をしています」
「政府主催の会議と、(内閣官房参与の)村井純さん主催の会があって、村井さんの方は勝手に委員が集まって“これなんとかしないといけないよね”っていう話をするので、これは割と面白いですね」
と発言しています。
ひろゆき氏をアドバイザーにするためには、かなり思い切った決断が必要だったかと思います。
(賛成意見は多いでしょうが、批判もかなり多いことが予想されるので)
しかし、デジタル庁の
- いまの体制のままではいけない!
- デジタル改革が必要なんだ!
という強い思いが分かる、よい実例かと思います。
今後のデジタル庁について
デジタル庁の発足に向けて、2021年5月には、
- デジタル社会形成基本法
- デジタル庁設置法
- デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律
- 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律
- 預貯金者の意思に基づく個人番号(マイナンバー)の利用による預貯金口座の管理等に関する法律
- 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律
の6つの法案が成立したばかりです。
※詳しくはこちら(外部リンク)
上述の通り、デジタル庁ではデータの一元管理によって、複雑な制度を便利にしていこうとしています。
しかし、例えば『マイナンバーカードと銀行口座の紐づけ』に関しては、「プライバシーの侵害だ!」といった声が上がってくることが予想されます。
しかし、よく考えてみてください。
政府に銀行口座を知られて困ることはありますか?
銀行口座を知られて困るような人は、どんな人ですか?
他にも、市役所での手続きがカンタンになったら困るのは誰でしょうか?
また、大手ITベンダー丸投げの体制が是正されたら、儲けられなくなるのはどの団体でしょうか?
ここら辺を考えると、近ごろ乱発している『デジタル庁に対する批判』がどこから出ているのかが分かります。
『 デジタル化』という改革を進めることで、儲けられなくなる企業や、(一時的には)犠牲になる人が出てくる可能性は高いです。
しかし「世の中を効率化することで、困る人・職を失う人がいるから、非効率な世界のままでいよう」というバカげた考えをしてはいけません。
というわけで、日本の未来のために、デジタル庁には頑張ってもらいたいと思います。
デジタル庁、平井大臣のことがよく分かる動画紹介
最後に、デジタル庁と平井大臣のことがよく分かる動画を紹介させてもらいます。
ここら辺を見て頂ければ、デジタル庁に期待できる理由が分かるかと思います。
デジタル庁のかかげる目標に、
- 誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。
というものがあります。
これには『ITが苦手な高齢者も、デジタル化の恩恵を受けられるようにする』という意味もあります。
中途半端なデジタル化は、複雑な操作を必要とすることがありますが(例えば、セルフレジが苦手な高齢者が多いように)、
完全なるデジタル化(例えば、顔認証や、カメラによる確認だけで、清算まで済んでしまうAmazon Goのようなシステム)であれば、デジタルが得意な若者であろうと、高齢者であろうと、格差なくデジタル化の恩恵が受けられます。
こういった社会を実現してくれるよう、デジタル庁には本気で期待してます!!
なお、平井大臣の経歴や人物像、平井大臣による「恫喝発言」などについては、平井卓也大臣(デジタル庁担当大臣予定)の経歴、人物像を紹介をご参照ください。
出典:
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
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