更新日:2021/4/21
『効率的市場仮説』という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、その中身までしっかりと理解できている人は少ないと思いますので、この記事では『効率的市場仮説』について、分かりやすく解説していきたいと思います。
とはいえ、インデックス投資を活用している人であれば、あたりまえのように知っている内容かと思いますので、『インデックス投資家以外にも分かるように』を主な目的として進めていきます。
効率的市場仮説を聞いたことがない方にとっては、おどろきの内容になるかと思いますが、『効率的市場仮説を知らずに投資する』という行為は、『泳げないのに海の飛び込む』くらいバカげた行為であるため、最後まで読んでいって頂ければと思います。
<目次>
- 効率的市場仮説をわかりやすく説明すると…
- つねに最新情報が株価に反映されている
- 効率的市場仮説のバージョン差
- 効率的市場仮説とランダムウォーク理論
- 効率的である市場が暴落することはない?
- インデックス投資がより有利な時代に
効率的市場仮説をわかりやすく説明すると…
効率的市場仮説を分かりやすくまとめると、
- 市場は効率的であるため、市場でつけられている値段は常に正しい
という内容となります。
ここで言う
- 『市場』とは『株式市場に代表される、金融商品を売買している市場』
- 『値段』とは『株価など、金融商品につけられている値段』
を指しています。
つまり、効率的市場仮説によれば、
- 市場には『割安な株』や『割高な株』といったものは存在しない
となり、すなわち
- 『割安な株を買い、割高な株を売って儲ける』ということはできない
となるわけで、これが最も重要なポイントです。
効率的市場仮説では、その根拠として『投資家は、つねに最新の情報を仕入れ、それを株価に反映しているため』というものを挙げています。
つねに最新情報が株価に反映されている
もう少し分かりやすく書いていくと、
- 世界中の投資家が、つねに市場を見張っている
- 少しでも割安な銘柄が見つかれば、すぐに買い注文が殺到して株価が上がる
- 株価に影響するニュースがあった場合も、すぐに注文が集まり、適切な株価になる
というのが、効率的市場仮説の根拠です。
この仮説は、1960年初頭にシカゴ大学のユージン・ファーマ教授(2013年にノーベル経済学賞を受賞)の論文から生まれたわけですが、それから60年たった今では
- 投資家の増加
- 各種規制の強化
- インターネットによる情報伝達速度の向上
によって、『多くの投資家に』『同時に情報が公開され』『即座に世界中に情報が広がる』という環境が1960年当初より整っており、
”より”効率的市場仮説が成立しやすい環境となっています。
なお、効率的市場仮説の中には、
- ウィーク型
- セミストロング型
- ストロング型
といったバージョンがありますので、それぞれ解説していきます。
効率的市場仮説のバージョン差
分かりやすく整理すると、
- ウィーク型:過去の価格の推移を分析した結果が、価格に織り込まれている
→ テクニカル分析で、将来の株価を予想することはできない
- セミストロング型:過去に公開された全ての情報を分析した結果が、価格に織り込まれている
→ ファンダメンタル分析でも、将来の株価を予想することはできない
- ストロング型:非公開情報であっても、株価に織り込まれている
→ インサイダー情報を使っても、将来の株価を予想することはできない
となります。
ウィーク型については、ほとんどの人が同意する内容かと思いますし、
ストロング型については、多くの人が「それはないでしょ」と思うところでしょう。
しかし、セミストロング型については、賛否が分かれるところで、
- インデックス投資家であれば、セミストロング型を支持
- その他投資家(個別株投資家など)であれば、セミストロング型を不支持
となっています。
しかし、著書『敗者のゲーム』や『インデックス投資は勝者のゲーム』などなどによって繰り返し言及されている通り、『アクティブファンドが、インデックスファンドに勝ち続けることは困難』だという事実を踏まえると、
- セミストロング型が正しい(ファンダメンタルズ分析は役に立たない)
と言えそうです。
とはいえ、どの理論であっても『いまの株価は常に正しい』という考え方は同じで、それは
- 将来の株価を読むことはできない
という意味でもあり、すなわち
- ランダムウォーク理論
でもあるわけです。
効率的市場仮説とランダムウォーク理論
ランダムウォーク理論とは、その名がしめす通り『株価はランダムに動く』という考え方です。
市場に割安な株があれば、『いずれ上がるだろう』と予想することができますが、効率的市場理論の言う『いまの株価は常に正しい』が合っていれば、
- 「将来の株価がどうなるのか?」は、今後でてくる情報によって決まる
わけですが、
- 未来を読むことは誰にもできない=今後の株価はランダムに動く
となるわけです。
と、書くと「業界やその企業のことを分析すれば、将来何が起きそうかを(ある程度は)予想することはできるだろう」という反論もあるかもしれませんが、
- 『分析することで予想できる未来』は、株価に既に織り込み済み
となりますので、
- 『分析できず、予想できない未来』によって、将来の株価が決定する
という、ランダムウォーク理論の理屈が通ることになります。
ランダムウォーク理論については、以下の記事もご参照ください。
さて、ここまで『市場は効率的である』と説明してきたわけですが、『効率的』という言葉には注意が必要です。
効率的である市場が暴落することはない?
効率的市場仮説に対しては、
- 『株価は、つねに適正価格である』と投資家が考えることによって、バブルが発生していたとしても、投資家は安心して株を買ってしまい、バブル崩壊を招く。
と批判されるケースがあります。
しかし、効率的市場仮説を提唱するユージン・ファーマ教授は「バブルは存在しない」と主張しています。
ユージン・ファーマ教授は、「バブルとは、株価が上がり、その後の下落を予想できる状況」と定義しており、「(株価が下落する)未来を予測できない以上、バブルは存在しない」と言います。
納得いかない読者もいるかと思いますので、今の『コロナバブル』と言われる状況を例に挙げると…、
株価の上昇が続いているのは、
- 各国が巨額の経済対策を打ち続けていること
- さらなる危機が訪れても、さらなる対策が期待できること
- 世界経済の高成長が続くと期待されていること
といったファンダメンタルズ(経済の状態)の分析によって「今後の経済には期待できる」と投資家が考えているだけであって、『投資家が熱狂してる』わけではないとなり、
もし株価が暴落するようなことがあったとしても、『何らかの理由でファンダメンタルズが悪化した』ことが要因であって、『投資家の熱狂が冷めた』というわけではなく、『今後に期待できなくなったから、株価が下がっただけ』となるわけです。
…と、聞いてしまうと、
- 全ての投資家が合理的に判断しているはずがない。
- 熱狂によって株価が変動することもある。
と反論したくなりますが、ユージン・ファーマ教授は
- 投資家の心理も含めてファンダメンタルズだ
とし、
- 投資家の行動にバイアスがかかる(非合理な選択をする)こともあるが、それ(暴騰の原因が熱狂であること)を証明することはできず、投資家の心理状況が市場に大きな影響をおよぼす証拠がない(教授の研究では見つからなかった)以上は、「市場は合理的である」と言える。
としています。
個人的には少々無理やり感を感じてしまうところではありますが、このあたりは「『効率的』とはなんなのか?」といったところから、しっかりと定義する必要がありそうです。
ただ、同じくノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授らによって、投資家心理が広く理解されつつあるいまは、『投資家の心理も含めてファンダメンタルズ』と言える時代となりつつあるような気はします。
インデックス投資がより有利な時代に
といった感じで、いまだ議論のある『効率的市場仮説』について解説させて頂きました。
出来る限りわかりやすく解説させてもらいったつもりですが、いかがでしたでしょうか?
過去の研究を見れば、株式投資に限った話でも
- 小型株のほうが、大型株よりも高いリターンが得られた
- 業績がイマイチな企業の方が、業績が良い企業よりも高いリターンを得られた
- バリュー(割安)株の方が、グロース(成長)株よりも高いリターンを得られた
といった、調査結果が多く報告されており、これは
『市場は効率的ではない』=『儲けるための抜け道は存在している』
と言えます。
しかし、これら研究結果が報告されてきたことによって、かつては高いリターンが得られた『小型株』『業績イマイチ企業』『バリュー株』に投資することで得られるリターンが、昨今では押し下げられる結果となりました。
(儲けられる方法が世に出れは、多くの人がそれに投資するようになり、儲けられる方法ではなくなる)
つまり、『市場は、時代とともに効率的になり続けている』わけです。
言い方を変えると、
『アクティブ投資によって、インデックス投資以上のリターンを得ることが、さらに難しくなっている』
となり、
『インデックス投資の優位性がより高まっている』
とも言えます。
…と、いうわけで筆者の選択している『ひたすらインデックス投資をする』が正解であることがあらためて理解できたので、これからもタンタンとインデックス投資を続けていくこととします。
他のインデックス投資家にも、同じ考えが生まれてくれれば幸いです。
出典
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