更新日:2021/4/19
ちかごろ
- アルケゴスが破綻して、大手金融機関に大きな損害を与えた
といった報道をよく聞くかと思いますが、聞きなれぬ単語に戸惑っている読者もいるでしょうから、アルケゴスについて、できる限り分かりやすく解説していきたいと思います。
<目次>
アルケゴスとは
まず、アルケゴスとはなんぞや?について簡単にまとめると、
- アルケゴス・キャピタル・マネジメントというヘッジファンド(資産運用会社)
- ビル・ホワン氏というお金持ちの個人資産を運用しているファンド
- 100億ドルを運用していた
- レバレッジを活用して、1000億ドル分の取り引きをしていたとみられる
といった感じで、分かりやすく一言にまとめると
『すごいお金持ちが、すごいレバレッジをかけて、資産を運用しているファンド』
となります。
なお、これだけ高いレバレッジ(10倍)がかけられていたのは、金融機関に高い手数料を払ったいたためだと考えられています。
---少々話はそれますが---
その『すごいお金持ち=ビル・ホワン氏』は、韓国系米国人で、タイガー・アジア・マネジメントというファンドの運用し、『カリスマトレーダー』とも言われていた人物です。
しかし、2012年にはインサイダー取引をしていることが発覚し、大手投資銀行のブラックリストにも乗ったこともある『前科者』とも言えます。
インサイダー取引が発覚してから、クリスチャンであるビル・ホワン氏は
「投資によって神と社会に奉仕する」
「お金よりも神を愛している」
と言っていたのですが…。
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そして、このアルケゴスが破綻したために、アルケゴスに対して資金を供給している(レバレッジを許している)金融機関に大きな損失が発生してわけです。
アルケゴスが破綻した理由は?
アルケゴスは、
- バイアコムCBS(アメリカのテレビ局)
に大きく投資していたわけですが、バイアコムCBSが増資(新規株の発行)を発表したことをきっかけに株価が急落し、
マージンコール(「もっとお金を預けてくれないと、株を売っちゃうよ?」という金融機関からのお達し)に直面しました。
しかし、アルケゴスはそれに応えるだけの資金が準備できず、金融機関はアルケゴスの保有している大量の株を売却しました。
分かりやすい例に変えると
「信用取引していた銘柄が暴落し、強制ロスカットをくらった」
という話です。
強制ロスカットは、きっかけとなった『バイアコムCBS』だけでなく、アルケゴスが大量に保有していた『GSXテクエデュ(ITを活用した教育サービスを提供する中国企業)』といった企業も対象となりました。
それら銘柄が、強制ロスカットのために大量の株を(金融機関が)売ることで、売っている銘柄の株価がどんどん下がり、損失がどんどん広がっていきました。
このため、「担保だけは確保したい!」と強制ロスカットをした金融機関すらも、損失を負うこととなったわけです。
また、アルケゴスは多くの金融機関を通じて『バイアコムCBS』『GSXテクエデュ』を保有していたわけですが、『各金融機関の強制ロスカットのタイミング(株を売ったタイミング)』がバラバラであったため、
- 早くに売り抜けた金融機関はダメージがない(小さい)
- 売り遅れた金融機関はダメージが大きい
と差がつきました。
(株価が下がる前に売ったか、下がってから売ったか。の差)
アルケゴスの破綻による影響は?
アルケゴスに資金を供給している金融機関は、
- 野村ホールディングス
- 三菱UFJ証券ホールディングス
- クレディ・スイス・グループ
- みずほフィナンシャルグループ(の子会社)
- ゴールドマンサックス
- モルガンスタンレー
などで、主な『売り遅れた金融機関』は
- 野村ホールディングス:20憶ドルの損失
- クレディ・スイス・グループ:47億ドルの損失
- モルガンスタンレー:9億ドルの損失
が発生しているとみられていますが、いまだ損失額は確定していません。
クレディ・スイス・グループは『投資銀行責任者』『最高リスク責任者』を解任すると見られていることからも、このダメージの大きさが計り知れます。
(金額だけ見ても分かりますが…)
逆に、ゴールドマン・サックスは、素早い売り逃げに成功しており、ゴールドマン・サックスのCEOは「リスクを管理するシステムが正常に働いた」と自慢げな発言をしているほどです。
また、モルガンスタンレーは、9億ドルの損失を出していたのにも関わらず、1-3月期の決算発表まで公表していおらず、批判を受ける結果となりました。
というのが、現時点で分かっているアルケゴスに関する情報です。
アルケゴス破綻の影響はどこまで広がるか?
前述の通り、いまだアルケゴスが破綻したことによる影響の全貌は見えていませんが、リーマンブラザーズ破綻時のように影響が大きくなる可能性は低いです。
しかし、『ビル・ホワン氏のような前科者であっても、レバレッジ10倍もの取引ができていた』点については、大きな問題として捉えられています。
アルケゴス・キャピタル・マネジメントは『ファミリーオフィス』と呼ばれるファンドで、『米国証券取引委員会(SEC)に登録する義務のないファンド』として運用していたため、SECの規制・監視から外れていました。
これが今回の被害が大きくなった(明るみに出づらかった)原因の一つであることは明白で、イエレン財務長官が「調査委員会」を招集して、規制の強化を検討しています。
規制の内容がどういったものになるかは分かりませんが、バイデン政権は、もとより金融規制には厳しい立場でのぞむとみられていたため、かなり厳しい規制強化となる可能性もあり、その場合は市場への(ネガティブな)影響が出てくることも懸念されます。
また日本でも、金融庁と日銀がタッグをくみ、実際の取り引きの経緯やリスク管理が適切であったかどうか検証していくと見られ、他の金融機関でも同様のリスクをかかえていないか調査するとしています。
今回の問題の発端となった『ファミリーオフィス』は、世界に1万社以上が存在し、運用規模は6兆ドル近くにまでなると予想されているため、アルケゴスのような破綻がこれからも起こる可能性は十分にあります。
また、破綻しないにしても、当局による規制によって
- 『ファミリーオフィス』が管理する、莫大なお金の向き先が変わる
という可能性は、十分に考えられます。
というわけで、まだまだアルケゴス破綻の余波はしばらく続きそうなので、状況を注視していく必要がありそうです。
本記事の内容が、本ブログの賢明なる読者達に届けば幸いです。
■ 出典
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